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青と緋の螺旋 - ネクサスの宿命

ネクサス・シティ——未来が遺伝子によって決められた街。摩天楼が空に向かって螺旋を描き、人々はそれぞれの「色」に従って生きていた。青のモンタギュー家と緋のキャピュレット家。この二つの家系は都市の両端を支配し、各々の血を持つ者たちは、徹底的に他の色との関わりを避けて生きていた。それが、平和と秩序を守るための「掟」とされていたからだ。

だが、この厳格な掟の下でも、人々の心の自由が許される場所があった。それが「ネクサス・バース」という仮想空間だ。仮想空間の中では、現実の血統や色は隠され、誰もが自由に別の自分として生きられた。青い血を引くエリオットと緋の血を持つリナも、それぞれ仮面をかぶり、仮想の姿でネクサス・バースを楽しんでいた。そして二人は、偶然にも出会ってしまう。

エリオットはモンタギュー家の次男で、家の将来を担う役割を期待されて育った。しかし彼は、家の名に縛られる自分に息苦しさを感じていた。リナも同じく、キャピュレット家の長女でありながら、家に縛られない自由な生き方を夢見ていた。

ネクサス・バースで出会った二人は、相手の色や家系を知らないまま惹かれ合った。エリオットはリナに向かって、初めて見せる無防備な表情で話しかけた。

「君とこうして話すのは、なんだか不思議な気分だよ。本当の自分でいられるような気がする」

リナもまた、普段の緊張感から解放されたように微笑んだ。「私も同じよ。あなたと話すと、いつもの私じゃなくなれる気がするの」

仮想空間での出会いを重ねるうち、二人の心は次第に惹かれ合い、仮想だけの関係では満足できなくなっていった。やがて二人は、現実の世界でも会うことを望むようになる。彼らは都市の中心にそびえる古びた展望塔で会うことを決意した。

ある夜、エリオットは展望塔でリナを待っていた。遠くから足音が聞こえ、暗闇の中でリナが現れると、彼はそっと手を伸ばした。

「リナ……ようやく会えたね」

リナもエリオットの手を握り返し、互いの存在の温かさを確かめるようにした。「エリオット……夢みたい。でも、これが本当に現実なのね」

その瞬間、彼らは自分たちの出会いがどれほど危険なものかを改めて実感しながらも、二人で運命に立ち向かう覚悟を決めた。

だが、この密会は都市の管理システムによって把握されていた。すぐに監視システムが二人を追い始め、彼らは再び仮想空間へと逃げ込んだ。しかし、もはや仮想の世界でも完全に安全ではなかった。

逃亡の果てに、エリオットとリナは最後の手段として「遺伝子融合」という禁忌の技術に手を伸ばすことを決意する。青と緋の遺伝子を掛け合わせ、新たな存在となること。それは、都市のルールの中では許されない行為だったが、二人には他に選択肢がなかった。

エリオットはリナの手をしっかりと握り、目を見つめた。「僕たちがこの都市を変えるんだ。たとえそれが禁忌でも、僕は君と一緒にいたい」

リナは決意のこもった瞳でうなずいた。「私も同じよ。エリオットとなら、どんな未来でも恐れない」

こうして二人は、遺伝子を融合させる手術を受け、青と緋が混ざり合った「紫色」の存在として生まれ変わった。それは、ネクサス・シティにとって初めての色であり、平和と混沌の予兆でもあった。青と緋の血統に縛られない二人の存在は、都市に新しい未来の可能性を示唆するものだった。

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