寝ている間に美味しくなってくれるパン
1.フランスの本物のパン屋さんとは
フランスでパン職人になるには、まず国家資格が必要で、パン製造の実務経験も3年以上ないといけません。
そしていよいよパン屋開業となると、販売するパンも自分で作らなければなりません。
つまり、生地を捏ね、発酵、成形、焼成まで全て自分でやると言うことです。
えっ?当たり前じゃないの?
と思った方も多いと思いますが、フランスでは自分でパンを作らないパン屋が存在します。
もし、フランスに行かれる機会があってパンを買ったら、そのお店の看板を見てみてください。
『boulangerie』(ブランジュリ)とあれば、そのお店のパン職人の方が作ったパンを売っています。
『Depot de pain』(デポ・ドゥ・パン)とか『Point chaud』(ポワン・ショ)とあれば、そのお店の方が作ったパンではなく、あらかじめどこかで作られた冷凍パン、あるいは真空パックしたパンを仕入れ、その場で必要に応じて焼いて売っている、と言うことになります。
パン職人は国家資格が必要な為、資格を持たない『Depot de pain』や『Point chaud』は『boulangerie』を名乗ることができないのです。
そもそもなんでパン屋を名乗れないパン屋が存在するのか
それはパン屋さんの仕事が想像以上に過酷だからです。
昔ながらのパンを作る職人さんたちは、朝のパンの販売の時間に間に合わせるために夜遅くから早朝まで働きます。
あまりにも過酷な為に、パン屋さんになりたい!と思う人が少なくなり、人手不足の問題も出てきているそうです。
また、2002年の労働法の改正もあり、労働時間が39時間から35時間に短縮されました。
人が足りない上に、労働時間も短くなる。
これではパン作りを続けていくのも大変だし、供給していくのも難しい…
冷凍や真空パックのパンをただ温めてサービスするチェーン店が出てきたのは、こういった背景があるからだと思います。
2.パン職人の挑戦
人手不足に、労働時間の短縮。
でも、自分が納得する美味しいパンを作り続けたい!
このジレンマにパン職人もずいぶん悩んだと思います。
そこで彼らが試行錯誤して考え出したのがオーバーナイト法というやり方です。
これはパンを捏ねた後、冷蔵庫へ生地を入れ
時間をかけてゆっくり生地を発酵させていく方法です。
このことにより酵母の活性を抑えて発酵を遅らせることができます。
ですから前日に生地の材料をまとめて少し捏ね冷蔵庫へ入れておけば、真夜中まで働く必要はありません。
あとは当日の朝、生地をちょっとだけ捏ねて成形して焼けばそれで良いのです。
この方法には他にも次のようなメリットがあります
-小麦の旨みが最大限に引き出される。
-冷蔵庫で生地が発酵している間にグルテンが形成されるので、こねる時間が短くて済む。
なんと素晴らしい!
現在、この方法はフランスの多くのパン屋さんで取り入れられているそうです。
こんなに素晴らしい方法が見つかったのだから、たまのピンチも悪くないですね。
彼らの美味しいパンを焼くためのモチベーションがますます上がっていきそうです。
このオーバーナイト法、パン職人でない私でもやれそうです。
(ちょっと厚かましすぎ?)
パン職人になった気分でちょっとだけ捏ねてみました。
時々生地をエイッ!と台に打ち付けてみたりして。
コレは日頃の鬱憤を晴らすのにとってもイイ。
その後、冷蔵庫へ放置。
翌日、生地を手で伸ばし広げ、旬の新玉ねぎをたっぷり使った白いピザを作ってみました。
3.旨みのあるパン生地で作る、とろりと甘い、新玉ねぎのシンプルなピザの作り方
『ピザにのせる材料』:
タマネギ2個、オリーブオイル大さじ3くらい、ニンニク1/2かけ、ローリエ1枚、アンチョビ10g、チーズのすりおろし、オリーブの実、タイム
『パン生地の材料』
強力粉300g、ドライイースト3g、水195ml、オリーブオイル大さじ1、塩7g、