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あああああ


5才の夜 公園で 流れ星をみた


咄嗟に口からでた願い事


「わたしを自由にしてください」


10年後のある日


願いは唐突な形で叶った


聞きたくない話がぜんぶ


「あ」だけで聞こえるようになった


あああああ あああああ

あああああ あああああ


母の小言も 彼の高慢も


聞きたくないことは何もかも


あああああ あああああ

あーあああ


あ、あああ?

あああ。あ?


あーあ

あーああーああーあ


なんだろうこのスーパーパワー


こんなのが欲しかったの


もうこれで何にも惑わされないわ


雑音がほんものの雑音になったの


街を歩くと前方後方から

「あ」のスコール


たまに「あ」に混じって聞こえてくる

他愛もないセリフ


それってどうゆう意味?

とか

そんなこと


かつて母は


清楚にしていたほうがいろいろ得よと語った


きもちわるくなって十二回吐いた


独りで生きられるほど精巧に造られていないわたしは


けっきょく母の好きそうな学校に通い


彼の好きそうな無地のスカートを履いた


誇らしげにわたしの人生を見つめる母と彼に


嫌気がさして


家をとびだし


ライトも付けずにペダルを漕いだ


勘違いしないで


母に従ったのも 彼に媚びたのも

ぜんぶぜんぶ わたしの意志


わたしがわたしを生きるために

捨てることを選んだの


わたしがわたしを生きるために

自らの意志で堕ちたのよ


わたしをコントロールしていたなんて

うぬぼれないで


母の言葉も 彼の言葉も

ただの「あ」になった今ここから

なにを選ぼう


どう思われたっていい

どう言われたっていい


愛することぐらい

自分で決められるから


家の灯りの指すほうへ

安全なほうへ

ユーターンした



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