【Veritasium】カリウム(potassium)の歴史
科学系のトピックを扱っているYoutubeチャンネルのVeritasiumにて、カリウム(potassium)の歴史についての動画がアップロードされていました。科学と歴史を結びつけて、楽しくわかりやすく説明されていて、とても好きな動画です。英語の勉強にもなります。
本動画は、サムネにもあるように、ユタ砂漠の鮮やかな青色の池が何なのか?という疑問から始まります。科学実験?田んぼ?
しかし、真実はもっと魅力的とのことです。この池は、石鹸やガラスから火薬やジョージ・ワシントンまで繋がっているようです。共通点は「カリウム(pottasium)」です。ここから、科学と歴史をハイブリットさせた冒険が始まります。
Humphry Davyによるカリウムの発見
デービーはボルタ電池を使った電気分解の先駆者であり、1807年に、水酸化カリウムKOHを電気分解することで、「カリウムK」を発見したイギリスの科学者。
単離したカリウムは不安定であり、空気中では速やかに酸化し、水とは激しく反応します。カリウムは最外殻に電子を1個有しており、簡単に取り外されるため、反応性が高いです。したがって、自然界では純粋な金属カリウムを見つけることはできません。
カリウムは人々の生活のどこに使われている?
①石鹸
動画では、ベーコングリース(動物性の油:脂肪酸)と水酸化カリウム(アルカリ塩)で液体石鹸を作っています。
R-COOH(脂肪酸) + KOH(水酸化カリウム) → R-COOK (石鹸) + H20(水)
②ガラス
ガラスの主成分は、SiO2(二酸化ケイ素)ですが、K2O(酸化カリウム)を混合することで、軟化温度を下げます。炉内での作業が簡単になります。
③花火(火薬)
花火に使用されている酸化剤の1つに「KNO3(硝酸カリウム)」があります。硝酸カリウムは加熱によって分解して酸素を発生するので、酸化剤として、強烈な発火を引き起こします。
2KNO3(硝酸カリウム) → 2KNO2 + O2(酸素)
カリの製造プロセスがアメリカの第一号特許
K2CO3(炭酸カリウム)は初期のアメリカの主要な化学製品であり収入源でした。炭酸カリウムは草木灰に少量含まれており、灰汁を煮詰めて取り出します。よって、炭酸カリウムを生産するために、多くの森林が伐採されました。
この灰を作るプロセスを改善するための特許が、アメリカの特許第一号として発行されたそうです。さらに、その署名欄には「ジョージ・ワシントン」のもののみが記載されていたそう(1790年7月31日)。炭酸カリウムの製造がいかに国家的にも重要であったのかがわかります。
カリの製造のグローバル化と世界大戦
ドイツ:植物を使用しないカリの製造方法の確立
大量の森林伐採を必要としないカリの製造方法が、1861年にドイツで開発されました。鉱物として天然に産出するKCl(塩化カリウム)を含んだ「カリ岩塩」の採掘です。これにより、ドイツは、カリの供給をほぼ独占しました。
塩化カリウムは肥料としても機能することが発見され、干ばつにも強い作物を作ることができました。
世界大戦とカリ
ドイツは、第一次世界大戦の4年前(1910年)に世界へのカリの供給をシャットダウンしました。これは、ドイツの先制攻撃とも言われています。アメリカは、翌年、自国でカリの供給源を模索しました。その供給源として挙がった場所の1つが、サムネにもあった「ユタ州モアブ」でした。
カリの採掘方法の劇的な改善
カリの岩は表面にはなく、地下深くにありました。したがって、地下深くまで行って採掘する必要があります。しかし、地下には、カリの岩に加えて、石油やガスも閉じ込められており、1963年8月にメタン(可燃性ガス)への着火が原因で爆発事故が起き、18名が亡くなりました。
その1年後、より安全にカリを採掘する方法を開発しました。これにより、サムネのような鮮やかな青色の池ができます。
その方法は、井戸連通溶解法として下記リンクが説明してくれています。まず、カリの堆積物がある地下深くまで井戸を通して水を供給します。そうすることで、水がカリ塩を溶かします。そのカリ塩が溶けた水を別の井戸から水圧で引き上げます。よって、そのカリ塩水が地表の「池」に溜まり、太陽光によって水が蒸発することで、カリを得ることができる仕組みになっています。
水がカリを地下深くから運んできてくれるということです。
この鮮やかな色の変化は、太陽による水の蒸発を補助する着色料によるものです。したがって、そのカリの溶けた池は、水の蒸発の程度によって、鮮やかに色をかえます。
終わりに
このカリは肥料として用いられるそうです。年間数10億ドルの売り上げになるとのこと。食物の効率を上げる肥料に使用されているカリは、私たちの生活に欠かせないものであり、そのカリがどのような歴史を辿って、今現在ではどのように生産されているか、知る良い機会になりました。
ユタ州の砂漠にあるカラフルな池に着目して、その池がそこにある理由・なんでカラフルなのかの理由を、化学と歴史の両側面から深掘りしていくこの動画は、とっつきにくい化学をわかりやすく、興味深く教えてくれる大変良い教材であると思いました。
他の元素についても、自分で深掘りしてみたくなりました。
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