八月の青い蝶/周防柳
極めて個人的な視点で戦争が描かれている物語。
戦争は良くないとか主語が大きい話じゃなく、その日その場にいた、ひとりひとりの人生の上に原爆が落とされた、そしてそこで途絶えた人、生き残った人。生き残っても、綺麗に生きられない複雑な事象が絡み合い、生きにくいこと。戦争は良くない風化させない、語るべきであるという正義も正しいし、何も語りたくない、掘り返すことが正義ではない、今があることの価値が重要という考えも正しい。平和という勝手のいい言葉を使うのではなく、積み重なっているあらゆる事情を言語化していく気概、ある種「何も語りたくない」に矛盾しながらも書き抜いてくれた作者さんは素晴らしい。これは本筋とは逸れるけど、語彙力やばすぎた。どうしたらこんなに巧みに言葉を使えるのですか。