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【閑話休題】 わたしリツコ、赤木リツコ…!!

今回は、特に運命は仕組まれていない赤木リツコさんについてです.
考察というより好きなことをあれこれ書きました.
以下、シンエヴァのネタバレがあるのでご注意ください.

1.これまでの赤木リツコ

TVシリーズ、旧劇及び漫画の世界を通し、彼女は憂き目を見てきました.母の愛人に撃たれたり、身代わりに辱めを受けたり、母の形見に裏切られたり.
新劇場版はそんな悲惨な世界線ではなかったようで、いずれも描かれませんでした.

カヲル君のように、この繰り返される世界で記憶の継続があるのでしょうか.悲劇を未然に防いできた感じすらあります.
また、過去作で唯一の戦闘?活躍シーンである、MAGIへの侵入事件が新劇では描かれませんでした.

2.現在の赤木リツコ

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画像の通りネルフ時代のリツコさんは基本的に技術屋でした.もっとも、おそらくヴィレの決起をきっかけに、シン・エヴァでは作戦の前線にも立つようになります.

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敵の陽電子砲あわやという場面でこの圧倒的仁王立ち.勇ましいにも程がある.
他にも「カチコミ完了」や「いつでもネルフに殴り込みに行けるわよ」などから、ゴリラ化が相当進行していることがわかります(赤木博士…いやキャプテン?ゴリキャプテンの少年期の声は緒方恵美さんだったりします).


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ゲンドウ「君か.問答無用とは相変わらず、目的遂行に関し躊躇がないな」
リツコ「ええ、あなたに教わったことです」

そしてこの即発砲のヘッドショット.幾度の世界を繰り返し蓄積された呪いなのか、かなり撃ち込みました.撃ったね!?二度…どころじゃなくいっぱい撃った!

これに関連して気になることがあります.旧作のリツコとゲンドウの確執が新劇では描写されなかったことです.もっとも、画コンテには確執をほのめかす描写があります.

次に引用するのは、破の、試験管で調整中のレイをゲンドウが食事に呼ぶシーンの後に予定されていたものです.

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破コンテ(マーカー引用者)

旧作っぽいですね.脚本には次のような描写があります.

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ゲンドウ「レイ、食事にしよう」
レイ(無線)「はい」
さっきまでとはうって変わって柔らかい表情のゲンドウ.
を見つめるリツコ.

破全集252頁

こうしたさりげない描写まですべて没.別レイじゃなくても「なぜ?」と思います.いくつか仮説を立ててみましょう.

①確執の設定自体を没にした説
②リツコ・ゲンドウの脚本を作れなかった説
③その他

検討します.まず上記「ええ、あなたに教わったことです」という台詞はゲンドウの個人レッスン(!)を示唆します.確執自体はあったと思います(①説否定).
次に、確かに、劇中アスカや葛城夫妻のようには描かれませんでした.しかし、それはシナリオを作れなかったからではなく用意したが作品にできなかったのではないか.
なぜなら、空白の14年の出来事だから(②説否定).
公表できない脚本に関する上記伏線は、回収できない本編にとって余分である.それは作品自体の面白さを削ぎかねない.こうした危惧を考慮し敢えてすべて没にした可能性はあるでしょう(③説).もしくは新劇場版を通して人の醜い部分は極力入れない方針になっただけかもしれません(次の動画を参照.9:00辺りから).


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ゲンドウ「真理の捉え方の違いだ.葛城大佐には世界が、赤木君には幸せのカタチが見えていない.ヒトの思いでは何も変わらんよ」

もう1つ、2人に関係ありそうな台詞です.ゲンドウにとって、人を捨てなければ叶えられないユイとの再会.約束の地での邂逅.それが彼の求め続けた幸せ.ネルフ時代のリツコはこの究極の願いに気づけたのでしょうか.気づいたからこそ謀反したのか.

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ミドリ「アナザーインパクトを無理やり起こしてあの男は何がしたいんですか」リツコ「アナザーの目的として考えられるのはただ1つ、アディショナルのために二本の槍を最後まで温存したの.そう、たった1つの願いのために」
ミドリ「馬鹿らしい.ただのエゴじゃん」

リツコは何も言いませんでした(それよりミドリの台詞からすると、ゲンドウの願望はクルーの皆に周知らしい).

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いずれにせよ彼女のこの据わった目と清々しい短髪は、ヴィレの反乱で死線をかいくぐったからだけではなかったことは次の台詞から読み取れます.

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マリ「頭髪には神も穢れも煩悩も宿っている.まさにカオスなヒトの心の象徴よん」

リツコの髪型は自分の“カオスにケリ“をつけたことを意味します.それは先ほどの問答無用のヘッドショットに表れているのでしょう.

つまるところ空白の14年の映像化は必至.

特典の『EVANGELION:3.0(-120min.)』があの内容になったのも、ありうる続編に気を遣ったものと理解できないでしょうか.


3.メタ話

ところで、リツコのおかげで新たな槍の創造に成功します.
彼女なしに世界の新たな創生はあり得なかった.

ミサト「ヴンダーに人の意志が宿ればさらなる奇跡もあり得るわ.リツコの知恵とヴィレとヴンダーの言霊を私は信じる」

上の台詞にも表れていますが、リツコとミサトは対になるように設計されています.知恵・合理性のリツコ、意志・覚悟のミサト.それは次の庵野さんの言葉にも見て取れます.一部を引用しましょう.

「アニメーションを観るのは、面白い」
「アニメーションを作るのは、さらに面白い」
「特に『エヴァ』は面白いと思う」
「効率論を駆使した方法と、無視した方法が混在している、ハイブリッドな作り方をしているからだ」
「『新劇場版』も同じような作り方になった.つまり、奇跡の詰め合わせみたいな作り方で作品になったのだ」
「その奇跡をカタチにするのが、ヒトの意志だと思っている」
「スタッフ、キャストのリスクと責任を負う覚悟が、その意志を生み出していると思っている」

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 全記録全集』1頁

劇中で奇跡を起こそうと奮闘する2人と、面白いアニメを作るべくもがいた制作陣は庵野さんの中で重なる.
赤木リツコは、庵野さんが制作で大切にする車輪の片輪を象徴する人物.


4.個人的名場面(厳選)

最後に印象深かったリツコのシーンを2つ紹介します.
まず、かの有名な破のラストです.

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(C-1854)「そう、セカンドインパクトの続き、サードインパクトが始まる」

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(破C-1855)「世界が終わるのよ」

厨二がうずきます.このシーンだけ何回再生したことでしょう.ここはリツコが語るからよいのです.人智を超える現象を、知恵を司る彼女が語るから引き立つのです.声を担当された山口由里子さんに感謝.

次はシン・エヴァから.

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リツコ「ミサト、そうして格好つけてても本心では戻ってきてくれたって喜んでるでしょ.情動で動くとロクな目に遭わない.あなたの経験よ」
ミサト「いつもながら、キツいわね」
リツコ「ミサトを甘やかすとロクな目に遭わない.私の経験よ」

艦長補佐の務めも果たしつつ、旧知の仲としての思いやりも忘れない.痺れました.台詞直後のアイキャッチ挿入も乙な演出.間に別のシーンを挟みながらも、これだけ充実した2人のかけ合いは『:序』以来なので、それも相俟ってアツいです.

かたや「始めよう、冬月」「本当にいいんだな、碇」.対照的すぎる.

以上2つのシーンだけでもリツコはエヴァに欠くことのできないキャラクターだと改めて感じることができます.


5.潔癖症(追記)

リツコ「潔癖症はね、つらいわよ」(14話C-69)

旧作で自身が潔癖症と打ち明けます.そんな彼女の潔癖症が垣間見れる(と勝手に思っている)シーンを紹介します.破の食事会の招待状です.

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肉球シールや封筒などはおそらくリツコの所持品でしょう.彼女が猫の飼い主で身の回りに猫の小物が多いこと、レイが1人で手紙を用意できるとは思えず、レイの身の回りの世話はリツコが対応していることを合わせれば、レイが手紙作成をリツコに相談したことが想像つきます.赤木博士が綾波にやさしい…?

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(破C-789〜790)
ミサト「愛、じゃないの」
リツコ「まさか、ありえないわ」

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破コンテ

もっとも、レイに愛だなんて「笑止!」と言わんばかりです.とりあえずあり合わせのレターセット(用紙や封筒)をレイに渡したものの、預かった手紙の封が閉じられてなかった.レイは封止めとか知らなそうですし.やさしさというより閉じられていないことがリツコは気になってしまった、というのが私の見立て.シールはとりあえず私物から工面する他なかったので猫ちゃんシール.


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「私を原料に、よくここまで…」

今回は以上になります.最後まで読んでいただきありがとうございました.
皆さんのリツコエピソードよかったらお聞かせください.


シン・の台詞参考にさせていただきました↓


画像:©khara/Project Eva.

※追記(2021/08/23)5を追加

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