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新宿では、ずっと地下にいる

大江戸線新宿駅は、黄泉の世界とつながっている。

そう訝しみながら、まいどまいど、深く長いエスカレーターを下っていく。うっかり大きなカエルの口に飛び込んでしまい、その胃液で地下へと流されていく心地で、死を待ちわびる虫のようにぼんやり立ち尽くしてしまう。

向かうのは、たいていが六本木か青山一丁目。下車し、さささと用事を済ませると、まじめな小学生の下校のように寄り道などせずとんぼ返りでまた新宿へ。

今度は、地底から這い上がるようにエスカレーターを上っていく。張り巡らされたサイドミラーには魑魅魍魎がときどき映り込む。自分の表情をまじまじと見つめると、たしかに何か憑かれたかのような目つきをしている。

地上の光をめざして刻々と流れる自動に身を任せ、立ち止まってるのにいつの間にか着いた頂からひょこひょこ歩けば改札にたどり着く。とはいえ、さらなる地下道を通り、東口方面へ。一度や二度じゃ決して掴めない駅構造に戸惑いながら、やっと外へ出て、駅のまわりをうろちょろしても、何も変わらない現世がある。

雑多で汚く汚い人間の集まる街。その不浄を笑いや飲み屋でごましかしているようにも見える。刹那が日々行き交う。百貨店や映画館、本屋などが街の見立てを文化的に支えていて、街としてのギリギリを保っているかのよう。

地下から上がったはずなのに、また、まだ、地下にいる。そんな錯覚を覚える。

しかし煩悩起点の雑多で汚さがにじむものが人間らしく、どこか居心地のよさを感じてしまうのだろう。そんな風景と心象があるのが、愛してやまない街、新宿だ。

どん底もいうほど悪いもんじゃない。


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