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#日本代表

CLリーグフェーズ最終週を前に遠藤以上に心配になる日本代表の中心選手

CLリーグフェーズ最終週を前に遠藤以上に心配になる日本代表の中心選手

(写真:岸本勉/PICSPORT)

 北中米W杯本大会まで500日。1年半弱に迫ったわけだが、もしW杯が1年早く行われるなら、日本代表はよい成績が残せないのではないかと考える。その9割を占める欧州組でいま現在、調子がよさそうな選手が少ないからだ。

 今季開始前、欧州のトップ10クラブに所属する選手が3人に増えたことを喜んだ。遠藤航(リバプール)、冨安健洋(アーセナル)に加え、伊藤洋輝がバイエル

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CLリーグフェーズで苦戦するマンC、レアルマドリードから森保Jが学びたいサッカー的思考法

CLリーグフェーズで苦戦するマンC、レアルマドリードから森保Jが学びたいサッカー的思考法

チャンピオンズリーグ(CL)リーグフェーズ第7週、一昨季の覇者マンチェスター・シティはパリ・サンジェルマンに敗れ、プレーオフ進出(24位以内)を確定できなかった。最終週を前にした現在の順位は25位。ひとつでも順位を上げないと敗退が決まる。

 最終戦の相手はクラブ・ブリュージュ。ホーム戦でもあるので、番狂わせを食う可能性は低そうである。しかし、2-0とリードしながら4連続ゴールを許し、2-4で大逆

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優れた選手が優れた監督を大きく上回る日本サッカー界は監督受難の時代に突入。上下関係の概念が破綻する

優れた選手が優れた監督を大きく上回る日本サッカー界は監督受難の時代に突入。上下関係の概念が破綻する

(写真:岸本勉/PICSPORT)

 選手と監督の関係は競技によって異なる。サッカー選手にとってよい監督とは、自分を使ってくれる監督だ。サッカーは選手個人の優劣を示すデータが少ないスポーツ。選手の出場が叶うか否かは監督との相性がカギになる。ユルゲン・クロップには重宝がられたが、アルネ・スロットに監督が代わるやベンチを温める時間が急増したリバプールの遠藤航を見るまでもない。

 出場時間に恵まれな

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自らの素性を明らかにしない守備的サッカー監督との対峙法を誤り「超攻撃的3バック」に翻弄された日本

自らの素性を明らかにしない守備的サッカー監督との対峙法を誤り「超攻撃的3バック」に翻弄された日本

写真:Shigeki SUGIYAMA

 今年1年、取材活動を通して最も違和感を覚えた台詞は何かと言えば「攻撃的3バック」になる。ウイングバックにサイドバック系の選手ではなく、三笘薫、堂安律ら4バックでウイングとしてプレーした選手を据える3バックを、多くのメディアは攻撃的3バックと称した。ご丁寧に超まで付けて超攻撃的3バックとする見出しや原稿も目に止まった。

 攻撃的サッカーと守備的サッカー。

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ブライトン監督が披露した左右非対称な3-4-2-1。三笘はこの3バックの方が断然活きる

ブライトン監督が披露した左右非対称な3-4-2-1。三笘はこの3バックの方が断然活きる

 12月5日(現地時間)に行われた三笘薫所属のブライトン対フラム戦。開幕から4-2-3-1あるいは4-4-2で通してきたブライトンのファビアン・ハーツラー監督だったが、このフラム戦では初めて試合の頭から3-4-3を採用した。

 昨季まで監督を務めたザンクトパウリ(ブンデスリーガ2部)時代は、3-4-3をメインに戦っていたので本来の姿に戻ったと言うべきか。これを機に原点回帰するのか。次戦のレスター

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ボールはどこで奪われるのがベストなのか。いまだ高さしかデータ化されていない日本サッカーの後進性

ボールはどこで奪われるのがベストなのか。いまだ高さしかデータ化されていない日本サッカーの後進性

 攻撃的サッカーと守備的サッカー。それぞれの見分け方にはいろいろあるが、筆者が一番だと考えるのは攻守が入れ替わるポイントだ。ボールを奪うポイントであり、奪われるポイントだ。好守が高い位置で入れ替わるほど攻撃的。低ければ守備的となる。

 だが、それには相手との戦力差が関係する。互角だとすればとの前提に基づく。対中国、対バーレーンがいい例だ。戦力差が大きいと傾向は見えにくい。守備的サッカーをしても相

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三笘、堂安を両ウイングに据えた森保式3-4-2-1を超攻撃的サッカーと評す大間違い

三笘、堂安を両ウイングに据えた森保式3-4-2-1を超攻撃的サッカーと評す大間違い

 先の中国戦、バーレーン戦に三笘薫、堂安律を両ウイングバックに据えた3-4-2-1で臨んだ森保ジャパン。7-0、5-0の大差勝ちだったことも手伝い、そのサッカーを超攻撃的布陣だと評すメディア報道が目に付いた。4-3-3あるいは4-2-3-1で臨む場合、三笘、堂安は左右のウイングを張る。それぞれの所属クラブであるブライトン、フライブルクでも同様だ。彼らは言ってみればFW。アタッカーである。

 一方

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日本に問われる、華々しく巨大化したCLと日本代表との向き合い方。選手はアジア予選では上達しない

日本に問われる、華々しく巨大化したCLと日本代表との向き合い方。選手はアジア予選では上達しない

 チャンピオンズリーグ(CL)に出場できるか否か。日本代表クラスの選手にとって、このことはますます大きな問題になってきた。

 8月29日。中国戦(9月5日)、バーレーン戦(9月10日)に臨む日本代表メンバー発表会見が行われたその夜、日本時間で日付が変わった未明、CL2024-25シーズンのリーグフェーズ抽選会が行われた。

 ご承知のようにCLは今季から大会方式が大改革された。一言でいえばさらに

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W杯予選。死の組、アジアのレベルアップを口実に?引いて構える5バックを森保監督はどれほど採用するか

W杯予選。死の組、アジアのレベルアップを口実に?引いて構える5バックを森保監督はどれほど採用するか

 9月5日の中国戦を皮切りにスタートする2024年W杯アジア最終予選。抽選の結果を受け、メディアは一斉に日本が所属するC組を“死の組”だと報じた。3グループ(A、B、C)の中で最も厳しそうなグループであることは確かで、たとえば韓国が戦うB組と比較すれば一目瞭然だ。無風区。韓国は張り合いがないくらい緩い組に振り分けられた。

 しかし今回のアジア枠は8.5だ。各組で3位、4位になった計6チームにも、

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パリオリンピック。スペイン優勝でいっそう露わになった日本サッカーの方向性なき強化策

パリオリンピック。スペイン優勝でいっそう露わになった日本サッカーの方向性なき強化策

 0-3の敗戦といってもいろいろある。0-2に近いものもあれば0-4に近いものもある。0-1に近いものもあれば0-5に近いものもある。サッカーの結果、スコアには幅がある。内容とスコアを照らし合わせながら実際の差はどれほどなのか、探る必要がある。

 結果がすべてという価値観に支配されるスポーツの世界において、サッカーは異端に属する。だが得点が最も入りにくいという競技の特性を忘れ、つい他の競技と同じ

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「賢くしたたかに」(森保監督)の落とし穴。5バックから4バックには戻せない

「賢くしたたかに」(森保監督)の落とし穴。5バックから4バックには戻せない

 時に5バックで後ろを固める采配を「臨機応変で賢くしたたかな戦い方」と自賛する森保監督。普段、言質を取られたくないのか、サッカーの中身について詳細に語ろうとしないが、この件については大胆にも言い切っている。確信に満ちた口調で自信満々に語る。反論を浴びることを覚悟の上だとすれば、いい度胸しているという話になるが、実際はそうではないように見える。

「賢い」の対義語を辞書で引けば「愚か」だ。筆者は非森

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いつ退任しても不思議ではない鬼木監督。狭き門を戦う大岩監督。サッカーは監督で決まる

いつ退任しても不思議ではない鬼木監督。狭き門を戦う大岩監督。サッカーは監督で決まる

「日本人監督の中では実績ナンバーワン」とは、2018年ロシアW杯後、田嶋幸三前会長が森保一を代表監督に招聘した理由について述べた台詞だ。

 2012年優勝、2013年優勝、2014年8位、2015年優勝、2016年6位。2017年は一転、シーズン中盤まで采配を振るも降格圏を脱せず、そこで解任の憂き目に遭う。これが、森保監督のサンフレッチ広島時代の成績だ。田嶋前会長はこの5シーズン半の実績を高く評

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久保建英。トップ下より右ウイングの方が「ファンタジスタ」に見えるという現実

久保建英。トップ下より右ウイングの方が「ファンタジスタ」に見えるという現実

 チャンピオンズリーグ(CL)、ヨーロッパリーグ(EL)を軸とする欧州サッカーを眺めていると、ウイングの時代を迎えていることを実感する。サイドアタッカーがウイングバックのみの、5バックになりやすい3バックが占める割合は全体の3割弱。サイドアタッカーを両サイドに各2人、置いて戦うチームは7割強を占める。その中で目に止まるのは、サイドバック(SB)ではないサイドアタッカーが、サイドハーフと言うよりウイ

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森保、池田、鬼木……日本人指導者が取り憑かれる5バックなら守り切れるという幻想

森保、池田、鬼木……日本人指導者が取り憑かれる5バックなら守り切れるという幻想

「前からプレスを掛けに行けば後ろにスペースは生まれるわけですから……」。「理に適った現実的な作戦だと思います」と、テレビ解説者は、5バックで守りを固める戦法を否定するどころかむしろ肯定する。森保一監督の表現を借りれば「臨機応変」、「賢く、したたかな戦い方」となるが、日本人の指導者の間ではどうやらこの森保的な思考法がスタンダードとして浸透しているようである。

 たとえば、つい2〜3シーズン前まで1

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