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『全裸監督』のマックシェイク

夏の連休はNetflixで『全裸監督』シリーズをいっき見。

話題作で気になっていたものの、AV現場の舞台裏の物語なので、女性の私は気持ちが暗くなりそうで見ていませんでした。

たとえばポール・トーマス・アンダーソン『ブギーナイツ』も面白くて感動したけど、センチメンタルな思い入れがキラキラしすぎてる気もして、たぶん再び観ることはないと思う。

とはいえ『全裸監督』は、いざ見始めると作品の勢いに身を任せ全部見てしまいました。

『全裸監督』の原作

原作となった本橋信宏『全裸監督』(太田出版)も読了。帯のキャッチコピーが見事で唸りました。

人生、死んでしまいときには
下を見ろ! 俺がいる。

分厚い本なので帯の背にもこの言葉が入っている。そこもとてもいい。こんな力強いキャッチコピーを帯に入れてみたいものです。

村西の「応酬話法」を淀みなく演じる山田孝之の素晴らしさはもちろん、加えて感動したのは玉山鉄二があの美貌をきっちり消して演じていることでした。いろんな役ができる人であることを改めて実感。満島真之介の突き抜けた明るさ、役柄からはみ出している純真さも胸に染みました。

Netflix『全裸監督』の食

食欲も性欲も人間の生の源だけど、時には抑えがたい力となって、欲の主を振り回してしまいます。

Netflix『全裸監督』では性欲に訴える商売をしている人々のキャラクターや群像を、食を使って描いていたのも印象的でした。

成功前夜、まだお金がなかった時代の村西たちが焼肉屋で食べる豚足。
石橋凌演じるライバル会社・ポセイドン企画社長の美食家ぶり。
村西の会社はスタッフも女優もみんな集まってワイワイ食卓を囲み、ポセイドン企画は着飾った女優たちが社長を囲むように座り高級料理を食べる。

村西とおるがマクドナルドのヨーグルトシェイクにハマる場面も面白かったです。マクドナルドが銀座に第1号店をオープンしたのが、ちょうど50年前の1971年なのだそうで、村西の新しい物好き流行好き、それを恥とも見栄とも思わない明け透けさがヨーグルトシェイクからわかります。

『全裸監督』原作の食

ヨーグルトシェイクは出てきませんが、原作にも面白い食べ物が出てきます。

1967年、閨閥も学歴も縁故も当てもなく上京してバーに就職した村西に、先輩がおごってくれた食事が「しょうが焼き定食」。その先輩はその後の村西の人生にも影響を及ぼすのですが、二人の関係の象徴として「しょうが焼き定食」が本の中でくり返されます。

映像のように、実際の現場でも女優、スタッフみんなで焼き肉を食べたり、自炊して食卓を囲んだりしていたことが原作からわかるのも面白かったです。

柄本時生、後藤剛範、伊藤沙莉のモデルになった人物たちが証言している食事がすごい!

朝はカルビ丼山盛り。昼はユッケ、タン塩、レバー、すべて山盛り。夜はホルモン、レバ刺し、カルビ、ミノ、どんぶり三杯。夜食にチキンからあげ、仕上げはコーラ。

そして3人とも成人病になっている…汗!

1971年開店のマクドナルド第1号店は銀座三越の1階に入っていたそうで、今で言うならラデュレが開店したようなもの? 

木村屋のあんぱんが30円だった時代に、ハンバーガーが80円、マックシェイクが120円。今の値段で計算するならあんぱんが192円だから、ハンバーガーが512円、シェイクが768円? 高級品…。

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日本マクドナルト50周年記念のシェイク。Sサイズ100円。
パッケージのキャラは米国マクドナルド創世期のキャラクター「SPEEDEE」。現在、ヨーグルトシェイクは販売されていない。

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