見出し画像

【なぜブロックチェーンなのか?】

はじめに

 充実した内容の本のため、読書メモみたいになってしまいました。
 
 本書は、はじめに技術としてのブロックチェーンを説明し、その後は、ブロックチェーンの思想について、重点的に説明しています。ブロックチェーンは仮想通貨で注目を集めた技術ですが、そこが本質ではなく、私たちの社会インフラを根本から変える、ダイナミックな思想であることがヒシヒシと伝わってきました。
 
 IT産業の4種の神器として、「IoT、クラウド、AI、ブロックチェーン」が挙げられており、「IoTでデータを取り、クラウドにデータを置き、AIでデータを役に立つように活用する」ビジネスモデルがすでに現在の社会の核となっています。GAFA等がその役割を担っており、この中央集権的なシステムにおいては、データの量が重要であるため、先行者利益がとても高い仕組みになっています。

 しかし、ブロックチェーンのみ、毛色が違います。ブロックチェーンのコンセプトは自律分散型ネットワークの構築であり、これまでの中央集権的なネットワークから根本的にゲームチェンジする考え方です。そのため、現在の社会に馴染まず、短期的には実現が厳しいとは思いますが、とても興味深い考え方であり、本書を手に取りました。

 資本主義の限界、SGDs、ベーシックインカム、この辺りが関連するキーワードになりそうですが、ひとまず今回は、本書の内容に沿って要約してみようと思います。

 

本書について

WHY BLOCKCHAIN なぜ、ブロックチェーンなのか?
坪井大輔(著)
発売日:2019年7月12日

【要旨】
 現在の社会は、GAFAなどのプラットフォームへの情報集中によって構築されている。中心的な管理をともなわないブロックチェーンの技術は、こうした一極集中を破壊し、新たな可能性を築くものである。本書では、これまで仮想通貨や金融関係者のために語られていたブロックチェーンではなく、人々の生活や組織、社会をどのように変えていくのかに焦点を当てている。



本書の内容

なぜ、ブロックチェーン??
→「ブロックチェーンとは、社会インフラである」

大きなプレイヤーが中央集権型のネットワークを作ってきた時代から、自律的に機能する分散型ネットワークの時代へ。
人類に、管理者のいない社会をもたらす。

 以下、ブロックチェーンの技術を紹介した上で、ブロックチェーンの利点と普及阻害要因を分析している。最後に、ブロックチェーンによる未来を、ポジティブな面とネガティブな面から言及し、短期的な視点でなく、社会インフラとしての長期的な視点でブロックチェーンを理解する重要性を説いている。



 ◾️ブロックチェーンに対する疑問

なぜブロックチェーンなのか?の回答がない

 ①システムのコストに見合うか?:既得権益の強さ
  1社だけ導入しても意味がなく、ブロックチェーンの導入が得とならない
  (特に日本は社会インフラがすでに整っている)

 ②利点が堅牢性であること
  利用体験がほとんど変わらないこと

 ③本当の意味でトラブルゼロと言えるか?(誤入力など?)
  個々人の失敗には、ジウンで責任を持つしかない
  *誰も補償してくれない

 ④経営者層と現場の意識の差
  既存技術出なく、「ブロックチェーンで」やる意味を見出せない



 ◾️ブロックチェーンの4つの技術

①暗号化技術(デジタル署名) ②コンセンサスアルゴリズム
③ピア・トウ・ピア(P2P )  ④DLT(分散型台帳技術)

①暗号化技術(デジタル署名)
 :「1回の取引ごと」の記録を暗号化し、ブロック管理

 *ブロック管理
  個々のデータを一まとめにして管理(1つの箱へ)
  箱が満パンになったら内容を確認して封をする
  2番目の箱を用意しチェーン状につなぐ

②コンセンサスアルゴリズム
 :「みんなの合意を得て」ブロックに封をする
  (ブロックを生成するためのルール)

 *取引の連続性を保ち、過去データ改ざんを防ぐ
  セキュリティ対策

③ピア・トウ・ピア(P2P )
 :個々の参加者同士が中央サーバーを通さずに通信
  →分散型ネットワーク(1つのPCが故障しても大丈夫)

 *中央集権出ないシステムのため、みんなでチェックする
  →プライバシーに直結しない情報を入れて使用する

④DLT(分散型台帳技術)
 :それぞれがそれぞれのデータを持っている
  (台帳を共有して分散管理する仕組み)
  →改ざんは事実上不可能



 ◾️ブロックチェーンの利点

①信用  ②バンドル、アンバンドル  ③パブリック型、プライベート型

①信用
 :確たる管理者のいない分散型ネットワークシステムのため、
  人間社会における信用の新しい源泉になる可能背を秘めている
 
 例)仮想通貨
   オープンループ型なのに流通が記録される、理想的なお金モデル
   (発行、個人間(ID)流通、なおかつ全て記録)

②バンドル、アンバンドル
 バンドル:バラバラのものを1個のネットワークにする
  例)薬局同士の在庫融通システム
    →バラバラに存在していた薬局から、
     会社の垣根を超えたネットワークを構築し、融通

 アンバンドル:1個にまとめられたものを個別に解放する
  例)保険商品の選択
    →現状、たくさんの補償が1パックでまとめられているが、
     保険会社ごとの区別なく好きなものだけを選択できる

1企業、1システムでブロックチェーンを入れてもほぼメリットなし

③パブリック型、プライベート型
 パブリック型:誰でも。ネットワークに参加できる(管理者なし)
  →今の中央集権型の社会や組織に馴染まない
   万一トラブルがあった時に責任をとる人がいない

 プライベート型:限られた参加者だけで作る(管理者あり)
  →ビジネス寄り、収益寄り



 ◾️ブロックチェーン普及の阻害要因(向かないこと)

①大きなデータの取り扱いは向かない
②特定のデータのみの検索が向かない
③個体管理しにくいものは向かない

①大きなデータの取り扱いは向かない 
ブロックチェーンでは、コンテンツそのものは扱わず、
 コンテンツの目録と利用履歴の管理に特化させる
 →コンテンツ自体は従来データベースに納め、ID管理

②特定のデータのみの検索が向かない
 ブロックチェーン
 :過去から現在に到るまでの変化を全て記録した台帳が、
  暗号化されて格納されているイメージ
 →ある利用者の意図に沿って、特定のタイミングで特定の情報だけを
  記録できない

 向いている:過去の変化の履歴を追いたい
 向いていない:特定の条件を抽出して編集し、活用したい

③個体管理しにくいものは向かない
 追跡の限界
 :IDの割り振りなどはハードウェア寄りの技術と連動が必要

 例)ピーマンが入った袋単位での識別は可能だが、
   袋から出たピーマン1個の識別はできない



 ◾️ブロックチェーンによる未来

ポジティブな面
①自律分散型組織(DAO)   
②トークン   ③SDGsとの親和性
ネガティブな面
④管理者がいないことによる個々の孤立  ⑤ID紛失による再発行がない

①自律分散型組織(DAO)
 :システムが人間を自動的に使う世界
  システムを組織化して、周りに人間がいるという状態を実現

 ブロックチェーンのシステムの中にルールやレギュレーションを組み込んで、自動的に動かす技術
 →立法:人間 司法と行政:プログラム

②トークン
 :リアルマネーに」置き換えられない価値を定量化する手段
  *儲かるではなく、
   コミュニティ内の貢献度が高まる

 〜トークンが作る社会〜
 規制:コンセンサスアルゴリズムより、「みんなで決める」
 経済:価値を定量化し、交換する手段としてのトークン

ブロックチェーンは、新しい星を見つけて、そこに自分たちだけの国を作る技術(コミュニティを支えるエコノミー)

③SDGsとの親和性
 SDGs
 :みんなが協力して、取り残される人が1人もいない世の中を作る
 ブロックチェーン
 :特定の誰かが責任を負うヒエラルキー社会出なく、ホラクラシー社会
  *ホラクラシー社会:各自が独立し、各自に権限がある形態


④管理者がいないことによる個々の孤立
 仕事の質が高いか低いかはっきりするので、超格差社会になる可能性
 →資本主義の限界
 →社会主義的な要素が入ってこなければ、弱肉強食の殺伐な社会となる
 
 コミュニティ内で、失敗も信用も定量化
 →1つのコミュニティで高い評価出なくても、別のコミュニティでは?
 →複数のコミュニティでの評価が可能

⑤ID紛失による再発行がない



本書のまとめ

◾️ブロックチェーンは、社会土台としてのインフラである
 →インフラ上に経済を構築し、経済上で利益を生む様々なサービスを展開

◾️ブロックチェーンは、今の中央集権的な社会や組織では扱いづらい
 →すぐに導入する話にはなりにくい

◾️短期的な視点でブロックチェーンを見ても儲からない
 →様々な抵抗との戦いは必須

なぜブロックチェーンなのか??
描いた未来に向かうための不可欠な道具がブロックチェーンである



余談
オクシロモン onari さんのエスニックそぼろカレー(1320円) at 鎌倉
ピクルスの付いているカレー屋さんはいいですよね。
爽やかにいただけました。


画像1


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?