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最愛は海色 第13章
海に注ぐ夕日は私とあなたの輪郭をあいまいにした。
秘密の場所なんてない。だれかの思い出が入り混じる海辺で、今だけはふたりきりだった。
すっかり水温は下がりきっているというのに、優多さんは海水に足を浸し夕日に顔を向けたまま、私に別れの言葉を言った。
覚悟をもった重みのある言葉は、夕日の届かない海底へと沈んでいくようだった。
「四月になったら上京する」
なにを言っても優多さんが揺らがないことは分かっ
最愛は海色 第12章
こんなに近くにいるのに孤独になることもあるのだと、優多さんと出会ってからはじめて知った。
十六年生きていても、はじめて知ることがたくさんあるから驚く。
優多さんが教えてくれたことが、抱えきれないほど胸の内にある。
「窓見て!」
珍しくアラームよりも先に起き、しゃんと目が覚めた。
窓から差しこむ光を眺めていると、携帯が鳴った。画面を見ると、久々に優多さんから連絡がきていた。
「雪だ」
「初雪だね」
最愛は海色 第10章
「学校、行きたくない」
八戸大橋で歌っていたときに遠くに見えた黒い雲は、夜になると分厚く空を覆った。
重たげな雨音を聴きながら、久しぶりに優多さんと電話をつなぐ。歌をからかわれたことを思い出しては、憂鬱になっていた。
「そんなに行きたくないならさ、学校さぼっちゃおうよ」
優多さんは言った。唐突な提案に、私は戸惑った。
「軽々しく言わないでよ」
「ごめん。でも、たまにはいいんじゃない? 毎日を駆け