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メガネと仲良くなれない夫
夫とメガネの関係を見ていると、本当にメガネ運がないな〜と、ため息がでてしまう。
5年ほど前、一緒にメガネを買いに行った。夫が選んだのは、丸い黒縁の、ちょっと今風にみえるメガネ。久しぶりに買い替えたようで嬉しそうだった。
新しいメガネをかけて家に帰り、お風呂に入る前にそのメガネを外して、下(カーペットの上)に置いた。なぜ机の上に置かないのか、私は疑問に思った。一緒に住み始めて間もなかったので、そういう小さな行動が気になりはじめていた頃だった。
数日観察していると、やっぱりメガネを下に置く癖があるようだとわかった。
メガネを買って1週間ほど経ったころ、お風呂上がりの夫はついに自分のメガネを踏んだ。いつか踏みそうだなとは思っていたけれど。
少し歪んでしまったが、なんとか調節して最悪の事態にはならなかった。
だが、メガネを下に置く癖はそう簡単に変わらない。その二日後、また踏んだ。
今度は完全にぽきっと折れた。耳にかける棒の部分が片方とれてしまった。折れたメガネを見て、心がチクッとした。私が気がついた時に言っていれば、メガネがこうなる前に防げたのではないかと思った。でも人の行動に口出しするのは好きではないので、仕方なかったと思うことにした。
夫はめげずに、接着剤を持ってきて割れた部分を一生懸命くっつけていた。
なんとかかけられる状態には戻って、それからはメガネをちゃんと机の上に置くようになった。
それから数年経ち、今から半年前のこと。
ショッピングモールを歩いている時、メガネ屋さんを見つけてふらっと入った。夫はそろそろメガネを買い替えようと思っていたらしく、気に入ったデザインを見つけたので購入することに。
私は、夫が視力検査をするところを、後ろの椅子に座って見ていた。
店員さん 「見え方はどうですか?普段使いですか?」
夫 「普段いつもずっとかけています」
店員さん 「遠くがよく見えた方がいいですか?近くを見たいですか?」
夫 「う〜ん、遠くが見たいですね」
私の心の中 「え!?普段ずっとパソコン見てるじゃん。なんで遠くが見たいんだろう。わからん。 …まぁいっか」
この時、まぁいっかと思わずに割り込めば良かったのかもしれない。
こうして、遠くがよく見えるメガネが完成した。
散歩に出かけて、遠くの山々がくっきり見えることに感動していた。
仕事に行く時もこのメガネをかけて行っていたが、「このメガネ、パソコン見てると見えすぎて頭が痛くなる」と言って、結局、一回折れた前のメガネをまた使うようになった。
このよく見えるメガネは、お出かけ用にすると言って置いてあるが、それから一度もかけているところを見ていない。
かわいそうなメガネ。
そして一ヶ月前。やっぱり普段仕事中もかけられる新しいメガネが欲しいと、またメガネ屋さんへ。私もメガネが欲しかったので、一緒に買いに行った。
夫は、グリーンのいい感じのメガネを購入した。前の失敗を活かし、度数もキツすぎないよう店員さんと相談しながら慎重に調節していた。
メガネが出来上がったと連絡があり、取りに行った。
かけてみて落ちてこないかを確認したり、細かい調整を店員さんがしてくれた。
夫はやっと完璧なメガネを手に入れられた。
と思っていたが、1週間くらいたった頃、それもあやしくなってきた。
耳にかけるところが痛いと言い出したのだ。見てみると、赤くなっている。
我慢できるくらいだからと言ってしばらく使っていた。
ある日、メガネを外した夫とふと見ると、鼻当てが当たる部分から血が出ていた。
ずっと痛いの我慢してたのね。
そのメガネは、いつか調節し直してもらいに行こうと置いてある。
そして夫は今もまだ、一回折れた前のメガネをかけている。
ちゃんとメガネを机の上に置くようになったのは大きな進歩だが、踏まれたメガネは、まだ夫のことを許してくれていないのかもしれない。
ひとつひとつの物を、丁寧に愛情を持って使うのは、忘れがちだけど大切なことだなあと思う。
一ヶ月前に購入したメガネ屋さんから、お得なキャンペーンの案内ハガキが届いた。
なぜか、私宛のハガキだけ。
一緒に買いに行って、取りに行ったのも同じタイミングなのに。
俺宛てのだけ来ない…とちょっと悲しげだった。
不思議なことが起こるもんだなあ。
夫のメガネ事情は、進展があったらまた書こうと思う。
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