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泥水飲み放題
辛いことから逃げたら、楽になると思っていた。辛いことを手放す代償に、お金も手放した。はじめはしんどかった服や旅行に対する欲望はやがて消えていった。辛いこともない代わりに、人生にどんどん起伏がなくなりもうすぐ25、アラサー。
もしかして私の人生、こんな感じでゆるい下り坂を下っていくのかな?だったらまだ崖の方がいいのだけど。
文章を書くのは小さい頃からずっと好きで、昔はもっと純粋だったのにある一点を境に文章への愛は猛烈に歪んでしまった。そのせいで、自分には才能があるかもしれない、という10代特有の全能感を引きずり過ぎてしまった。私は人と違うから人と違う生き方をしても大丈夫、そう思っていた。
正社員はメンタルの弱さと、社会に馴染むことがでないために長く続かず、パートで生計を立てている。余った時間は創作活動に充てようと思っていた。だけど結局、寝たり僻んだりはがりしていて、生活が萎めば萎むほど書くことも書きたいこともなくなっていく。
ヒルナンデスやインスタのストーリーを見てはいいな旅行したいな、とぼんやりと思うけどじりじりと減り続ける貯金、日に日に大きくなる漠然とした不安。生活のステージを変えたらこの退屈から救われるかもしれない、と邪な気持ちで子供が欲しいと思う自分が心底気持ち悪い。
まだ、抗いたい、人生を転がし続けたい、私はやれる、そう思っているけれど、毎日不安に浸っているうちにだんだんと抗う気力もなくなってきた。このままではパズルゲームとバラエティーと発泡酒で明日が過ぎ一年が過ぎ一生が過ぎ、そのことに不満すら抱かずに、死のうとすら思わずに、だらだらと時間を消費していく私になってしまう。本当にやりたいことなんてひとつもない、そう気づくのが怖い。思考停止が怖い。
上を見ても下も見てもキリがないし幸せの形はいろいろある。でもまだ抗いたいし、この絞りカスのような書けなさですらも今でしか書けないことだろうから、私は書くよ。
結局は書くんだよ、まだ。また。