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#004|逆境をハネ返した、ボトムアップ型・組織改革
【はじめに】
こんにちわ。EDIIT Inc.・CEOの榎本です。
前回の記事「-1億円の赤字決算から、+3億円の黒字決算への軌跡」では仮説立案後の分析に重きを置いた、一連のプロジェクトの流れをご紹介させていただきました。
今回フォーカスするのは「組織改革」です。
2つの企業が合併して1つの企業になった時に生じた企業文化の衝突。例えば、意思決定においてもA社とB社の体質は真逆だった事例になります。
【A社】
「トップダウン型」の組織
ボードメンバーが決めたことを迅速に実行する文化
【B社】
「ボトムアップ型」の組織
現場が主体的に考え、アイデアをエスカレーションし、実行に移せる文化
一つになってハレーションが起きないはずがありません。この現象に対してどう物事を進めていくのか。実例をもとにご紹介します。
今回はプロジェクト内で実際に使用した資料も掲載していますので、どうぞ、ご期待ください。
01.As is → To be から本質的課題を導く
最も大切なのは「文化の違いを埋めること」ではなく、「事業サクセスに向けて最適な組織のあり方を定義し、その理想(To be)と現実(As is)のGapを埋めること」です。
後者だけでは不十分。文化の違いが埋まっても、足腰の弱い組織であってはいけない。フレームワークを図式化するとこういった感じです。
A社とB社にあった文化が、一つの文化になっていない。会社としての哲学も美学もここにはありません。あらゆることに基準がない組織では、どんな優秀な社員も力を発揮できないでしょう。
ヒアリングを重ねてみると、現場・経営陣間、階層間、事業部間と縦にも横にも意思疎通ができておらず、その状況は深刻。
ワンチームになって躍動している組織へと、どう変革していくのか。
これが私たちに与えられた問いでした。
今回の記事ではその中心的な役割を占める、行動指針(クレド)の制定にフォーカスして解説させていただきます。
02.当事者意識を引き出す、ボトムアップ型PJ運用
今回私たちが大切にしたのは、クレドそのものではなく、クレドを決めるプロセスです。
100人を超えるこの組織の一人ひとりに、どう当事者意識を持たせるか。ESサーベイや、360°サーベイなど、調査を繰り返し、今起きていることを関係各位が認識する必要があります。
「調査のご協力をお願いします」と言うと、初期の頃は
「こんなことに時間を割いている暇はない」
と、面倒に感じていた社員さんもいらっしゃいました。ところがいざ進めてみると顔色が変わります。
「ふだん一緒にいる仲間のことが、想像以上によく分かっていなかった」
「自分の長所と短所が、他者からの評価と想像以上にズレていた」
「仕事や組織に対して積極的にがんばりたい人が想像以上に多かった」
と「想像以上に」というキーワードが入った感想が散見されました。第三者的に組織や自らを見つめ直すことで、徐々に雰囲気として出来上がっていったのです。
こうした「気づきの輪」をトップはもちろん、現場の社員さんなどに対してもつくっていき、全方位的に広げるボトムアップ型のPJ運用を心がけました。
03.アンケートひとつにも、熟考を重ねる
実際に私たちが取組んだアプローチは地道なことの積み重ねです。
場の仕切り方や、その時に使う言葉、間、座る場所、使う部屋、メンバー選定、ワークシート設計など、細部に渡るまでこだわること。
これがすべてです。
「そんなところまで?」と言われる例で言えば、行動指針(クレド)の言語化を目的にしたアンケート。
直接的に対面できない方々の当事者意識を引き出し
・あなたの考えは貴重だ
・あなたの考えを余すことなく、出して欲しい
という想いが伝わらなければ何の意味もない。そこで考えたのが、下記の項目。実際にプロジェクト内で使用した資料です。
行動指針の候補に対する、納得度合いや、その理由、ベターな表現についてまで書くスペースを設けました。加えて、
「全体を通して気になること、伝えておきたいこと」
と、アンケートで収集したい項目だけではなく、そもそもこのプロジェクトに対する感触についても、意思表示できるよう項目を用意。
感情をため込まず、吐き出せるようになっているかどうかは何度も見直しました。
結果、アンケートの回収率はほぼ100%。Google フォームを経て収集したデータの数々には会社に対する熱い想いで溢れていました。
これらがその後のプロジェクトチームの活力になったことは言うまでもありません。クレド開発に大きくドライブがかかり、slack内でのやりとりも活発になっていきました。
クライアント企業が変わろうとするこの瞬間は、何度経験してもシビれます。
04.インパクトを鮮明にした、新型コロナ
ところがここで大きな事件が起きました。
当初は全員対面での発表を想定していたのですが、新型コロナの影響を考え、クレド発表の場所がオンラインに移ったのです。
「一番の盛り上がりの時に、どうしてオンラインなんだよ・・・」
大事なことはリアルじゃなければ伝わらない。ものすごく悔しい気持ちになりました。およそ100名以上が参加するZoom Meeting。初めてのチャレンジにさすがの私たちも緊張を隠せません。
そしてようやくクレド発表のパートへ。
行動指針のコアとなっている3つの要素の説明を始めました。
短いワードの掛け合わせと具体例を並びべ社員の方々からいただいた言葉を引用するなどして導き出したプロセスもご説明。
さらに浸透施策では四半期ごとのアワードを提案。選んだ人も、選ばれた人も、嬉しい気持ちになることを強調しました。
目標設定への落とし込みへと各論の話も続きます。すべての話が終わり、画面を見つめる私。微妙な沈黙に変な汗を書きました。
「・・・ダメだったのかな? やっぱり、オンラインだと限界があるよ」
と、肩を落とし、弱気な気持ちに支配されそうになった刹那「ポン!」と出てきた「拍手」のアイコン。
それから波が押し寄せるようにPCの画面を埋め尽くした「拍手」や「笑顔」のリアクション。
そして何より社員さんの嬉々としたお顔。何が起きているかが分かってきた時、少しずつ口元が緩みました。
「やった、、、やったんだ!!! 想いは届いている・・・!」
こみあげてくるものがありました。
「やりましょう!」
「納得です! ありがとうございます!」
「これ、めっちゃいいですね!!」
PC画面の向こうにいる、社員さんからたくさんのコメントがやってきました。
あんなにバラバラだったのに、遠い場所から心を一つにしている。この数ヶ月間の想いは、組織に、人の心に、届いていたんです。
リアルな発表の場がなくて頭を抱えていたのですが、リアクションが視覚化できるオンラインだからこそ、良かったのかもと思えるようになりました。
05.文化の違いは、成長のキッカケだった
その後、本プロジェクトを進めていたSlackにもたくさんの方からメッセージをいただきました。
「EDIITさんたちの本気にシビれた」
「正解がないところに、正解を出すのは難しかったと思うけど、きちんとやりとげてくれて大変満足している」
「EDIITさんの小さな気遣いの連続が、今回のような大きな成果に変わったと思う」
などなど。ありがたい言葉が並びました。そんな中、一つのコメントが目にとまりました。
「2つ会社の違いが悪ではないと知った。違いとは、成長のチャンスだった。そのことに気づけたのが、一番大きかった。ありがとう」。
という言葉です。
直接、お話をお聞きしてみると「何度も意見を交わすことでお互いを認め合える感覚になれた」とおっしゃるのです。
組織論に正解はない。だからこそ、相手を認める考え方、姿勢を持つことが大事なんだと私自身、大変勉強になりました。
息を吹き返した同社は、一つの方向を向き、今はもう、次のステージへと進み続けています。異なる価値観の人間が手を取り合うと、やっぱり強い。違いを認め合う組織へ。EDIITを経営し始めてから一層、そう思うようになりました。
●編集後記:困難に立ち向かう、足腰の強い組織へ
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
組織改革、いかがだったでしょうか。「行動指針」という言葉は、ふだん、仕事をしていればなかなかフォーカスする機会もないかもしれません。
何ヶ月もかけて、何度も打ち合わせをして、アンケートを集めてそしてようやくできた行動指針に対して
「迷ったり、立ち止まったりした時、立ち返ることのできる言葉が見つかった。これは宝物です」
と言われた時にはもう「泣いてもいですか」って思いました(笑)。これからも社史に残る仕事を続々とつくっていきます。次回もどうぞ、ご期待ください。
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