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今日も今日とて、運貯金。〜落ちてたから拾った運〜

「大丈夫よ、このこ、絶対人をかまないから」

そう言われましても…わたしの場合は、大体かまれる。

「あらやだごめんなさい。手から何か美味しい匂いでもしてる?おほほほほ」って、そうかわたし手のせいか。


道端にいた猫に、「ねこちゃん❤️」と話しかけただけで腕を引っ掻かれたこともある。

ただその日は、ちょうど病院に行く途中で、いつもの先生に何気なく世間話の延長で
「さっきそこで猫に引っ掻かれまして…」と腕を見せたら、念のためと言って破傷風のワクチンを打ってもらうことになったこともある。

逆に当たりを引いてしまうわたしは全てにおいて、少し離れたところから見ているのがちょうどいい。
関わってはいけない、見て見ぬふりが1番だった。


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わたしが住んでいる家の入り口には、ちょっとした花壇のような場所がある。
しかしそれは、のような場所、であって花が咲いているわけではない。

季節によってハルジオンやドクダミや、ナガミヒナゲシなど…つまり生命力の強い雑草ばかりがよく育つ場所。いい場所なのにもったいない。

きちんと手入れされた花壇にかわいいお花でも咲いていたら状況は違っていたのかと思うことがある。

なぜならこの人の家の敷地内に不法にごみを捨てて行く人がいる。例え賃貸だとしてもここはわたしたち住民の家だ。

どんな人がどんな顔して捨てて行くのだろうと、常々思っていたらなんと

その場所に腰掛け、カップ麺をすすっている人を発見した。
暗くてよくわからないながらも、多分若い男性だ。

今まで、散々我慢してきた。

現行犯で逮捕してやろうか、
壁に隠れて犯行現場を抑えてやろうか、そう思ったのに

やはりわたしは、噛みつかれるのが怖かった。力では勝てないことはわかっているから、見て見ぬふりをしてしまった。

それでもわたしはここの住民です、あなたの存在はもうチェックしましたからね、さすがにもう捨てるなよ!というアピールを心でかまし、家に入った。

朝になり、まさかの気持ちで現場を確認すると…あった。
びっくりした。あいつ、今回もやりよった!

カップ麺に、ブラックコーヒーの缶。
他にパンも食べたようで、しかもコンビニのビニール袋もありながら全部がバラけた状態で捨てられている。

頭に血が上りすぎて、もういい加減警察に言うべきなのかと思い、念のため証拠写真を撮る。

夫にも、そろそろ警察に捕まえてもらおうと相談するも、

「そんなことしたら放火されるかもしれん…」と言う。

確かに。つい最近も、悪いことを注意した人が暴行を受けたというニュースをみた。

正しい人ががまんをしなければならないなんて、そんな理不尽な話あってたまるかと思うのだけど…
そんな時代なのだと夫は言う。

悔しい。悔しい。
だからわたしは、いつものようにそのゴミを拾うことにした。

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1ミリたりとも触れたくない、その汚れたゴミを拾うにはこのくらい重装備で。

使い捨ての手袋をし、割り箸で掴んで袋に入れる。

野球の才能も、人間力の才能にも長けたあの素敵なメジャーリーガーは言った。

「ゴミを拾うことで、人が落とした運を拾う」

あんたが人の敷地に落としてった運も、わたしの運貯金に回すんだ。

そして今夜、夢の中でもったいないおばけに苦しめられればいい。


顔を見られていてもいつもと同じようにゴミをを捨てられる、それだけの度胸があればきっと他に活かせるだろうに。
とも思うけど、彼の損な人生にわたしが関わることはない。

それにしても…
え、カップ麺にブラックコーヒー合わなくない?ってそっちの方が気になって、心の中で噛みついてやった。

誰かの運までありがたく頂いちゃうわたしは、なんてラッキーガール。


今日も今日とて、運貯金。
運を貯めて貯めて貯めまくって、いつかでっかい何かの時に貯金をおろすわたしの物語。


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星野うみ。
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