『親業』 〜親の気持ちを少しでも楽にする
子供が、中学生、高校生と成長して行くにつれ、
親が思い描いていた「あるべき姿」からずれていき、心理が乱される。
自分の行動に対する「主体性」や「責任感」が育ってない。
とにかく、ゆるい。
親として、寄り添ったり、突き離したりしながら試行錯誤するも、
気持ちが伝わらない(子供の行動を変えられない)もどかしさ、
子供の将来に対する不安や焦りで悶々としている中、出会ったのが、
Parent Effectiveness Training. 日本語で『親業』。
1963年にDr. Thomas Gordonがカリフォルニアで始めた親教育プログラム。
1977年に近藤千恵氏により『親業』として邦訳出版され、日本に広まった。
ひと通り関連本を読み、学んだポイントをまとめてみました。
同じように子供の行動で気持ちが晴れない親のみなさまへ
少しずつ、子供の成長と折り合いをつけていくヒントになりますように。
(以下「★」は親業を実践するにあたって私が大切と思ったことです。)
子供と向き合う上での大前提
★まずは、誰が当事者か、「所有権」を見極める。
親と子は別の違う人間である。子は親の所有物ではない。
子供の信条や価値観、人生観は、その子に所有権がある。親が子供に対して持つ不満(もっとこうなってほしいという感情)は、その親の自分自身への不満や不安である。自分自身を許容できないことが多い人は、他人をも許容しにくいと言われている。まず、自分の心情や価値観に忠実に、活き活きと楽しく生きることが大切。
子供の行動や様子で自分の心理が乱れた時、自分はどう感じているのかに注意を向け、問題の所有者がどちら(子 or 親)にあるのか判断する。「否定的な感情を持っている側」=「問題を所有している側」
人間は理解されたがっている存在。「自分は愛されている」という感情が基盤にあるときに、人は安定した精神を持って問題と正面から立ち向かうことができる。
Gordon Methodが大切にする3つの柱
その1. 聞く力(傾聴):「能動的な聞き方」
【前提】
「聞く」と「尋ねる」は違う
親が聞き手に徹すると、子供も心を開く、気持ちがほぐれる。
→子どもが自分の考えをまとめて自ら結論を出す。
「受動的な聞き方」と「能動的な聞き方」の違い
「受動的な聞き方」passive listening
→コミュニケーションへの扉を開く(もっと話すことへの招待)
・沈黙
・相槌
・うながし「能動的な聞き方」active listening
→目的:子どもが理解と共感を得たと実感する
→重要:問題を解決する力をつけていく(すぐに解決するのでなく)
子どもが言ったことを
・繰り返す
・言い換える
・気持ちを汲む
【実践】
自分の意見を言わず、子どものことば(心の声)に耳を傾ける。
子どもの気持ち(例:気落ちしている)に焦点をあて、
事柄(例:テストができなかった)に焦点をあてない。疑問形のメッセージに、能動的な聞き方で応える。
やってはいけない《お決まりの12の型(障害)》
→伸びやかな成長を妨げる命令/指示
脅迫/注意
説教
提案/忠告
講義/論理の展開
非難/批判/判断/評価
同意/賞賛
はずかしめ/馬鹿にする
解釈/分析/診断
同情/激励
尋問/探る
ごまかし/注意を他にそらす
★お決まりの型に従うと、何も言えなくなっちゃう!…と悲観せず、
とにかく、能動的な聞き方を実践し、子どもの気持ちに心を傾ける。
その2. 自己表現の力:「わたしメッセージ」
【前提】
親が子どもの行動に頭を悩ませている
→問題の所有権は親にある。親からの「解決メッセージ」は根本的な効果につながらない。
→子どもが解決策を考え出さない。親からの「やっつけるメッセージ」は子どもの自尊心を破壊する。
→非難/説教/解釈など肯定的なメッセージを伝える = 褒める(=評価を含む)よりも効果的
「怒り」の感情に対して、それを引き起こす一次的感情は何か?
どこから来るのか? 自分自身と対話し、自分の感情を整理する。「わたしメッセージ」は親の思いを伝えるが、子どもにどう行動すべきか、という指示/命令はしない。子どもの自主的な判断で行動を変えるのを(ひたすら)待つ。
「わたしメッセージ」は、子どもが責任感/自己規律を持ち、セルフコントロールするための方法
問題の所有者を整理:《行動の四角形》
相手の行動全てを行動の四角形(=心の窓)に入れる。
自分が受容できる行動(上)と受容できない行動(下)の間に線を引いて分ける。
自分が受容できる行動のうち、相手が受容できる行動と受容できない行動に分ける。
問題の所有者を整理。→問題を解決できるのは問題の所有者のみ
「わたしメッセージ」の3部構成(重要:not 「あなたメッセージ」)
→重要:親が自分を隠さずにさらけ出す
子どもの問題行動を非難がましくなく、
その行動によって親が受ける影響を「具体的に」、
その影響によって親が感じる感情を率直に、伝える。
★親が問題を自分事として捉え、
自分の思いを率直に伝えることに専念すると、
子どもが素直に聞いてくれる確率が上がる。
すぐに行動の変化に繋がらなくても、
自分の気持ちを伝えた満足感とともに、
子どもに結果を求めず見守る。
その3. 対立解決の力:「勝負なし法」
【前提】
「対立は、人間関係の心実の瞬間である」(トマス・ゴードン博士)
→対立をなくすのではなく、解決するのが重要。
《解決の4つの型》
勝者型:親がいいと思う型で問題解決。親Win 子Lose
敗者型:親が子に勝ちを譲る。子Win 親Lose
動揺型:親に確信がなくて、時と場合に応じて1.と2.で揺れ動く
勝負なし型:お互いのために最もいい解決策を探そうとする。
→親と子が平等の立場(人間対人間)で民主的に話し合い、
「自分の意思でこの解決策を選んだ」と納得する解決法。
【実践】「勝負なし法」
問題を明確にする
解決したい課題に対して、思いつくだけの解決策を紙に書き出す(問題の整理)
双方にとって良い案を選び出し、1つずつ評価/検討する
一番いい解決策を選ぶ
その解決策を実行する(いつ/どこで/誰が)
実行する際の注意点も考えるうまくいっているかチェックする
うまくいっていない場合は、原因をチェックする(見直す)
★能動的な聞き方ができ、
「わたしメッセージ」も発信できたら、
今度は、子どもと対等な立場で問題の解決策を
話し合える環境作りにチャレンジ!
子育てのヒント(親業にまつわる言葉)
行動・客観的な事実を観る
ポイントを押さえて、ブレずに本音で語り合う
親が自分の気持ちを整理する
子どもに何を伝えたかったのか?
何がそんなに怖かった(不安だった)のか?
どんなことをしてあげた方がいいと思っているのか?
でも、それができない気持ちは何か?
子どもが自分で自分をコントロールできるような関わり方をする
子どもを勉強させようと無理に強行しても根本的な解決にならない
親がコントロールを手放した時から本人の学ぶ意欲は始まる
子どもの「人生の所有権」を取らないでいると、子供は自分の人生を大切に見つめる自覚が育ち、親との関係も良好なままになる
参考にした本
「親業」ケースブック 中高生編 近藤千恵監修
理由ある反抗 近藤千恵
親業トレーニング 近藤千恵編 久保ゆかり
親業 ~ゴードン博士 自立心を育てるしつけ トマス・ゴードン著、近藤千恵訳
Parent Effectiveness Training ~親に自信を与える親業
トマス・ゴードン著、近藤千恵訳
もっと深く知りたい方は、全国に「親業」プログラムを展開しているインストラクターの方々がいらっしゃるので、調べてみてください。