【教育×冷めてて熱い=おもろい】 世の中を俯瞰しながら体当たり。究極まで探究する人~株式会社いま-みらい塾 歌崎雅弘さん~
「本音と建前」あなたはどちらで毎日を生きていますか?
社会生活を円滑に進めるために「建前」は必要なスキルです。しかしいつの間にか「本音」を言わないことが当たり前になっていて、自分が本当は何を思っているかも分からなくなってしまう……。そんなことはありませんか?
今回ご紹介する歌崎雅弘さんは、世の中の基準に合わせて判断するのではなく、自分の心で判断したことを本音とし、行動している人。
そのような生き方、考え方の根本になったのはどんな経験だったのでしょうか?
歌崎さんの「過去-いま-みらい」について、早速インタビュースタートです!
歌崎雅弘 (うたざき まさひろ)
株式会社いま-みらい塾 代表取締役社長
株式会社STORY MAKER 代表取締役 ヘッドコーチ
学校法人電子学園情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
1979年兵庫県生まれ。京都大学農学部卒業。
高校・大学時代はアメリカンフットボールに情熱を捧げる。
2015年、自立を促して3ヶ月で卒業させる「いま-みらい塾」を起業。しかし卒業させすぎて一時ホームレス状態になるなど壮絶な経験を経て、現在は早押しクイズ学習アプリ「はやべん」のリリースや「塾がない世界」を目指す学び方のオンラインスクール「STORY MAKER」を運営。
「マリオメーカー2」で元世界ランキング3位の実績をもつゲーマーでもある。
「なんで」が渦巻く子ども時代
神戸の中心地、三宮から歩いて10分圏内にある「いま-みらい塾」。
今はオンラインで塾をされていますが、リアルで生徒が通われていたときは「世界一せまい塾」と言っていたと教室を紹介してくれました。おっしゃる通り、大人が3人入るとパンパンになるほど室内はせまい!
しかし、そこは歌崎さんの「人柄」が詰まったとても居心地の良い空間でした。
まずは、幼少期から。
物心ついたときの記憶として残っているエピソードを伺いました。
「なんで喋らんとあかんねん」喋る理由が分からなくて、1ヶ月ほど様子をみていた
「いちご落ちてた」と言って、近所のいちご畑のいちごを全部食べてしまった
……なかなか個性的なお子さんだったようです。
そしてその個性は、小学校でも遺憾なく発揮されます。
「なんで大人の言うこと聞かんとあかんねん」
「なんで挨拶せなあかんねん」
「クラスメートはなんで真面目に授業中ノート書いてんねん」
「なんでリレーはバトンもらったら走らなあかんねん」
「習字教室で、なんで半紙に字を書かなあかんねん」
授業中は教室内をうろうろ、クラスメートのノートに落書きをしてみたり、リレーは走らなかったり、習字教室では絨毯の上に書いてみたり……。
常にあらゆることに疑問をいだいていた子ども時代。
自由に、自分の思いのままに行動することで気づいたことがあると歌崎さんは話します。
心のままに行動することで、「これは良い・悪い」を身を持って体感したそう。
そして中学校へ。
友達が中学受験をすると言ったのをきっかけに、歌崎さんも受験を決意。合格し、中高一貫校へと進学します。実は歌崎さんのお父さんも同校出身。しかし山の上にある学校だったので、毎日の山登りが大変という理由でお父さんは辞められたそう。
中学生時代、自我の芽生えでしょうか。小学生時代より深い自問自答の日々が始まります。
考えて、考えて、考え抜いたからこそたどり着いた答えは、どこまでいっても確実な答えはないということ。
それなら、「全部全力で生きて楽しもう」と決意した歌崎さんは、高校生になったタイミングで、完全にキャラ変を果たします。
心機一転、全力青年に
実は中学高校と、アメリカンフットボール部に所属されていた歌崎さん。中学生のときはやる気が無くてさぼってばかりだったそうですが、高校に入ってからは本気で取り組み始めます。そして高校3年生の夏、当時28連覇中だったチームを倒して、県大会優勝!この経験がその後の進路に大きく関わることに。
進路相談のとき、担任の先生にはこの時期に今の偏差値で受かった生徒は誰もいないから志望校を変えるように言われますが……
ここでも強い意志を発揮し、受験勉強をスタートさせます。
実はこのときの勉強方法が、現在の「いま-みらい塾」の根本になっているんです。
このときの方法がのちに「さとりノート」といわれる、起業後に歌崎さんが子どもたちに伝えていくメソッドとして確立します。
現役のときはセンター試験に間に合わず、10点差で不合格。しかし翌年、理科満点という好成績で念願の京都大学に合格します。
そしてレジェンド監督の元で、アメフトに打ち込んだ大学時代。
腕立て伏せ1,000回、猛ダッシュ10分間、大文字山を10周!など、過酷な肉体的トレーニングと、「勝ちたい」と思う精神的な強さを積み重ねる日々だったそうです。
ホームレスになって理解した、監督の言葉
大学を卒業して企業勤めを11年間された後に「いま-みらい塾」を立ち上げた歌崎さんは、
起業されて2年後に家がなくなった時期がありました。
その後、やることは変わらなかったけれど、歌崎さんのマインドが変わります。
ホームレスになって「自分はだめだ」と自己否定を繰り返す毎日のなかで、大学時代の監督の言葉「自己否定を100%やりきった後にしか真の自己肯定はない」の意味がやっと分かったのがこのとき。
それは「自分はどうしようもない人間だっていうのを腹の底から思えたら、自分がどう思われてるかとか関係なくなる。100%自己実現のためだけに動けるようになる」ということだったそうです。
この経験があったからこそ、本当の自己肯定ができたと言う歌崎さん。
実現したい未来の理想に向かってアクションを起こすことの重要性を、歌崎さんの言葉で心の底から伝えられるようになり、塾の運営が好転していきます。
学びの「本質」、学びの「あり方」
歌崎さんには、ホームレスになり、極限まで自己否定を続けながらも模索してきた塾の運営方針があります。
歌崎さんが大切にされているのは「自伸」です。
生徒さんや保護者の方に配布している塾のパンフレットを見せていただきました。
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自分で伸びる力をつける「自伸学習法」とは、
学習プロセスを高速で回し、学習スピードを格段に上げる学習法です。
学習プロセスを高速で回すために必要な【4つの心構え】
心構え一、理由を思考
心構え二、自由に実験
心構え三、失敗を改善
心構え四、時間を意識
(引用元:いま-みらい塾「学習極意書」より)
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歌崎さんの運営する塾が通常の学習塾と明らかに異なるのは、勉強の内容を教えるわけではなく、「学び方を学ぶ塾」と掲げられているところ。
生徒たちが自分で問題を「発見」し、「解決」して「やりきる」力をつけることで、自分で「伸びていく」=「自伸」がつくように導かれています。
そのためには「実践すること」が大切です。実践する生徒はすぐに効果がでますが、中には実践しない生徒も。その子たちに必要なのは、「心の問題」「あり方の問題」だと実感し「行動変革の重要性」を伝えているそうです。
行動変革の重要性に加えて、歌崎さんがもう1つ意識していることがあります。
それは「言語化」すること。生徒たちや保護者の方、そしてスタッフが理解しやすいようにするためです。
例えばよく出るワード「応用力」について、説明してくださいました。
そして三平方の定理とは?方べきの定理とは?円とはどんな図形ですか?と私たちに質問します。私たちの検討違いな答えに対しても、とても寛容です。
この口からでまかせの「デタラメ語」、塾で伝えている心構え、結果が分からなくても『自由に実験』するために、日常生活でも使っているそうです。
あとこんなこともやったことがあって、とおもむろに見せてくださったのは、鬼のコスプレ写真!赤鬼、青鬼、黄鬼、カラフルな鬼が勢ぞろいです!
全力でふざける熱い想いを語る歌崎さん。
人目を気にせず、自分の心のままに進む姿はすごく羨ましく、歌崎さん扮する黄鬼が恰好良く輝いて見えました。
さて「オペッタヤン」という言葉、フィンランド語の教える人「オペッタヤ」と関西弁の「〇〇やん」を合体した造語ということで、初めて聞いた言葉ながらもデタラメ語とも相通じるところがあると、興味を示してくださった歌崎さん。
では、どんな人がオペッタヤンだと思うかをお聞きしました。
ご自身が理想とするオペッタヤン像を、歌崎さんはまさに体現されています。
これまでの人生経験を経て、心の底から自己肯定をされているのが、びんびん伝わってきました。
学びの「当たり前」を変えたい
今後の展望、歌崎さんの「みらい」について伺いました。
ひとりひとりに個性がある。
その多様性を認め、自分に正直に、もがきながら前に進もうとする子どもたちへの支援をこれからやっていきたいと強く語ってくださいました。
そして、2022年11月9日に早押しクイズ学習アプリ「はやべん」をリニューアルされました。
子どもたちが大好きなゲーム。時間を忘れて没頭するお子さんも多いのではないでしょうか。「はやべん」では、学習の中にゲームの要素を取り入れて、ゲーム感覚で夢中になって取り組める仕掛け作りをされています。
子どもたちへの支援をしたいのは、きれいごとではないと言い切る歌崎さん。
「僕の本音は、子どものためではなく、自分のためですから」と笑って答えられたところに、あくまでも「自分の心で判断し、行動する」という強い姿勢を感じました。
さて、歌崎さんの「過去-いま-みらい」。
常に「なんで?」「どうしよう?」と心の底から湧いた疑問に素直に耳を傾け向き合う姿勢と、「やってみる」「できる」を基本にして、俯瞰しながら体当たりして、心のままに進まれているのがとても印象的でした。
社会人として「大人」として過ごす中で、建前多めで、人の目を気にしながら生きている毎日。それを少しでも解放し、自分らしく楽しもう!そう勇気づけられた出会いになりました。
気づかないうちにインタビュー中に埋め込まれた種から、私にも少し芽が出始めたのかもしれません。
Interview & Edit by Mami Fujihara