【エヴァ考察】 インパクトの方術試論
今回は人類進化の儀式、インパクトの方術についてです.やや混み入った話になりましたが説明できた範囲は類を見ないものになりましたので、どうか最後までお付き合いいただければと思います.
1.インパクトとその方術
各インパクトはそれぞれ人類補完計画のために踏むべき手順、儀式でした.
そしてインパクトには方術(やり方)があり、ミサトによればインパクトごとに異なるようです.もっとも方術は異なれど、道具としてトリガーと贄が必要なことはご存知かと思います.次のゲンドウの台詞はアディショナルインパクトの際のものです.
加えて、どのインパクトでも12枚の光の翼、あるいはエネルギー流が発生していることが次の通り指摘されています(下記Tweet及び動画9:40).
動画で述べられている通り光の翼が「リリスの再現」とすると、それはインパクトの度現れることから儀式に重要な存在、儀式の主宰者(中心となって事にあたる人)を意味しそうです.
そしてリリスは神同等の存在ですから、儀式の主宰者たる資格は神であると推察できます.
このことから次の理解に至ります.インパクトの際にエヴァが擬似シン化していた意味は、生命の実を得た覚醒エヴァ(生命の実+知恵の実=神)を神の代用として用いていたのだと.
また、劇中13号機によるインパクトの場合、シンエヴァのフォースではネルフ戦艦×4、Qのフォースではネルフ基地、セカンドインパクトではアダムス×4を合わせることで神の代用としていたと考えられます.
なお13号機はセカンドインパクト時には存在しませんが、同機体の素体であるアダムスが南極爆心地にいたことがわかっています(たとえば「13号機とシンクロの話」).
2.聖なる槍とは何だったのか
次に、インパクトのシーンに登場しがちな聖なる槍を取り上げます.ヒトではない何者かによりゴルゴダオブジェクトに残された6本の槍.セカンドインパクトの回想シーンで4本確認され、それらがインパクトに用いられたと考えられます.
そもそも槍とインパクトはどういった関係にあるのでしょうか.本編の次の事象を素材に検討していきましょう.
槍を持っていたり持っていなかったり、持っていても使ったり使わなかったり?いったん仮説を立てて検討したいと思います.それはセカンドの儀式は完了したがその他は未完に終わった.このことに槍の消失は対応するというものです.
つまり、セカンドは儀式として完了したから4本の槍は消失した.ニアサーは未完だから槍の消失はもちろんそもそも使用されなかったと.
セカンドが完了していたのかは微妙なところですが、それはそうとアディショナルインパクトに関する次の台詞をみてみましょう.
アディショナルはゲンドウがユイと再び会うための唯一の方法でしたが、彼が残念がっていることからアディショナルは未完といえます.にもかかわらず、槍は失われていることが分かります.したがって、槍の消失とインパクトの完了・未完は関係がなさそうということになります.
さらに次のことがわかります.槍は使用すれば消えるもの.したがって、インパクトの際、槍を手にしているのに消失しないケースは、槍を持っているだけで使用していないということになります.よって、Qの13号機はインパクトの際に槍を持ってこそはすれ使ってはいないのです.
では、ニアサーはどうでしょう.初号機は槍なしでインパクトを起こしていましたね.これらのことから次のことがいえます.そもそも槍は必ずしもインパクト発動に必須のアイテムではないということです.
最初に取り上げた槍の消失にまつわる2つの事象はこのように理解できます.結局、インパクトを起こすにあたって槍は必要なければ使わない、必要あって使うと消える一度きりのアイテムという理解になりそうです.
もっとも、使うと消失してしまう点について厳密にいえばそこまで言い切れないのも事実です.例えば旧劇では槍と融合して生命の木となった初号機はその後自身の口から槍を取り出しました.この融合の際に使った槍を仮に贄の代用として消費したと考えるなら、これまでの説明では説明できない事柄です.
ちなみに槍が必要ない場合というのは、先ほど触れた「トリガーと贄」が揃っている場合です.では逆に槍が用いられる場合、すなわち槍が必要な場合というのは、トリガーや贄が揃っていない場合ということになります.このあたりは後で整理します.
また,アディショナルインパクトに関する先ほどのゲンドウの台詞です.
思えば各インパクトでは何かしらの生命体がトリガーや贄となりましたが、この台詞によればアディショナルでは2本の槍がトリガーと贄を務めました.
また、セカンドインパクトでも贄となる使徒が用いられた形跡がないため、槍が代用されたのでしょう.
以上、槍はトリガーと贄の代用に使える.必要な道具が揃わないときに槍が代わりに使用されてきたのでは、と推測できます.
3.全インパクトの方術まとめ
ここまでの検討でインパクトに必要なものをまとめると次のようになります.
これを各インパクトにあてはめてみましょう.あくまで仮説段階の試験的なものだと思ってください.
どうでしょう.それなりに整理できたと思いますが、いくつか上手くいかない箇所も出ました.
まずセカンドインパクトです.回想の4体と5体目のアダムスの位置付け、関係が確定できませんでした.5体目だけトリガーなのか、それとも槍を贄として用いた4体がトリガーなのかなどよくわかりません.
そしてニアサーのトリガーについては、加持は初号機をトリガーといい(破)、リツコはシンジがまだトリガーとして利用価値がある旨の発言をしていてシンジをトリガーと見ているようです(Q).ここではシンジはLCLに還元されて初号機と一体化したと考えイコールとしました(劇場特典小冊子EEE参照).
また、フォース(シン)の全貌を明らかにしていないので、黒き月で造った槍を位置付けることができていません.そして、アナザーについては全くの予想外ゆえ対象外となりました.そこで次にフォースとアナザーの解明に向かいます.
4.フォースとアナザー
ゼーレのシナリオとゲンドウのシナリオが交差するのがアナザーとフォースの場面です.
両者のシナリオを確定する必要があります.そこでフォースで実際に起きた現象と、起こりえた現象の双方を視野に入れて考えていきます.
(1)ゼーレのフォースインパクト
まず、起こりえた側としてゼーレのフォースインパクトについて検討します.上記冬月の台詞からゼーレはフォースで黒き月を用いる予定だったことがわかります.おそらく旧劇のサードインパクトのようなものでしょうか.
次に、実際に起きたネルフのオリジナル儀式、アナザーインパクトにまつわる台詞からゼーレの計画を推測します.
これらの台詞から、アナザーの内容は黒き月で槍を新造することであり、その目的は既存の2本の槍をアディショナル用に温存することになります.ここから本来ゼーレの計画では2本のロンギヌスの槍はフォースで消費される予定だったことがわかります.
具体的にどのように消費される予定だったかといえば、フォースインパクトの贄である使徒の代用として1本.そしてもう1本は生命の樹の出現に用いるものとしてです.
後者について説明します.先ほどゼーレのフォースは旧劇サードと似たような現象になったのではと仄めかしましたが、誰もが気になっていた次のカットが重要です.
旧劇をご覧になられた方なら知っている生命の樹です.新劇ではヴンダー甲板上でミサトらとゲンドウのやりとりと13号機がフォースを起こした後にチラッと映されました.この見た目から、旧劇で初号機がロンギヌスの槍と合体して変身したものになります.
これらを総合すると、シンエヴァのゼーレの計画では、13号機が1つ目の槍を使徒に代わる贄として消費し、さらに旧劇の初号機のように13号機が2本目の槍と融合して生命の樹になる予定だったと考えることができます.
(2)ネルフのフォースインパクト
そういうわけで、翻って実はアスカを贄として用いることはゼーレではなくゲンドウ独自の案だったことが分かります.このことは一応台詞に表れています.
ゲンドウとしては、ゼーレの計画のままだと13号機と初号機とともに2本の槍を持ってゴルゴダオブジェクトに向かうことはできなくなります.そこでアスカを使徒化させ贄とすることで槍1本の消費を回避した上で、13号機と2本目の槍の代わりに生命の樹を創り出すために、新たに黒き月から槍を新造した.
上のシンエヴァ生命の樹のシーンは、黒き月の槍2本で13号機とオリジナルの槍の代替として樹を造ったという理解になります.ここでも槍はアイテムの代用として機能しています.
ここで黒き月の顛末について劇場の流れで説明すると、まずアナザーで槍に変身→ガフの扉でエヴァインフィニティに変身→地球上のコアを回収→生命の樹へ還元という感じでしょうか.なおフォースインパクトについてまとめると次のようになります.
5.エヴァイマジナリーの違和感について
次に、エヴァイマジナリーを用いたアディショナルのシーンについて.このシーンは旧劇サードと起きている事象が似ているため比較するとヒントになりそうです.
ここではイマジナリーの頭部が旧劇黒き月の位置にあったことについて考えていきます.
まず旧劇のサードで思い出したいのは、生命の樹となった初号機が巨大リリスの額に取り込まれるシーンがあったことです.
シンエヴァでこのような描写はありませんでしたが、これと同じ事態が起きていたと考えられます.
というのも、上述の通りシンエヴァでは、生命の樹は2本の槍(黒き月)から成ります.この生命の樹が巨大イマジナリーの頭部に取り込まれていたと仮定すると、新劇ではリリスの頭部に黒き月があることになります(イマジナリーの頭部=黒き月).そこでリリスの頭部が腹部の位置にあるということは、黒き月の位置としては旧劇の位置と一致することになります.
仮にシンエヴァでリリスの頭部が首につながっていたとすれば、黒き月は旧劇の位置にないことになります.理由はわかりませんが、黒き月は絶対旧劇のあの位置にないといけないらしい.このズレを解消するために頭部が旧劇サードの黒き月の位置に置かれた.
シンエヴァでは黒き月が姿を変えてイマジナリーの頭部となっていたので、あのような違和感ある画になっていた.
翻ってこのように辻褄が合うため、シンエヴァでも生命の樹は頭部に取り込まれていたと考えられます.
以上からシンエヴァでは生命の樹=イマジナリー頭部=黒き月の関係にあることが分かります.ここからさらに次の2つの画像も理解できます.
1枚目の画像は旧劇で黒き月(ガフの部屋)に魂が還る描写です.2枚目は生命の樹(黒き月)にエヴァインフィニティ(全身コア=魂)が還る描写になります.画は異なるものの魂が還るという同じ現象が起きていたと理解できます(コア=魂の物質化については「人類補完計画とコア化」).
聖なる槍、フォース、アディショナルに関する考察の一助となれば幸いです.
今回は以上になります.最後までお読みいただきありがとうございます.
ご感想やアドバイスがあればよろしくお願いします.
画像:©khara/Project Eva.
※追記(2022/12/19)
「4.フォースとアナザー」を加筆修正.