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心身ともに健やかでいてほしいあなたへ。
病める時も健やかなる時も愛することを誓ったのに、病める時に愛せない理由が十二分にあるんだから仕方がない。
もう忘れたのか、昨年の夏だってそうだった。
わたしは体調不良の時、迷惑をかけて激しくごめんなさいスタイルなのと反対に
やつは体の不調により、精神まで支障をきたすタイプだった。
体が思うように動かないことで、むしゃくしゃするのだろう。
そんな時の当たりどころに選ばれてしまうわたし、おめでとう。大当たり。
そりゃそうだ、この家にいる人間はわたしだけ。
あとはわたしとしか会話のできないぬいぐるみが数体。あ、一般的には数体と言うけれどわたしは会話ができるので、数人という言い方の方がしっくりくる。
話がそれた。
昨夜、YOASOBIをしていた、なんて生意気ぶっこいてた頃夫は風邪っぽくて早めに就寝していたらしい。
もともと、友達と遊ぶので夜は遅くなりますと伝え、ご飯の準備もしておいた。
ご飯の炊ける時間、冷蔵庫の何段目には何がある、ラーメンもうどんもカレーもサラダもある、アイスコーヒーも買った、ビールも冷やした、パンも半分こ、好きなものを食べてと細かくメモしたものも添えていた。
途中何の連絡もなかったので、たっぷりめに遊んで飲んで食っての宴をし、遅くなると連絡もしていた。
この時はまだ、そんな状況の中にいることは知らなかった。
解散して帰ると夫は部屋を真っ暗にして先に寝ていた。
もちろん起こさないように慎重に抜き足差し足で帰り、1日楽しかった余韻に浸った後にシャワーを浴びいつも通りにベッドに入って寝たわたし。
起こさないように、もちろん電気なんかもつけずにね。
朝起きると、めちゃくちゃ不機嫌に
「風邪引いたっぽいわ、薬ないんだけど」と言う。
飲み切ってしまったんだからないのは仕方ない。言い方に可愛げがあればすぐに買ってきてあげてもいいのだけれど、とにかく朝から態度が悪い。
面倒でしばらく、自分のやることを優先していた。
「早く薬買ってきてや、すぐ行けへんの?」
症状一覧に加えてほしい。
のど、はな、熱、倦怠感に理不尽なイライラ、これはうちの場合だけなのだろうか。
メイクもしていない、髪も整えていないためぼさぼさ頭に深めにキャップをかぶり
ここには到底書けないようなきったねぇ言葉ををマスクの中にぶつぶつと吐きながら薬局へ向かう。
黒に染まっていたかもしれない、わたしの真っ黒な感情を吸い取る白いマスク。
あの夏を思い出す。家に初めてコロナがやってきた昨年の夏。
不機嫌なのはウイルスのせいと思いながらも、到底許すことができないくらいの不貞腐れ具合。
大人は自分だけで解決しろと言いたくなるあの感じ。
ホテル療養に見送った後、悔しさを我慢できずに声を上げて子供みたいに泣きじゃくったあの夏。そんなことが2度と起こってはいけないと、ホテルから帰ってきた時に話し合ったじゃないか。
不機嫌は空気感染する。しかも倍になってわたしの心にも不調をきたす。もういやだ。
2リットルのペットボトルに直接口をつけて飲んでいたことなんか知る由もないわたしは、寝る前にその同じ水を飲んでしまった。
それを咎めると
「マスクして寝てんやから風邪引いたってわかるやろ、しかもそっちに水あるのにわざわざこれ飲むことないやろ」
と、理不尽極まりないカミナリが落とされたのだった。
ちょっと待て。
おまえマクスして寝てるの、知らんがな。
電気ついてないのにどうやってマスクを確認する?
ペットボトルはいつも開いてるものから飲んでいくのが暗黙の了解で、開いているものがあるのにわざわざ新しいのを飲むか。
まず、そのことを言っておけ。
僕は風邪をひきました。
風邪だとは思いますが、もしかしたらコロナの疑いもあるかもしれません。
マスクをして寝ています。
ペットボトルには口をつけたので新しいのを開けてください。
言葉にしないとわからないことだらけなのに理不尽に怒ってきたあいつを2度と許すもんかと思ったけれど
きっとわたしが友達と遊んでいるのに気を遣わせたら悪いな、と思ってくれたのだろう。
ってそんな幻想を思うしかない。
その優しさは全部幻想。なのかもしれない。
朝から家系のカップラーメンを食べ、夜ご飯には作るのがめんどくさい冷凍のラーメンが食べたいと言い、サラダも食べたいしさっぱりしたデザート何かある?とか言った後
腹立ち過ぎて開けたわたしのハイボールの缶を見て一言。
「おれも飲もうかな」
おのれ、ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ…
まじで親と嫁の顔が見てみたいもんだわ。
相手にするだけ無駄なので無視してやった。
こちとら、昨日の夜食べ過ぎたもんで夜はサラダしか食べてないから余計なエネルギーは使えないもので。
自分は節制中、なのにラーメン作ってあげるとかどんだけの優しさ。
お酒が飲みたくなったのなら、今回は大したことはなかったのだろう。
隣の部屋にいるのにこちらまで聞こえるいびきをかいている。
ほんのり寒いので、出来ればいつも通りベッドで寝たいと思っているけれどどうしようかをまだ迷っている。
今から布団を出すのも面倒だ。
あなたの体と同じように、わたしの心もとても大事だから。
愛するあなたよ、どうかこれからも健やかでいてくれないか。
なんやかんや言いながらも、きっと一生そばにいることになると思うのだから。
知らんけど。
これからも続くようだと、知らんけどな。
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