旧態依然のマスメディア
11月11日付の時事通信社の記事で「借金依存、遠のく正常化 「緊急性」に疑念 補正予算」という内容のものがありました。
正直、財務省出身の高橋洋一教授が言うように、財務省のポチのように財務省の言い分がてんこ盛りの記事でしたが、これを見て「そうかぁ国は借金ばかりでダメだな。増税止む無しか」と思う国民がどれだけいるでしょうか。
■借金することは悪いことなのか
そもそも論で申し訳ないのですが、借金をすること=悪という考えは時代遅れも甚だしい考えであり、規模が大きくなればなるほど借金をすることで成長に繋げていくのは世界中を見ても当然の行動です。例えば、就活をしている際に無借金経営を謳う企業が見受けられますが、これはただ借金をしていないというだけで経営が安定している証左とは言えません。
貸借対照表(B/S)を見れば分かるとおり負債の反対は資産ですが、借金は当然負債に該当するため、無借金経営は負債が少ないことを意味します。そのため反対側の資産が沢山あれば堅実で安定した経営をしていると言えなくもないですが、資産が極端に少なければ借金をしていないというだけで資産を増やすことができていない=経営が安定しているとは言い難いということになります。
もちろん、経営なり金勘定なり税金なりは複雑なものですが、物事はシンプルに考えることが第一で、そこから徐々に複雑に考えていくことが理解を早める方法の一つです。そうしてシンプルに考えてみると、そもそも借金=悪いことという考えにはなりません。なぜなら企業は借金をして、それを様々な企業活動に投資し、利益を求めているからです。
世界のトヨタを見て下さい。2024年3月期の連結B/Sの負債項目を見ると、「有利子負債」は流動負債で12兆3千億円、非流動負債で19兆3307億円、合計33兆3989億円もあります。トヨタは33兆円も借金があるからもうすぐ潰れそうな企業なのでしょうか。借金をして投資をし、成長しているからこそ世界に名だたるトヨタの地位を築いているのではないでしょうか。つまり財政云々の話は、借金の多寡で議論するのではなく、資産を含めた全体の財政状態を見て議論するべきです。
■一人当たりの借金に騙されるな
また、財務省の発表では2023年9月末時点の政府の借金(国債)は1275兆6116億円、同10月時点の人口は1億2434万人ですから、国民一人あたりの借金は約1025万円となります。一方、トヨタの連結従業員は375,235人ですので、従業員一人当たりの借金は約8900万円ということになります。
一昔前、国民一人あたりの借金が800万円、900万円にも膨れ上がって日本の破綻は待ったなしだと言われていましたが、その理屈を持って上記の数字を見ると世界のトヨタはとっくの昔に潰れてなければおかしいのではないでしょうか。一企業より遥かに破綻しにくい国家の一人当たりの借金と比べ、一人当たり約9倍もの借金を背負っているトヨタは倒産の噂どころか順調に成長しています。この違いは何でしょうか。国の借金が多い、一人当たりの借金が1000万円を超えて財政状況が大変だと言うのであれば、この点をしっかり説明してほしいものです。
■国債の引き受け先は日銀
大雑把に言うと日本の国債は約半分を日本銀行が引き受けています。正確には国債の保有先と言えばいいでしょうか。約45%もの国債を日本銀行が保有しているわけですが、日本銀行は政府が55%を出資している子会社のような特別な認可法人です。ここで重要になるのが日本銀行法です。
日銀法では、日銀の利益は国庫に納付しなけばならないと定められています。そうすると日銀が国債を引き受けた(保有した)場合、事実上、その分の政府の借金は無くなるわけです。
それはなぜかと簡単に言えば、政府は国債を発行して、日銀に買い取ってもらい、その分、現預金を受け取り、これを原資に様々な政策を行います。当然、国債に付属する利息は日銀に支払い、国債の償還期限が来たら国債を持って償還、つまり借り換えを行い償還に対応しています。
日銀はお札を刷って(お札自体を制作するのは国立印刷局ですが、発行するのは日銀です)国債を買います。そして政府から利息を受け取りますが、その利息は日銀の利益ですので、決算を過ぎたら国庫に納付しなければいけません。国債の償還期限が来たら、現預金を返してもらう代わりに新たに発行された国債を貰います。つまり借り換えに応じるわけです。
こうすると国債の元本は日本政府が続く限り、永遠に借り換えを行い続ける事ができ、それに伴う利息も日銀納付金として行ってこいで政府に戻ってくるため、政府は負担なく借金をし続けることができます。これが事実上、政府の借金が無くなるという理屈です。
そのため政府の借金はドンドン膨れ上がっているように見えますが、その大半を日銀が保有しているため、額面が増えて続けているというだけで実際の借金はそこまで多いわけではありません。
先の数字でざっくり計算をすると、1275兆6116億円の約45%である574兆252億円を日銀が保有していることなり、実際の借金はその分だけ少ない701兆5863億円という事になります。
政府の資産から負債を引いた純資産は、令和4年3月末で687兆円の赤字となっています。ここから日銀が保有する分を差し引くと、純資産はざっくり113兆円の赤字に留まります。会計年度毎の収支には差がありますが、令和2年度は約50兆円、令和3年度は39兆円のプラス収支であるため、今にも破綻しそうですといった状況にはとても見えません。
■まとめ
当然ですが、これらの数字は財務省から引っ張ってきた資料を元に、大雑把に計算した結果であるため、経済学を修めた頭の良い方々から見れば、何言っているだ、苦笑されるかもしれません。しかし、この記事の肝は財務省の言い分には猜疑があるということ、少し調べれば疑問点が浮かぶこと、そしてそうした点にはマスメディアは触れないことです。
かの天才高橋洋一氏は自身のyoutubeチャンネルでそうした点を懇切丁寧に解説していますし、昨年12月には国民民主党の玉木代表が散々述べていた外為特会の含み益を一般会計に繰り入れて財源化する法案を参議院に提出したりしていました。彼らの中身を聞けば財務省の言い分が変だなと分かるでしょうし、そもそも財務省はコロナ以前から財政は危機的状況でもうすぐ破綻しかねないと散々言っておきながら、コロナ時において100兆円もの金額を出しています。その結果、財政破綻したのでしょうか。これだけ見ても財務省の言い分が変だなと思うのが一般的な感覚でしょう。
逆に全く違う意見を述べる人も山ほどいます。私は、そうした部分をそれぞれ聞いた上で、適切な議論に繋げてほしいと思うのです。ただ一方的に財務省の言い分や大手新聞社、テレビ局が流す報道を信じるのではなく、それに真っ向から理路整然と反論している人の意見に耳を傾けてほしいのです。
そうした議論は別に政治家などの偉い人だけがやればいい問題ではありません。今はどんな意見でも発信できる時代ですし、個々人がそれぞれの意見を主張できるということは、そこからそれぞれの立場で議論をし、理解を深めてられるということです。自分の意見をしっかり持ち、どんな立場でも議論に参加できるようになれば政治家や官僚に国民が苦労させられるケースは少なくなると信じていますし、そうした世の中こそが国民主権というのではないでしょうか。