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18.国外の動物園           (日本周辺)

 中国語や韓国語ができないため、資料などを中華人民共和国駐札幌総領事館、在札幌大韓民国総領事館の方にお願いしました。資料などはもらわなかったが、具体的に調べていただきました。
 台湾に関しては、台北の国立政治大学に勤めている鄭麗榕さんから、貴重資料をいただきました。
 この場を借りて感謝いたします。

圓山動物園(現・台北市立動物園/台湾・台北市)
 「熊や虎もお国の為に 台北市動物園空襲に備へ猛獣処分」
 昭和18年12月27日、午後8時半、クマとヒグマ各1頭が高圧電流によって感電死させられました。やり方は、オリに高圧電流を流して、掴みかけさせ、高圧電流が流れている槍で顔を突き刺すものでした。(※1)
 昭和19年には、同じようなやり方で、ライオンとトラも処分しましたが、いつ処分したかはわりません。昭和20年3月3日に、2頭のライオンを7発の銃弾で射殺しました。(※2)

新京動物園(現・長春市動植物公園/中華人民共和国長春市)
 中華人民共和国駐札幌総領事館にこの件について、資料を求めたところ、3カ月後に返事が帰ってきた。
 現在の動物園は、1987年に元動物園(新京動物園)の廃墟だった場所に建てられた。当時のいかなる資料も残されてはいない。
 当時、飼育員をしていた呂子華氏、88歳(2010年当時)が唯一の生存者でした。
その方からの聞き取り調査を行った。

 「新京動物園はアムールトラがオスが2頭、メスが9頭、アフリカライオンが二組、エジプトとヒョウが一組、コヨーテが7頭、アフリカダチョウ一組、アカゲザル30匹、及び多くの鳥類、両生類、爬虫類の動物が飼育されていた。戦争の後期になると、日本の役人により肉食動物はすべて毒殺され、その他の動物は檻を開けられ、野外へ逃げた。」との回答であった。

 千葉大学人文社会科研究第18号に掲載されている「新京動植物園考」の論文を出していた犬塚康博氏に、平成21年(2009)に何か新京動物園での猛獣処分に関しての情報提供をお願いし、回答していただいた。
 「康徳8年(昭和16年)末には肉食動物の飼料の入手困難となり、関東軍の負傷軍馬を撲殺して補充していた。また昭和20年8月露軍満州侵入と共に、猛獣はすべて薬殺される運命たどったのである。」(※3)
 佐藤昌氏の証言である。昭和18年には帰日されているので、終戦時の様子を伝聞によるものと思われる。
 猛獣たちを薬殺で処分したのは同一の証言である。
 「私は抵抗して宿舎で布団をかぶっていた。そうすると『グワー』と動物の声が聞こえるんですよ。『ごめんね、ごめんね』と泣きました。」 (※4)
 当時の園長・中俣充志の証言である。
 村上春樹著「ねじまき鳥クロニクル 第3部鳥刺し男編 10動物園襲撃」にて、関東軍(日本陸軍)が猛獣たちを射殺するシーンについて、これを事実と思う方がいるが、実際は薬殺であるため、フィクションである。(※5)
 
張家口動物園(中華人民共和国河北省)
 この件に関しても、中華人民共和国駐札幌総領事館にお願いをした。
 当時は、自治政府として
 「梅花鹿、狼、日本から来たヒマラヤ熊、ライオン、トラ、マントヒヒ、サル、および両生類のワニ、日本の鴨などがいたが、これらの動物は1945年夏に銃殺された。」(※6)
 一つの資料のみで、当時の関係者の証言、動物園の資料などがない。そのことを考慮すると、実際にこれらの動物が処分されたかは不明である。
 名古屋市東山動物園にいた2頭のライオンは、疎開先として昭和18年に送られたが、史料には記載がなかった。銃殺されたのか栄養失調で死んだのかは、今となってはわからない。

京城李王職昌慶苑動物園(大韓民国・ソウル市)
 李王朝の住まいであった昌慶宮の正殿以外を壊して、動物園を作り、1909年11月1日に開館した。当初は動物がいなく、捕獲、寄贈、日本の動物園から受けた熊2頭、トラ1頭、うさぎ18匹、韓国の犬1匹、済州馬2頭、シカ10頭など 総72種361頭でした。1936年には192種675匹まで増えたが、戦争のために飼料不足で死んでいく動物もあった。(※7)
 1945年7月25日、日本から命令が来て、アメリカ軍の空爆により動物が出たら危ないから処分するように、官庁(たぶん朝鮮総督府)の会計課長サトウさんから、飼育補助の朴ヨルダンさんに伝えられた。配布された毒物を飼料に入れて、ゾウ、ライオン、トラ、クマ、ヘビ、ワニなど、21種38頭を処分したとされている。
 毒殺に関しては、当時のヒグチ主任(動物園関係者と思われる)も証言しており、本当のところ処分数に関しては確実ではないようで、確実に処分したのはベンガルトラの一頭は間違いないみたいである。(※8)

※1 台湾日日新報(昭和18年12月27日付) 参考
※2 師大台湾史學報No.7 2014年12月31日 戰爭與動物:臺北圓山動物園的社會文化史 鄭麗榕 24頁 参考
※3  『満州造園史』佐藤昌著 日本造園修景協会 1985年 90頁 引用
※4 『創作の箱』別館 「命の輝き伝えたいから」旭山動物園前園長さんの言葉 2008年 1頁21-22行 引用
※5 「ねじまき鳥クロニクル 第3部鳥刺し男編 10動物園襲撃」村上春樹著 129-164頁 参照
※6 中華人民共和国駐札幌総領事館の方に調べてもらい、「張家口の園林史料」に書かれていた。
※7 ソウル市「韓国動物園80年史」1993年(領事館員からのメールの内容なので、この記念史に関しては読んではいない)
※8 領事館員から、「韓国動物園80年史」に書かれていたもので、読んだ中でベンガルトラの処分は確実との報告でした。

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