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本と育つ、本で育つ 「こどものとも」私の場合

1957年の創刊から現在に至るまで脈々と続く福音館書店の「こどものとも」には、私も息子も本当にお世話になった。まずは私、古い世代から記憶を手繰ってみたい。
私が入園した二年保育の幼稚園では、毎月園児に「こどものとも」を配布していた。これが私、そして私の実家が「こどものとも」と出会ったきっかけ。通園カバンにその日配られた「こどものとも」をしまう様子を撮影した写真が残っているが、私はどんなにわくわくしていたことだろう!
二年にわたる配本の中で私、そして私を育てた母の記憶に最も強く残るのは、なんといっても「ぐりとぐら」(なかがわりえこ、おおむらゆりこ)である。そこでこの絵本から、「こどものとも」の歴史の中で私がどのあたりを読んでいたのかを探ってみると…福音館書店創立60周年の記念に出版された「復刻版」のリストを眺めて記憶が蘇ってきた絵本たちは以下のとおり。(復刻版Bセットより)
 58.かさじぞう(日本の昔話) 瀬田貞二 案/赤羽末吉 画
 66.3びきのくま(ロシアの昔話) 瀬田貞二 訳/山田三郎 絵
 74.おおきなかぶ(ロシア民話) 内田莉莎子 訳/佐藤忠良 画
 76.かわ 加古里子 作・画
 93.ぐりとぐら なかがわりえこ 文/おおむらゆりこ 絵
 97.そらいろのたね なかがわりえこ 文/おおむらゆりこ 絵
(復刻版Cセットより)
 127.ぴかくん めをまわす 松居 直 作/長 新太 絵
 129.ぐりとぐらのおきゃくさま なかがわえりこ 文/やまわきゆりこ 絵
 131.だるまちゃんとてんぐちゃん 加古里子 作・絵
Bセットの辺りが私が通園していた頃の配本ではないかと思う。少し離れたCセットは、弟がいたこともあり後から買い足したのではないだろうか。
「子どものとも」からは少し逸れてしまうけれど、これ以外で私の記憶に鮮明な絵本を挙げてみると、やはり福音館書店が大半である。
・「三びきの やぎの がらがらどん(ノルウェーの民話)」 瀬田貞二訳 初版1965年 世界傑作絵本 福音館書店
・「かばくん」 岸田衿子 初版1966年 こどものとも絵本 福音館書店
・「おおかみと七ひきのこやぎ」 グリム/瀬田貞二訳 初版1967年 こどものとも絵本
・「せんたくかあちゃん」 さとうわきこ 福音館書店 初版1982年(こどものとも絵本)とも絵本 福音館書店
・「てぶくろ」エウゲーニー・M・ラチョフ/うちだりさこ訳 初版1965年 世界傑作絵本 福音館書店
・「はらぺこあおむし」エリック・カール 偕成社
大半というより、「はらぺこあおむし」以外すべて福音館書店!並べてみて思うのは、中川李枝子さん、山脇百合子さん、瀬田貞二さん、岸田衿子さん、加古里子さんといった、時代を超えて読み継がれる名作を生みだした絵本作家や訳者の方々が活躍を始めた頃に、自分がちょうど幼稚園時代を迎えることが出来た幸運、そして、福音館書店の存在の大きさである。福音館書店と「こどものとも」は私のその後の人生にどれだけ大きな与えた影響を与えたことだろう!本当に感謝の一言である。
私の母が今でも「(私がどんどん読んでしまうこともあって)どんな絵本を選んだら良いかわからなかったから、『こどものとも』は本当に助かった。」と言っているが、私自身の子育て経験を振り返っても、子どもに良質な絵本を与えることは親に取ってなかなか難しく悩ましい課題である。親が選ぶと、どうしても親の好みが反映され、偏ったものになりがちなのだ。それはそれで良い面もあるのだが、特に絵本に親しみはじめる入り口の頃は、様々な種類の絵本をまんべんなく与える続ける必要があるだろう。その子がどんな本が好きなのかを親が知るために。そしてなにより子ども自身がだんだんに自分の好きな絵本を知り、自ら選ぶ力をつけ、やがて絵本を卒業して本へと繋げてゆくために。その点で、児童書の専門である福音館書店が選りすぐった絵本を毎月届けるこの「こどものとも」ほど、素晴らしいものは無いと思う。福音館書店とのお付き合いは、絵本を卒業し本に入っていった後も続くのだが、それはまた筆を改めたい。
ところで、加古里子さんのことを、私はずいぶん後になるまで「かこさとこ」という女性だと思っていた。絵本を見ると作者名は漢字表記でふりがなが添えてある。ふりがなの方はどうやら読んでいなかったらしい。子どもの思い込みとは強いものである!福音館書店の他の絵本を見ると、作者名だけでなく、タイトルの数字、例えば「三びき」などは漢字表記になっている。絵本であればすべて平仮名でも良さそうだが、ところどころに漢字を使うことで子供は漢字の存在を知り、更にどんどんそれを覚えてゆくのでとても良いと思っている。

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