「守り」のプロフェッショナルの弊害
地方公務員は、基本的には「攻め」の職業ではありません。
社会のインフラ、保健福祉、環境を守るための仕事です。
これらは、人間が営利目的を持って活動した場合、対応が後回しになるものです。そのため、皆さんから税金をもらって、一定の安心安全安定を保てるように、仕事をするのが公務員です。
教育職も、人が一定の教養を持てるよう、指導する仕事です。逆に言えば、子供たちが社会に振り落とされないように一定の知識を与えるための職業であり、悪意ある人間に食い物にされないようにする仕事です。
そのため、収入や社会的地位は、一定のレベルが保たれなければなりません。統治側の雇用や生活が不安定になった場合、統治構造が崩れてしまうからです。
これはどういうことか?世界各国の状況を調べればわかります。賄賂や暴動、クーデターなど、色んな国で不穏な出来事が日々起きています。ある意味、ミャンマーなんかも良い例ですね。
それに比べると、「法律」と言う目に見えないもので、さらに「人権」と言う目に見えないレベルで、YES・NOを議論できる環境を有する日本は、非常に稀有なものとなります。
それを支えているのが、公務員制度であり、実際に働いている公務員ということになります。
ただ、民間企業と比べると、これはいわゆる「守り」の職業となります。「価値」を生み出す職業ではなく、「価値」を守る職業です。
そのため、プロフェッショナルは育てない、3年で部署異動するのが一般的、給料も成果報酬型ではなく年功序列型、など、さまざまな制約が生じてきます。
制度の良し悪しは別として、この職業を選ぶかどうかは、個人の考え方によります。
自分が「価値」を生み出すのに向いてないなと思えば、それは適した職業だと思います。他方で、「価値」を生み出すことが好きだったり、何かを成し遂げたいと思っている人には、公務員はお勧めしません。
ただ、今後の未来は少し複雑な状況になります。「価値」を生み出さなくてよかった社会制度の根幹が、少しずつ崩れてきているからです。
お金を集める対象だった住民が高齢になりかつ減少していく中で、組織の運営費用は少なくなるのに、安心安全安定を維持するためのコストは高くなって行くのが、これからの40年です。
昔の人口に戻るだけだし、昔は昔で何とかなっていたじゃないか、という方もいるでしょう。確かに、2060年の想定人口は、戦後の1950年の人口とほぼ同様の8,500万人になります。(現在は、1億2,500万人)
しかし、2060年は、人口の45%を65歳以上が占めています。(1950年は、5%です)
職場の約半数が、65歳以上と考えてください。恐ろしくありませんか?
広がりきった道路を使う人も、現在の2/3になっています。それを誰が工事をして直すのでしょうか?使うアルファルトの量は一緒ですが、誰がその費用を払うのでしょうか?
この状況変化の元では、「価値」を生み出さずにルーティーン業務を行っていればよかった公務員が、「限られた資源で、いかに効率的に効果的に業務を運営するか」という価値を生み出す必要が生じてきます。
ただ、残念なことに、現在の上の立場の方は、そういった訓練を受けていない方が多く、十分な指導を行うことが難しいです。また、そういった方が、未来の計画を順番に立てていくことにもなりますので、状況は改善されないまま、悪化のループを辿ることになります。
また、仮に若手などが一念発起して改善検討しても、その「価値」が評価され給与に反映されるシステムにもなっていないので、誰もやる気を出さず、スルーされていく、というのが実情です。
そうやって、誰も変えられないままシステムは悪循環に陥り、どんどん衰退していく地方自治体は多いでしょう。
なので、結論としては、22歳の方がいらっしゃったら、このタイミングで安易に地方自治体の公務員になるのはやめておいた方が良い、ということです。(一部の人口増する自治体を除く)。おそらく組織やシステムの変動なく定年まで逃げ切れることは不可能しょうし、なおかつ、価値を生み出すスキルも身につけることができないので、非常に人生のコスパが悪いです。
どの自治体も、数十年後の推定人口を情報発信しているので、もしどうしても地方公務員になりたいのなら、人口が増える自治体を選びましょう。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
ひとりシンクタンク