器楽と声楽の譜読み

私自身は吹奏楽もやっていたことがあり、譜読みは器楽・声楽とも部活動などで教えた経験がある。とりあえず、器楽の代表として吹奏楽部、声楽の代表として合唱部と書くことにする。

吹奏楽部でも合唱部でも、特に中学・高校あたりでは楽譜が読めない子が入ってくるということは普通にあると思う。ところが、1年経って新入生を迎える頃になると吹奏楽部では楽譜を読めない先輩というのはあまり見かけない。一方、合唱部の方は楽譜を読むのが苦手という人が結構いるのではないだろうか。

吹奏楽部でも合唱部でも楽譜はもちろんド・レ・ミ、と読むのだが、その後の扱いが少し違う。器楽の場合はドレミは指遣いに直結である。これは楽器に付いてくる運指表が楽譜と指遣いの対になってることからも分かるだろう。

一方、合唱部の方は自分で正しい音程を発声する必要がある。そのために絶対音感だとか移動ド(階名唱)だとか色々あって、これがさらに譜読みをややこしくしている。

私は合唱をやる時は基本的に移動ド読みだ。この駄文も移動ドについて書いていくつもりだ。吹奏楽をやっていた時も、初見大会の前にメロディーの感覚をつかみたい時は指遣いとしてではなく、移動ドで読んでいた。

吹奏楽の場合は指遣いに直結と書いた。それって固定ドじゃないの? と思う人がいるかもしれないが、ちょっと違う。例えば、吹奏楽部で使われているトランペットは普通はB♭管と呼ばれているものだ。

この楽器で「ド」を吹くと、実音ではB♭の音が出る。楽譜はどうなっているかというと、ドの指遣いで吹くべき音がト音記号の「ド」の位置に書いてある。つまり、楽譜に「ド」と書いてあるとラッパ吹きはピアノのシ♭の音を出す。クラリネット・ソプラノサックス・テナーサックスもそうなっている。

ホルンはドと書いてあったら実際に出す音はF、アルトサックス・バリトンサックスはE♭だ。ところがややこしいことにトロンボーン・ユーフォニアム・チューバなどの低音楽器はみなB♭管なのになぜかヘ音記号の実音で書かれている。彼らは楽譜にドと書いてあると、レの指遣いで吹くのである(運指表がそうなっている)。

だから、吹奏楽部の全体練習で「ドの音を出してください」と言ってしまうと、しばらくざわざわした後に「どの音ですか?」というダジャレのような真面目な質問が返ってくるだろう。

吹奏楽でみんなに同じ音程を出して欲しければ、だいたいの団体ではドイツ語で実音を言えばいいことになっている。「Es(エス、E♭)の音を出してください」と言えば、トランペットの人はファ、ホルンの人はシ♭、アルトサックスの人はドを吹いてくれて、その結果、みんな同じ音程になる。

これは吹奏楽をやったことのある人には普通の日常だと思うが、合唱しかやったことがない人には何を言ってるのか分からないかもしれない。

何が言いたいのかというと、吹奏楽ではドは固定でもなければ、階名でもないことが多く、それが普通の世界である。が、フルート・オーボエの人の中には馴染めない人もいるとかいないとか…
注: 彼らはドを吹くと普通に実音のCの音が出る

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