見出し画像

しき/町屋良平

ひとつひとつの思考、感情、感情までいたらない心の痺れのようなもの。
20代になった現在では、確実にリアルタイムでは体験できなくなったみずみずしさ、歯がゆさ。
忘れていたもの。こんなふうに綴ってほしかったもの。
まるで、シナプスが見えるかのよう。

言葉の能力はいろいろあると思っていて、語彙力とは別に、言語化する能力の重要さに、改めて気づかされる。
町屋さんは、生きるのが大変そうだなぁ。細部にここまで向き合うって、エネルギーを相当に使うと思う。でも、この世界には言語化せずにはいられない人間が存在していて、そういう星に産まれた人たちが綴った言葉が言葉として残り、誰かに読まれることで、誰かの追体験をうむのだと。
町屋さんのように素晴らしいものではないけれど、私もそのひとりだ。

あの頃(10代)って、どうしてあんなにも、苦しくて美しかったんだろう。
感情を的確にあらわすことができるようになってから、心が安定する時間が増えた。でもあの頃は、自分のなかで湧き起こる感情がいちいち新しく、困惑し、すぐに世界が狭くなっていた。心に残ったわずかな余白で、他人を思いやっていた、自分のものさしで。関係は恒久的だと思っていた。

もう、あの頃の心を、同じ熱量で思い出すことはできないと諦めていた。
けれどこの本にかえれば、私はまた心を取り戻すことができる。
言葉にしてくれてありがとう




いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集