純正律とピタゴラス音律を比べる
寝る前にスマホ見て、公開まで操作してないことに気がついた…
純正律について考える
前回は倍音列を出発点として純正律にたどり着いたが、実際には純正律というほどだから、純正な3和音を多く取る方針で音律を決めれば、それが純正律になる。
長3和音・短3和音は長3度と短3度からできており、長3度・短3度を足すと完全5度になる。したがって、このうちのふたつが純正になれば、残りは勝手に純正になる。和音としては主和音・属和音・下属和音を使う。
長調の場合、主和音はドミソ、属和音はソシレ、下属和音はファラドだから、ファラドミソシレという、長3度・短3度の繰り返しを純正になりすればよく、ドが1倍なら上方向に
ド 1倍
ミ 5/4倍
ソ 3/2倍
シ 15/8倍
レ 9/4倍→1オクターブ下げて9/8倍
がすぐに分かり、ドから下にファまで降りて2/3倍→1オクターブ上げて4/3倍、ラがその5/4倍で5/3倍とあっけなく計算できる。
短調の場合は主和音がラドミ、属和音がミソシ、下属和音がレファラだから、下からレファラドミソシと積み上げればよい。計算は省略するので各自やってみるとよい。
さて、
長調: ファラドミソシレ
短調: レファラドミソシ
という音列なので、レの位置が左右全く逆になる。これで長調ではレファラが、短調ではソシレが純正にならないことがはっきり分かるだろう。
純正律はこの範囲の和音ならば純正な和音になる。逆にこれ以外の和音はハモらない。また、全音が2種類あるため、全音階は分かる人には分かる程度にカクカクする。
ピタゴラス音律について考える
一方で、ピタゴラス音律の方は全部の音の間隔が同じなので、As/Gisあたりの越えられない壁に阻まれない限り、同じ名前の音程の周波数比はすべて同じになる。
いや、待てよ、越えられない壁を越えても成立するかもしれない。例えば、うっかり壁を越えてしまったGis-B間はAs-Bと同じ全音だが、GisとAsは名実ともに同じ音ではないから、Gis-Bは減3度であってAs-Bの長2度とは区別しなければならない。同様にCis-Es間は長2度ではなく減3度だから、Gis-Bと同じ周波数比で、As-Bとは異なる。だから、壁を越えたら完全5度に見えても完全5度とは言えないわけだ(Gis-Esは減6度である)。
というわけで、完全5度はすべて純正である。
全音は純正完全5度2個分なので9/8倍となり、すべて大全音である。小全音は存在しない。
長3度はドからソレラミと4回昇るので、3/2を4回かければよく、81/16倍、2オクターブ下げて81/64倍である。つまり、長3度に純正なものはなく、完全5度は至るところ純正なのだから、長3度の片割れである短3度も純正にならない。
半音、つまり短2度はシ-ド間を計算すればよく、 ドからソレラミシと完全5度を5回昇ればいいので、3/2を5回かければよく、243/32、3オクターブ下げて243/256倍、これは短2度下なので、逆数の256/243が短2度上である。これと純正律の短2度16/15倍を比べると、分母を揃えて(これも小学算数かな)、
ピタゴラス短2度
256/243=256×5/243×5=1280/1215
純正律短2度
16/15=16×81/15×81=1296/1215
となって、短2度はピタゴラスの方が狭い。ピタゴラス短2度を12回重ねても1オクターブにならないほど狭い(つまり平均律と比べても狭い)。全部の全音が大全音なので、平均律のように小全音を埋めて辻褄を合わせることができず、半音にしわ寄せが行った形である。
これは特にシ-ド間の音程が狭いことを意味していて、シが高い分、導音が不安定に聞こえ、主音への解決力が高いと言われている。短調の場合は旋律的短音階を考えればよい。壁を越えない限り、ピタゴラス音律はすべての半音が判明していて、旋律的短音階の導音-主音間も短2度だから同じ周波数比である。
まとめると、ピタゴラス音律は5度以外の和音を作るのには向いていないが、同じ名前の音程はすべて同じ周波数比なので、全音階は粒の揃った音階になる。特に半音が狭いため、主音への解決力が強い。