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社会人初の夏休みにで寝台特急で山陰に行った話

2019年8月7日、私は浦和での研修を終え、ギターを抱えて東京駅へと向かっていた。
今回向かうのは島根県や鳥取県、山口県といった山陰方面、そちらで路上ライブを行うのだ。これまで様々な場所で路上ライブを行ってきた私だったが、これらの地域は行くのも初めてだった。
今回も幸運にも、寝台特急のチケットを手に入れることができた。今回乗るのはサンライズ出雲、これに乗って米子まで向かう。

東京駅には、発車の30分前に到着した。
2回目の寝台特急ということもあり、少しは余裕を持って向かうことができた。とはいえ、寝台特急での旅はいつもワクワクする。これから向かう場所をスマホの地図で確認していると、あっという間にサンライズの車両がやって来た。
今回は個室を予約できた。社会人初めてのボーナスは、ややフカフカのベッドと秘密基地のような個室というのは鉄道好きとしては本望だ。
寝間着のTシャツ姿でベッドにゴロンとなっていると、列車がするすると動き出した。

夏休みが始まる!そんな滑り出しだった。まだ通勤客が大勢いるホームをどんどんと通過し、夜の町を縫うように進んでいく。
その時間がたまらなく好きだった。しかし、今回も仕事の疲れや暑さもあり、熱海を過ぎたあたりでB寝台のベッドに吸い込まれるように眠りに落ちてしまった。

翌朝、目を覚ますと、朝もやの山間部を列車は進んでいた。どうやらもうすぐ岡山に着くらしい。
前回、のびのび座席(一番安い部屋)で乗った際には姫路を過ぎたあたりで目を覚ましてしまっていたため、やはり価格の差を感じずにはいられなかった。(7000円くらいの違いがある)

サンライズ瀬戸との切り離しを写真に収めたかったが、出雲号もすぐに発車してしまうため、私は泣く泣く部屋で大人しくしていることにした。
程なくして出雲号も伯備線から山陰線へと続く線路を進み始めた。
倉敷を出たあたりで伯備線へと入っていくと、路線の様子が様変わりし始めた。

海沿いの景色を後にすると、どんどんと山間部に入っていく。川に沿って単線の路線を進んでいくため、揺れる揺れる。しかし、一番の違いは線路の音だった。
なんとも懐かしい「ガタンゴトン」という線路の音がリズミカルに聞こえ始めたのである。

今日の路線の多くはロングレールと言って、1本の長さが200メートルを超え、かつ継ぎ目が音の出づらい線路が使われている。そのため、車輪が線路の上を滑っていく音はたくさん聞こえても、あの「ガタンゴトン」という音はそれほど多く聞こえなくなってしまったのである。

伯備線は、おそらく、路線の設計が古いため長い道がそれほど多くなく、長い線路を使用することが難しいというのが理由ではないだろうか。

うっそうとした山の中、ガタンゴトンと線路の音が鳴り響くと、なんだか昔へとタイムスリップしていくような気持ちになる。
それもそのはず、この旅の最初の目的地は、妖怪「ゲゲゲの鬼太郎」の生みの親、水木しげるさんの故郷、鳥取県境港市だからだ。

列車は、米子駅に到着した。


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