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そのサッカーを疑え!

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#森保ジャパン

クリスマスツリー化するサッカー日本代表と悪化するボールを奪われる場所の関係

クリスマスツリー化するサッカー日本代表と悪化するボールを奪われる場所の関係

(写真:岸本勉/PICSPORT)

 就任以来6年と数か月、森保一監督は目指そうとしているサッカーを具体的に語ろうとしなかった。

「臨機応変」。「賢くしたたかに」。「よい守備からよい攻撃へ」が精一杯。抽象的な表現でその場をやり過ごしてきた。たとえば欧州なら、それは代表監督として許されない振る舞いになる。代表監督のスタンダードが浸透していない日本だからこそ許される、ぬるま湯体質を象徴する事象にな

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自らの5バックを「賢くしたたかな戦い」と自画自賛する森保日本代表監督の楽観主義を心配する

自らの5バックを「賢くしたたかな戦い」と自画自賛する森保日本代表監督の楽観主義を心配する

(写真:岸本勉/PICSPORT)

 2026年W杯アジア3次予選でサウジアラビアに勝利し、サウジアラビアに引き分け、勝ち点を快調に伸ばしている日本。同C組の「死の組」という下馬評は何処へやら。予選突破は最終戦を待たず、早い段階で決まりそうである。

 日本が強いというより対戦相手に手応えを感じない。そちらの方を心配したくなるほどだが、5バック(3バック)サッカーに傾倒する森保サッカーを、超攻撃

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「賢くしたたかに」(森保監督)の落とし穴。5バックから4バックには戻せない

「賢くしたたかに」(森保監督)の落とし穴。5バックから4バックには戻せない

 時に5バックで後ろを固める采配を「臨機応変で賢くしたたかな戦い方」と自賛する森保監督。普段、言質を取られたくないのか、サッカーの中身について詳細に語ろうとしないが、この件については大胆にも言い切っている。確信に満ちた口調で自信満々に語る。反論を浴びることを覚悟の上だとすれば、いい度胸しているという話になるが、実際はそうではないように見える。

「賢い」の対義語を辞書で引けば「愚か」だ。筆者は非森

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想定外の不振に苦しむ日本代表。ポスト森保。探す人もいなければ、新監督候補もいない?

想定外の不振に苦しむ日本代表。ポスト森保。探す人もいなければ、新監督候補もいない?

 日本がアジアカップのグループリーグで敗れたのは、初めて本大会に出場した1988年以来、36年ぶりの出来事だ。1-2でイラクに敗れた第2戦はまさしく事件に相当した。

 4-2で勝利した1戦目のベトナム戦、3-1で勝利した3戦目のインドネシア戦ともに相手の健闘を讃える必要はあるが、日本のデキは3戦連続して低調だった。重要なのはバランスで「アジアは甘くない」と言って、苦戦を外的要因に求めすぎるのはよ

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森保Jより問題なのはJリーグのレベルダウン。日本サッカーは空洞化を起こしている

森保Jより問題なのはJリーグのレベルダウン。日本サッカーは空洞化を起こしている

 Jリーグは7節を終了した段階でヴィッセル神戸が首位の座に就いている。昨季は最終順位こそ13位だったが、一時は降格圏内である17位まで順位を下げていた。そこから大きくジャンプアップした状態にある。

 対照的な姿を描いているのが昨季の準優勝チーム、川崎フロンターレだ。2017年以降の6シーズンで4度優勝を飾った圧倒的強者ながら、現在の順位は13位。これもまた珍しい話である。海外のリーグではまず起き

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コロンビア戦の終盤。中盤をダイヤモンド型に移行した森保采配に抱く根本的な疑問

コロンビア戦の終盤。中盤をダイヤモンド型に移行した森保采配に抱く根本的な疑問

 洗練されたサッカーとは言い難い粗野な戦いぶりを披露しながら敗れたコロンビア戦。後半16分、ラファエル・サントス・ボレのバイシクルシュートで1-2と逆転されると、森保一監督は後半33分、守田英正に代え浅野拓磨を投入した。同時に布陣を4-2-3-1から中盤ダイヤモンド型の4-4-2に変化させる戦術的交代である。

 森保監督は変更のあらましを書いたメモをピッチに入る浅野を通じ、ゲームキャプテンの遠藤

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サイドバックにMF的な役割を課すサッカーがウルグアイ戦で不発に終わった理由

サイドバックにMF的な役割を課すサッカーがウルグアイ戦で不発に終わった理由

「サイドバックをいかに有効活用するか。第2期森保ジャパンの重要なテーマ」であるとは、3月15日発行のブログマガジンのタイトルだが、24日のウルグアイ戦では日本のベンチもそれに呼応するかのように、両SB(左・伊藤洋輝、右・菅原由勢)に従来とは異なる中盤的な役割を課していた。

 ジョゼップ・グアルディオラがバイエルン監督の時代に、右SBフィリップ・ラームをマイボールに転じるや大外ではなく、守備的MF

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日本代表メンバー発表会見で改めて露呈した森保監督の隠しきれない本質

日本代表メンバー発表会見で改めて露呈した森保監督の隠しきれない本質

 森保監督に限らず日本人監督の多くは哲学を語ろうとしない。哲学を持ち合わせていないのか。語りたくないだけなのか。サッカー監督に必要な要素だとの認識がないのか。理由は定かではないが、この点こそが外国人監督との1番の違いであると、これまで何度か述べてきた。

 言い換えるならば、それは色だ。他の監督と自分自身は大きく何が違うかという話である。それさえも曖昧にしたがる。「臨機応変」とは2018年7月、日

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日本の3バックはなぜ森保式が大半を占めるのか

日本の3バックはなぜ森保式が大半を占めるのか

 カタールW杯。その多くの時間を5バックと言いたくなる3バックで戦った森保ジャパン。その影響力はどれほどかと開幕したJリーグに目を凝らした。2節続けて5バックになりやすい3バックを採用したチームは18チーム中6チーム(広島、名古屋、鳥栖、札幌、福岡、湘南)。1試合の京都を加えれば計7チームで、全体の3分の1強を占めた。前シーズンは柏、降格した磐田もこの中に含まれていた。2分の1に迫る勢いがあった。

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甲府、森保、三浦カズ、権田……意見が分かれるテーマを探せ

甲府、森保、三浦カズ、権田……意見が分かれるテーマを探せ

 J1リーグの覇者(横浜F・マリノス)と天皇杯の覇者(ヴァンフォーレ甲府)が対戦した富士フイルムスーパー杯。天皇杯の覇者として昨季のJ2で18位だったチーム(甲府)がこの舞台に立つことは、今回で30回を数える歴史の中でも初めてで、ちょっとした事件に相当する。

 そもそも甲府が天皇杯を制したことが事件なのだが、準々決勝(対アビスパ福岡)、準決勝(対鹿島アントラーズ)、決勝(対サンフレッチェ広島)と

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ブライトン三笘薫と“相棒”エストゥピニャンに見るウイングとSBの理想的な関係

ブライトン三笘薫と“相棒”エストゥピニャンに見るウイングとSBの理想的な関係

 エクアドル代表の左SBペルビス・エストゥピニャンが左からフワリと送った山なりのボールを、ハーフバウンドで浮かすようにトラップした三笘薫は、次のタッチでリフティング。そして3タッチ目でリバプールゴールを揺るがした。

 FAカップ4回戦、ブライトン対リバプール。後半47分に三笘が決めたこの逆転弾を見て想起したのは、2018年のアジアチャンピオンズリーグ準決勝第2戦、水原三星対鹿島アントラーズ戦で、

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三笘のスーパーゴールとデルピエーロゾーンが生まれた背景。布陣が選手を作る

三笘のスーパーゴールとデルピエーロゾーンが生まれた背景。布陣が選手を作る

 レスター戦の前半27分。左のタッチライン際に開いた三笘薫は、ピッチの中央でパスワークに絡んだ左SB(サイドバック)ペルビス・エストゥピニャン(エクアドル代表)からパスを受けた。と同時に、相手の右SBティモシー・カスターニュ(ベルギー代表)と対峙することになった。

 この2人はその5分前にも1対1を演じていた。三笘が内に切れ込むと見せかけて縦方向に切り返すと、ベルギー代表の右SBはたまらず置いて

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W杯に臨む森保Jが、中継ぎを惜しげもなくつぎ込む日本シリーズから学ぶこと

W杯に臨む森保Jが、中継ぎを惜しげもなくつぎ込む日本シリーズから学ぶこと

 前回のロシアW杯で、グループリーグの3試合と決勝トーナメント1回戦の計4試合を戦った日本。初戦のコロンビア戦と2戦目のセネガル戦の間隔だけが中4日で、残る2試合は中3日での戦いだった。それが今回のカタールW杯では、少なくともグループリーグの3試合はすべて中3日で行われる。

 西野監督はその1戦目と2戦目を同じスタメンで戦い、3戦目(ポーランド戦)はスタメンを大改造して臨むことになった。1戦目と

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苦戦のメカニズムとは。最近の2大番狂わせ、横浜FM対磐田、広島対甲府から森保Jが学ぶこと

苦戦のメカニズムとは。最近の2大番狂わせ、横浜FM対磐田、広島対甲府から森保Jが学ぶこと

 サンフレッチェ広島がヴァンフォーレ甲府に延長PKで敗れた天皇杯決勝。そして、首位を行く横浜F・マリノスが最下位のジュビロ磐田に0-1で敗れたJリーグ32節の一戦と、ここ最近、国内では大きな番狂わせが相次いで発生した。

 サッカーは結果に運が3割影響を及ぼすと言われるが、広島と横浜FMは運に恵まれなかったと言うより、攻めあぐんだ印象が勝る。惜しいチャンスはそれなりにあったが、いわゆる決定的なチャ

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