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19.ヨーロッパの動物園

 「空爆で投下された半トンの爆弾が、ホッキョクグマの囲い山を崩し、壁も堀も柵も吹っ飛ばして、死の恐怖に駆られたクマたちを野放しにした。パニックを起こし、リボンのように赤い血を流しながら、もとのすみかの周囲を回り続けるホッキョクグマを見たポーランドの小隊は、たちまち彼らを撃ち殺した。ライオンやトラなどの危険動物がつぎつぎ脱走することを恐れた部隊は、攻撃性の強い動物を殺すことに決め、ツジンカの父親である雄のゾウのヤスにも銃口が向けられた。」(※1)
     ダイアン・アッカーマン著「ユダヤ人を救った動物園」より

 ドイツ軍がポーランドを攻撃して、第二次世界大戦が始まりました。この小説は、ワルシャワ動物園での出来事である。どこまで真実なのかはわからないのだが、このようなことが起こることも十分あり得る。
 佐々木時雄・佐々木拓二編「続動物園の歴史(世界編)」の中で、資料は乏しいと言っているが、イギリス、ドイツとともに処分らしきものはなかったとのことであった。
 実際にそうであったかを、ヨーロッパ事情に関しては、在大使館、領事館などに何度となく手紙で問い合わせたが、残念ながらどこからも返事が返って来なかった。
 今回は掲載を見送る予定であったが、一応、私なりに情報を得ましたが、確信は取れませんでした。
 下記の動物園に関しては、こういう情報があります程度に捉えてください。

ドイツの動物園
 ベルリン動物園は、1941年9月7日夜から8日にかけて空襲があり、爆弾3発が命中し、ゾウ、ラクダ、飼育員1名が死亡した。ベルリンは戦争末期、戦場となったが、前もって処分することはなかった。(※2)
 ハーゲンベック動物園(ハンブルク)は、1943年7月25日ハンブルク大空襲により、動物園の80%が破壊され、8人の職員と450匹の動物が死んだ。空襲に備えて前もって処分することはなかった。(※3)
 ミュンヘン動物園、フランクフルト動物園に関しては、空爆後にライオンが処分されたと言われている。(※4)
 ヴッパータール動物園は、1940年5月15日にヒグマ3頭、ホッキョクグマ2頭、ライオン5頭が市当局に命令により射殺された。(※4)

ハーゲンベック動物園パンフレット(1936年出版)(所有:みかみうこん)

イギリスの動物園
 ロンドン動物園は、毒ヘビ類を処分し、爬虫類担当飼育員は恥じることなく泣いたという。(※5)
 ベルファスト動物園は、1941年、北ベルファストがドイツ軍の空襲を受けた後、公安部の命令により、ライオン、オオカミ、ホッキョクグマなどの33頭を処分した。(※6)

※1 ダイアン・アッカーマン著「ユダヤ人を救った動物園」52頁3-7行目 引用 
※2 読売新聞(阪神版)昭和16年9月10日付「空襲に猿狂乱 ベルリン動物園の惨話」参考
※3 「続動物園の歴史 世界編」佐々木時雄著・佐々木拓ニ(編)西田書店 1977年 189頁 参考
※4 「Starving the Elephants: The Slaughter of
    Animals in Wartime Tokyo’s Ueno Zoo」Frederick S. Litten https://apjjf.org/-Frederick-S.-Litten/3225/article.html 参考
※5 TIME GREAT BRITAIN:Animal Raid
   Precautions Monday,Feb 26 1940 参考
※6 ベルファスト動物園ウェブサイト https://www.belfastcity.gov.uk/zoo/history 参考

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