大宮見取図#3 子どもの成長にずっと寄り添えるおもちゃを。
●Toy-Toy
大木 麻記子(おおき まきこ)さん
宝石箱の中? お菓子の家? いえいえ、おもちゃ屋さんです。
子どもだけでなくその親から年配の方まで。大宮の老若男女の心をトキメかせ続けるこのお店は、玩具店「Toy-Toy」さん。
たかがおもちゃと侮るなかれ。そこに並ぶすべてのおもちゃには、子どもの健やかな成長を願う店主の想いが、これでもかと詰め込まれていました!
今ドキ珍しい?「さわれる」おもちゃ屋さん。
ヨーロッパからの輸入を中心に、品質と安全基準の高い木製玩具を数多く取り揃えているToy-Toyさん。乳児向けのものから、大人まで一緒に遊べるテーブルゲームなど、1000種類以上のおもちゃが所狭しと並べられています。
たくさんのおもちゃが箱に収まることなくむき出しで置かれており、お店に入った瞬間からその世界観に引き込まれます。
今回お話を聞いたのは、店主の大木さん。
2023年で11年目になるというToy-Toyさんでは、これまで一貫して「手にふれられる」ことを大切にしてきました。それは、開業のきっかけのひとつでもあると大木さんは話します。
大木さん「私自身、大宮で子どものためにおもちゃを買おうと思ったときに、実際にさわって確かめてから買えるおもちゃ屋さんがないと気づいて。デパートでは必ず箱やショーケースの中に入っているし、わざわざさわらせてもらうのは申し訳ないですよね。当時から幼児期の遊びはとても大切だと思っていたので、おもちゃもそれなりにこだわりたかったんです。それで『ないならつくってしまおう』と、少し経ってからここをオープンしました」
仕入れるおもちゃには「本質」を求めており、これも開業当時から続くことなのだとか。
大木さん「おもちゃは、楽しく遊べるもの、子どもの心を満たすものであることが一番大切です。その前提がありながら、子どもの成長のお役に立てるのか、心に寄り添うことができるのか、作り手の意図がきちんと見えるか、商業主義の要素が強くないか、作る過程で余計な環境負荷を与えていないかなど、そのすべてをクリアするものが本質的なおもちゃだと考えています。遊びのなかで子どもは育ちますから、そこでより多くの本質にふれさせてあげることも大切なことだと思っています」
人間の根っこを育てることが一番大事。おもちゃはそのサポート。
大木さんは、おもちゃの存在を教育と強く結びつけて考えています。
現在も自身で勉強して、いろいろな知識を吸収しながら、お店のおもちゃ選びに生かしているそうです。
大木さん「例えば、大人は白木の積み木、子どもは色つき積み木を好むんです。特に小さい頃は視力の関係もあって、色付きの方が輪郭を捉えることができるので、楽しさが広がります。幼少期はたくさんの色にふれることが大切なので、お店にはカラフルなおもちゃを多く取り揃えています。乳児期の成長で大切な、目で追う『追視』のことを考えたおもちゃも多いですね」
おもちゃ選びには、とある教育法の考え方も参考にしているとのことです。
大木さん「子どもの自立を促がすモンテッソーリ教育の考え方はとても参考にしています。基本的には、子ども自身が、自分で考え、自分が責任をもってそれを実行するという考え方です。私が考えるそもそもの教育的な観点で言えば、幼少期は人間の根っこを育てることが一番大事であって、おもちゃはそのサポート役なんです。なので、発達段階に合ったおもちゃが提供できるように、子どもにより健やかな成長を与えられるようにと、常に考えています」
将棋界で目覚ましい活躍を続けている藤井聡太七冠も受けていたと話題のモンテッソーリ教育。
きちんとした教育理論でおもちゃが選ばれているとなると、子育て中の親にとってはなんとも心強いおもちゃ屋さんですね!
大宮で開業したのは、宮っ子だから。
次に、こんなに素敵なおもちゃ屋さんができるまでの経緯を簡単にお話しいただきました。
大木さん「もともとはケミカル会社の研究補助をしていて、30歳を過ぎたあたりで何か自分でやってみたいと思うようになりました。いろいろと考えましたが、子どもが生まれてからは子どものためになるものがいいと感じていたので、自分のなかでは自然な流れで『おもちゃ屋さん』にたどり着きました」
自分の生まれ育った街、大宮で開業したのにはどんな理由があったのでしょうか。
大木さん「地元ということと、最初にお話ししたように、大宮に自分が納得できるおもちゃ屋さんがなかったからですね。それになんとなく、大宮の人はたとえ都内とかに出て行っても、地元に帰ってくる人が多いように感じます。『宮っ子(大宮を愛する地元民の略:大木さんの造語)』だからですかね。『宮っ子』って他に誰も言ってないですけど(笑)。私はただ純粋に大宮が好きなんだと思います」
親子三世代から愛されるお店に。
大木さんのおもちゃにかける熱意は本物で、おもちゃを購入した方に、なんと自作の「研究シート」なるものをお渡ししているのだとか。
大木さん「自分なりにそのおもちゃを研究して作成した、おもちゃの持つ意味合いや遊び方を記したシートです。おもちゃは奥が深くて、遊び方ひとつとってもいろんな意味合いがあり、それが子どもの成長にもつながっていることを親御さんに伝えたいと思いまして。それに、おもちゃは何度も繰り返して遊んでほしいと思っています。今はおもちゃをレンタルできるサービスもありますが、できれば、返すことを気にせずに遊び続けられる環境を用意してあげてほしいですね」
これからどんなおもちゃ屋さんをめざすのか。
紋切り型ながら、きっと素敵なお話が聞けるに違いないと思い、これを最後の質問とさせていただきました。
大木さん「おもちゃを通して、お子さんの成長について、いつもお話ししています。近所のおせっかいおばちゃんってところでしょうか(笑)。これからもこのスタイルは続けたいと思っています。あと、つくづくおもちゃって、一生ものだと思うんです。子どもの頃に夢中で遊んだおもちゃってけっこう覚えていて、自分の子どもが生まれたときに『この子にも』って買いに来るんです。そんな感じで、将来的には親子三世代で来てくれるお客さんがたくさんいてくれたら嬉しいですね」
おもちゃを購入したお客さんには、研究シートとは別に「寄り添えられることを願っています」と書いた手紙も渡しているのだとか。
子どものことをここまで真剣に考えてくれるおもちゃ屋さんは、大宮どころか全国的に見ても少ないのではないでしょうか。
特に子育て世代には見逃せない、一度と言わず、何度も訪れる価値のあるおもちゃ屋さんです!