松茸よりもおいしいキノコ?
スーパーなどの店頭で「中国産」などと書かれて販売されている松茸のうち、少なからぬ割合で北朝鮮産のものが含まれているという話を聞いたことがあります。
松茸は北朝鮮の主要な輸出品として、以前は大量に日本に入ってきていましたが、経済制裁によってそのルートが遮断されたため、密輸とかいったん中国向けに輸出された後経歴をロンダリングされて日本に入ってきているとか。
松茸はハゲ山に生えるキノコです。経済制裁によって原油の輸入が制限されている北朝鮮では、燃料源を山からの薪炭に頼る部分が大きく、そのため山に木々が少なく土地が貧栄養化し、結果として松茸にとっては非常に好適な環境が維持されています。
高度経済成長期以前の日本も、北朝鮮と同じように山の薪炭が燃料として用いられることが多かったから、ちょっと山に行けば松茸はいくらでも取れていたそうです。
その後、燃料が石炭に代わり石油に代わり、里山の利用度が低下するにつれて、松茸は現在のような超高級なキノコとして認識されるようになったとのこと。
キノコ図鑑など読んでいると「○○というキノコは××の地域では松茸よりも珍重されている」などと書かれた記述を時々見かけます。
これは松茸が非常に安かった時代には松茸よりも高く取引されていたけれど、その後松茸の値段がどんどん上がっていくにつれて値段が逆転したのでしょう。値段が価値を決めるわけではないですが、それでも「高い」と言われたら「おいしいのかな?」と思ってしまうのは人情ですよね。
松露、チチタケ、クロカワ、コノミタケ、コウタケ、なんかが「地域によっては松茸よりも高い」として紹介されることがある印象です。
かつてはシイタケやホンシメジ、マイタケなんかも松茸より高価だったようですが、栽培可能になった結果価格は一気に低下しています。
地域的に好まれるキノコは癖の強い物が多いです。
松露は比較的穏やかな松の香りでシャキシャキした触感が特徴の上品なキノコです。造成地の松の木や浜の暴風林の松の根っこに寄生しており、半分埋まって生えているから見つけるのが難しいですね。
チチタケは煮干しのような魚の香りとボソボソした触感の悪さで好みが分かれる。栃木県で異常な人気があるのは、海なし県であることと無関係でない気がします。
クロカワは歯切れのよい触感と噛むと滲み出してくる出汁のようなうまみがあるが、苦みがあるため好き嫌いが分かれるキノコです。ただ、酒に合うキノコとしてとて酒飲みには人気があります。黒い落ち葉のような見た目なのでこれも見つけるのが非常に難しいキノコ。
コノミタケは北陸で非常に人気のあるキノコ。中国山地でも数は少ないが生えています。食用菌として人気のあるホウキタケに姿は似てますが、特有の松脂のような香りがあります。また、ホウキタケはポキポキしたマイタケのような触感ですが、コノミタケはもう少し弾力があった記憶があります。
コウタケは当地では最も人気のあるキノコ。茶色いラフレシアのような異様な見た目ですが、干すと独特の醤油のような香ばしい香りがあって、旨味も強いです。胃腸系の毒があることでも知られ、「ゆでこぼしたら大丈夫」とか「なすと煮たら大丈夫」という真偽さだかではない話も聞きますが、多少お腹が痛くなっても食べたいくらいおいしいキノコ、と認識されています。
当地でのキノコ採りのメインターゲットは松茸とコウタケなのですが、それぞれが取れたときの喜び方がちょっと違います。
コウタケが取れた時は「やった、今年もコウタケご飯(茹でこぼしたコウタケを干して塩漬けにした物をご飯に混ぜ込む当地の料理)が食べられる!」みたいな感じですが、松茸の場合は「やった、これで○千円位だな!」という感じです。
松茸はあまりにも高すぎるため、食べ物というよりも「金を拾った」みたいな感覚で喜ばれている気がしますね。傷んだり虫はいってて商品価値の無いものは自家用に食べられたりもしていますが。
松茸がよく取れていた時期を知るお年寄りは「昔は晩ご飯のおかずがないな、と思ったら、夕食の支度前にちょっと山に登って松茸取ってきていた」なんて話をしていました。それほどありふれていた物に大金使う気にはならないのでしょうし、それならお金に換えた方が良いな、という気分なんでしょう。
余談ですが、先日仕事場で雑談していた時に、
「テレビで松茸よりもおいしいキノコがあると言っていた」
という話を聞きました。
僕は(多分上記のどれかのことだろうな)と思いながら、
「なんていうキノコですか?」と訊ねたんですが、
「シロアリの巣に育つオオシロアリタケとかいう奴らしい。テレビのスタッフが食ってたけど、そのスタッフは『松茸食べたことないからわかりません』と言っていた」との答えを聞いてずっこけました。
それなりにキノコの知識は入れてきたつもりの自分でも初めて聞いた名前だったから調べてみたましたが、日本では沖縄以南でのみ採れる物のようです。さすがに島根では見たことありません。
同じ職場にいるラオス出身の同僚に「このキノコ知ってる?」と訊いてみたら、「ああ知ってる知ってる! 卵焼きに入れたり、スープの実にするとおいしいよ」などと教えてくれましたが、いつかこれも食べてみたいですね。