今村夏子「とんこつQ&A」感想~嘘とコントロール
人間の取り返しのつかない刹那を描いた4篇。
・コントロールさせてよ?
少し前に、当時5歳児男児を餓死させた事件が起きましたよね。
その事件に関与していたママ友。
蓋を開けてみればー!
ママ友が支配したのか?それとも世話をしていただけなのか?
表題作の「とんこつQ&A」を読み、この事件が頭に浮かぶ。
ラーメン店で働く今川さんはメモがないと接客できない。
最初はメモがなかったので注文はもちろん、「いらっしゃい」も言えなかった。
接客業なのに、怒らない店主にその息子のぼっちゃん。
なぜ怒らない?
亡くなった妻の母の...身代わりにしようとしていたが、メモをとることで自信をつけた今川さんの代わりに、今川さんよりもっとできない丘崎さんが店にやってきた。
それも妻が母が語っていた大阪弁を喋る丘崎さんに、よっしゃー!
丘崎さんを支配しようとする店主にぼっちゃん。
無自覚な支配力がコワイヨ(꒪⌑꒪.)!!!
今川さんも加わり丘崎さんへの支配力はエスカレート。
でも...それは支配なのか?お世話なのか?
ジワジワくる不気味さがたまらんのだが、自分の身に起きないともいえないのでは?と、思わせる。
そこんとこワザと攻めてくるね、今村さーん。
・嘘じゃないよー!優しさだよ。
否定されるのが嫌で、
怒られるのが怖くて、
嘘をついたことありますよね?
子どもの頃なんて、悪いことって頭ではわかっていても...。
よそゆきの服を友達に自慢したく、そのまま外遊びして汚してしまい、ヤバイ!怒られる隠さなきゃ。
ベットのふとんの中に隠してソッコーで見つかり、
悪いテストの点に、やっぱりダメな子なのね...否定されるのが怖くてとりあえず勉強机の引き出しに隠しても、これまたソッコーで見つかる。
見つかるとわかっていても隠してしまう。
でも、なにもなかったことにはできなさが心に残り、その積み重ねが?嘘はダメだと成長させてくれたのだろうか?
嘘はダメだねぇ~と思ったのに、「良夫婦」ったら。
困っている人を助けているようで、気づいたときはとんでもない事件へと。
その場しのぎの嘘を重ねても罪悪感を持たない人に、優しい刃を向けられ深手を負うのは嫌だよー!
妻の善意が人の気を引きたい嘘の刃。
夫の優しさはその場しのぎの嘘と無関心。
人の気を引きたいがための嘘の恐ろしさを描いてましたな(←たぶん)
妻の悪意の無自覚さもこわいけど、誰にも関心がないようにしか見えない夫が、もっとこわかった。
・ジワジワさが...
どの作品も、何気ない日常に潜む笑えない怖さがなんともいえない。
嘘に怯え、外の世界を絶ってしまった姉弟の話「嘘の道」も、日常にありえる怖さ。
自分のコントロールも、人へのコントロールも一歩間違ってしまえば取りかえしがつかない。
一歩違ってしまう怖さが、ホント上手い!!
ジワジワと襲ってくる嫌悪感とわかりみー。
その絶妙さにまたまたヤレれた一冊でした。
#読書感想文 #とんこつQ&A