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今日も今日とて、運貯金。〜苦いのにチョコレート〜

甘いチョコレートが沢山並ぶ季節には、甘くなかったあの日のバレンタインデーが思い浮かぶ。

今なら、そんなこともあったよねって思えるのに…若かったあの頃、あいにくまだそのスキルは持ち合わせてなく。

ヒロインにはなれなかったけど、わたしはバイプレイヤーで賞をもらった。

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大事な時に熱を出す体質なのは、多分プレッシャーに弱いからだった。

保健室で寝込み、熱を測ったら38℃もあってその日は早退することに。

早退は嫌だと拒んだのは、その日が大切なバレンタインデーだったからだった。

体操服をダボっと着こなすところがカッコいいと好きになった、ぱっくんというモテる男子。

チョコを渡したところで彼とどうにかなれるとは思っていなかったけど

仲がよかったので、ワンチャン両思いを期待していた当時中学生のわたし。

早退前に、無理してでもチョコだけは渡したかったのにぱっくんを呼び出すとか、そういう空気ではなかったため

気を利かせてくれた友達のひろちゃんが、キューピット役をかって出てくれた。


この辺でもうオチの想像はつくと思うけど、もうちょっとだけお付き合いしてほしい。


家に帰って熱でうなされていた頃、ひろちゃんがきっとチョコレートを渡してくれていたんだろう。

その後、健康状態も回復し学校に戻るも、あんなに仲良く話をしていたぱっくんはもう完全にわたしを無視するようになってしまった。

中学生にありがちな、好きな気持ちがバレると気まずくなってしまうというアレだ。

ひろちゃんは、わたしのチョコは無事に渡せたと言ってくれた。

「ありがとう、持つべきものは友達だよね。でもなんか気まずくなっちゃった」というわたしを、ひろちゃんはそっと慰めてくれていた。

会話はもとより、目も合わせてくれないぱっくん。
むず痒い1か月を過ごし、ついにやってきたホワイトデー 。

ひろちゃん伝いに、ぱっくんが呼んでると聞いて放課後に呼び出された。

そこで待っていたのは、ぱっくんとひろちゃん。

「ごめんね、うみちゃん。わたしたちがお付き合いをすることを許して欲しい」ひろちゃんは泣きながら訴える。

いきなりやってきた状況。
ぴえんにぱおんで、しょぼんこえてちょぼん。

「許すもなにも…なんだぁそうだったのかぁ。もしかしてわたしがキューピットかぁ。えへへへへ…」

話を聞くとどうやら、わたしのチョコを渡してくれたひろちゃんはその日、ぱっくんに告白されたらしいのだった。

ひろちゃんは、わたしと友達だからと一度は断ったもののそれからぱっくんが気になって気になって、ついには好きだと気づいたらしい。

なんだよそれ、ありふれ過ぎて飽和状態のトレンディだな。
しかも、チュクチューンのイントロ入りそうだ。

違う、チュクチューンを作った佐橋佳幸さんは「チュクチュチューン」が正しいんだって言ってたから。


『チュクチュチューン』


あの日あの時わたしが38℃の熱を出さなかったら
君らはいつまでもクラスメイトのまま…

だったはずなのに、ぱっくん、わかったからそれ以上はもうやめて。


「おれたちふたりからのお返し」

ぱっくんはそう言って、ハンカチ付きのあめちゃんをくれた。

今欲しいのは飴じゃないよ!
心が土砂降りの雨だから、傘をくれよ!
ふたりからのお返しって!

そんなの、いらねぇーー!!

そもそも、中学生が付き合うとはなんだ?
どこまでがその、なんていうか…お付き合いと呼ぶのか!

って思ったのをぎゅっと飲み込み、飲み込みきれなくてゲボ出そうだったけど

「おめでとう」ってちゃんと言えたと思う。記憶がいいようにすり替わってるだけかもしれないけど。

男子はわたしの隣にいる友達を好きになることが多かった。
ぱっくんだけではない、他にも似たようなことがいくつかあったけどそれはまた別のお話…

『最高のキューピットだったで賞』

人生初の受賞歴がこれだった。


あの時、泣いて情に訴えようとしていたひろちゃんの目から涙は出ていなかったこと、わたしは見逃していない。


痛かったね、思春期のうみちゃん。
でももう痛くないよ。
今ね、甘いチョコ食べながら、おけつぽりぽりしながらふんぞり返ってnote書いてるよ。


脇役がちゃんとしてないと、主役は輝けない。こんなわたしでも、人の役に立てることがあったことに中学生で気づけたわたしはなんてラッキーガール。

今日も今日とて、思い出運貯金。
この時は縁貯金もしていたのかもしれない。
運と縁を貯めて貯めて貯めまくって、いつかでっかい何かの時に貯金をおろすわたしの物語。

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星野うみ。
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