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イタリア機の魅力について語りたい〜その2
前回の続きで、今回もイタリア機の魅力について語ります。
イタリアが航空機業界をリードしていた時代は第一次世界大戦と第二次大戦の間の「世界恐慌もあったけど、つかの間の平和」と言われた1920〜1930年初頭です。
国民性なのでしょうか、戦争はてんで弱いと言われるイタリアですが、こういう平和の時代には個人のセンスと技術、情熱が遺憾なく発揮される時代でした。
また、途中からムッソリーニの多大な援助もあって、更に優れた航空機も生み出していくことになるのですが、次第に国家の総合力の差が出てきて他国に水を開けられることにも。ま、それはもう少し先の話。
なので、この時代はまだロマンが残っていて好きな人も多いですね。宮﨑駿氏もその一人なのでしょう。
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スタジオジブリの”ジブリ”もイタリアの航空機の名前から来ています。
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◆翼は多ければ良いという訳ではなかった!カプロニ Ca.60 ノビプラーノ
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一度見たら忘れられないインパクト。世界初で最後の前後3列に3葉の主翼を持つ世界で唯一の機体です。
合計9枚の翼と8機のエンジンの巨大な水上飛行機。この時代で100人の乗客を乗せて大西洋を越えるという壮大で、夢があるというか、野心的過ぎるともいえる計画でしたが、実際の初飛行では、すぐに湖に墜落してしまいます。
飛行テストのシーンの映像は残されているのですが墜落のシーンがないのです。それはカプローニ伯爵が撮らせなかったからだとか。
映画「風立ちぬ」の中でも「撮るな〜!」と叫んでいますが実話です(笑)。
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◆複葉機なのにB-29に匹敵!巨大複葉機カプロニ Ca.90
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これも映画「風立ちぬ」に登場してきた飛行機です。 初飛行は1926年。とにかく大きい!当時世界最大の航空機で、下翼の幅が46mもあります。映画でもみんながワイワイ乗っている飛行機がこれ。
全長26.95 m 翼幅46.60 mってどのくらいかというと、B-17爆撃機が全長22.6mの全幅31.6mなので、これよりも巨大で、B-29爆撃機が全長30.2mの全幅43.1mですから、ほぼ匹敵しているくらい。
これを、10年も前に、1,000馬力のエンジン6基で飛ばしていたのですからたいしたものです。複葉機としては今後も作られることはないであろう世界最大の飛行機です。
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◆航空評論家をして「理解に苦しむ構造」と言わしめたCR.42ファルコ
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CR.42ファルコは、CR.32の発展型で高速複葉機として有名です。原型の1号機に至っては主翼と主脚が保守的な複葉固定脚にもかかわらず尾輪だけがなぜか引込み式という「理解に苦しむ構造であった」(航空評論家・関川栄一郎/談・1965年・航空情報8月臨時増刊号)と言わしめています^^;
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こちらは、CR.42の前のタイプ、最も成功したと言われる複葉戦闘機CR.32(1935年初飛行)です。この飛行機の成功が逆にイタリア空軍を複葉戦闘機に固執させることになってしまいました。世界各国は金属低翼の時代に移行していたのですが、イタリアは「複葉機はまだイケる」と、昔に戻って開発を続行したのです。成功体験から抜け出るのが大変なのは各国共通なのです^^;
さて、このCR.42。運動性能は良好で、空戦能力は高く評価されていているのですが、驚くべきことに、この機体に有名なダイムラー・ベンツDB601Aエンジンを搭載して複葉機の最大速度520Km/hを記録してしまったことでしょうか(CR.42B試作機)。
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DB601Aって、Bf109や、MC.202などの最新鋭の戦闘機に搭載されているエンジンで、日本でもライセンス生産されて飛燕や彗星にも搭載されたエンジンなのです。
まさか、DB601Aも今さらながら複葉機に搭載されるとは夢にも思わなかったでしょうね^^;
◆他国ではあまり見ない3発機、SM.79、Z.1007など
エンジン3つってあまり見ませんよね。でもイタリア機では多いのです。 SM.79、SM.84、カントZ.1007など。
ドイツもJu52という有名な飛行機がありますが、これは元々単発機として設計されていました。 双発ではパワーが足りず、かといって四発では重量過多で不経済という、エンジンの発展の過渡期にのみ登場したのですが、イタリアは当初から三発エンジンで設計した数少ない国なのです。これもイタリアンな発想ですね。
空気抵抗を考えて、背中に巨大なフェアリングをつけたSM.79
猫背のような独特のデザインです。
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SM.84です。ツンと飛び出した機首がなんかステキです。
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さて、2回で終わると思いきや、まだまだ出てきたので、もうちょっと続けます(笑)
イタリア機はカラーリングも含めて魅力的なデザインが多いですね。