臨時記号に対応する(調号1〜6個の場合)

調号が1個から6個の場合は、音によって調号があったりなかったりするから、調号がない音については調号がない場合のルール、調号がある音については調号7個のときのルールを適用すればよい。

とはいっても、演奏中に調号が付いているかどうか判断するのはなかなか骨の折れる作業である。実はもっと簡単な方法がある。ただし、ひとつだけ、余計な臨時記号が書かれていないという条件を満たしている必要がある。

この場合、ある音について小節の最初に出会った臨時記号については、

調号がシャープの場合は、シャープとダブルシャープは半音上げ、ナチュラルとフラットは半音下げ
調号がフラットの場合は、シャープとナチュラルは半音上げ、フラットとダブルフラットは半音下げ

でいい。つまり、シャープな調はシャープっぽいのは半音上げ、ナチュラルはフラットに脳内変換でよく、フラットな調はフラットっぽいのは半音下げ、ナチュラルはシャープに脳内変換でよい。

一度臨時記号が付いた音は、その音に最初に付いた臨時記号がシャープかフラットなら調号なし、それ以外(ダブルシャープ・ナチュラル・ダブルフラット)なら調号ありと判明するので、あとはそれぞれのルールに従えばいい。

ただ、臨時記号のルールに慣れればナチュラルで半音下げたなら元に戻すのはシャープ、と直感的に分かるようになるので、実際にはそんなに困らないはずである。

結局、移動ドの臨時記号は脳内変換と直感で読める(…のか?<どこのスポーツ新聞だ)。正しい楽譜はそれで読めるように書かれている。

たとえは、ニ長調はFとCにシャープが付いている。もし、ニ長調の読み方のままフラットを付けていくとしたら、シ・ミの順で付くが、実音でいうとこの順でシャープが外れていくので、CisとFisに対応する。つまり、CisがTiで、FisがMiだ(楽譜を見ればすぐに分かる話である)。

シャープが付きやすいのはFa・Do・Soであった。これらの音には調号は付いてないから、普通にシャープが付く。一方、フラットが付きやすいのはTi・Mi・Laであった。TiとMiは調号が付いているので、半音下げるにはナチュラルを付ける必要があり、Laは調号が付いてないのでフラットをつける必要がある。

ロ長調の場合、F C G D A に調号のシャープが付いており、Ti Mi La Re SoがAis Dis Gis Cis Fisに対応する。Fa Doは調号がついてないので半音上げはシャープ、Soは付いているので半音上げはダブルシャープである。Ti Mi Laは全部調号が付いているので、半音下げはナチュラルである。

結局、ダブルシャープは半音上げ、ナチュラルは半音下げにしか使われていないので、調号がシャープなのを見た時点で、最初に出会ったナチュラルは半音下げと脳内変換を設定すればいい。調号がフラットの場合も同様である。

問題は余計な臨時記号がある場合である。この臨時記号はいわゆる「親切臨時記号」と呼ばれるもので、例えば前の小節にフラットが付いている音に、次の小節でナチュラルを付け、奏者に「老婆心ながらこの音のフラットの有効範囲は終わっているので、ナチュラルで演奏してくださいね」と促すものである。カッコで囲まれてることも多いのだが、囲まれてない場合も結構ある。

この親切臨時記号、自分のパートの臨時記号の打ち消しなら前にあった臨時記号からその音に調号が付いているかどうかが頭に残っているのでまだいいのだが、意外と広い範囲の臨時記号を打ち消している場合がある。

自分のパートにいきなりかっこのない親切臨時記号が出てくるとどうなるか。

例えば、ニ長調の場合は調号がシャープなので、A(So)にナチュラルがついていた場合は脳内変換でSeになる。この場合は滅多に使われない音なので「あれおかしいんちゃう?」と気がつく。

しかし、H(La)にいきなりナチュラルが付いていると脳内変換というか、素直な私はなんの疑いもなくほとんど脊髄反射で半音下げてLeにしてしまい、歌ってみて初めて「あれ何かやってもうた気がする」と気がつく。

で、よくよく楽譜を見てみると、テノール歌ってるのに前の小節のソプラノのHにフラットが付いてました、とか、そんなん初見で分かるわけないやろ! ひどい時にはSATBどこを見ても見つからず、よく見るとピアノ譜の臨時記号の打ち消しだった経験もある。

これはもう、親切臨時記号ではなく、お節介臨時記号である。こういう時には仕方がないので自分でかっこを書き加える。浄書屋さん、お願いですから親切臨時記号には必ずかっこを書いてください。じゃないと脊髄反射移動ドロイドがバグってしまいます…


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