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思わず語りたくなる一杯。日本酒『100人の唎酒師』

コンセプト開発メンバーとして、沢の鶴様のプロジェクト「100人の唎酒師」に参画しました。このプロジェクトは、1717年創業の老舗酒蔵である沢の鶴様とクリエイターコミュニティ「TRINUS」が共に挑戦したもので、日本酒文化を未来に繋ぐ新たな試みでした。

プロジェクトのテーマは「対話」。酒造りの現場に根付く“当たり前”を再定義し、それを現代の消費者に響く形で表現することが求められました。このプロセスを通じて、私自身も多くの学びと発見を得ることができました。


プロジェクトの出発点、「限外濾過」

©︎沢の鶴

商品開発のきっかけとなったのは沢の鶴様の「限外濾過(げんがいろか)」という技術です。これは加熱処理ではなく濾過によって酵素を極限まで取り除くもので、生酒特有のフレッシュな味わいを損なわず、常温で流通可能な日本酒を実現します。

ただ、そんな素晴らしい技術をそのまま伝えても、なかなか消費者には伝わりにくいことも事実。そこから商品の核となるコンセプトを探す旅が始まりました。


アイデアの種を見つける対話

©︎沢の鶴

まずは沢の鶴様の社員の方々との対話を重ねました。その中で手掛かりとなったのは「100人以上の社内メンバーが唎酒師の資格を持っている」というエピソードです。

それもよくよく聞いてみると、酒造りに関わる職種以外にも唎酒師の資格を持つ方が在籍しているとのこと。あまりこの事実を公表してこなかったそうですが、これほどお酒が好きで詳しい方々が手がける日本酒は、間違いなく美味しいはず。そう確信した私は、この事実をそのままコンセプトに据えるとともに、そのままネーミングに活かす提案をしました。


コンセプトとデザインの接合――ストーリーをどう描くか

この革新性をどのように商品を中心としたデザインに反映させるか。その際、伝統を重んじる酒蔵らしさをどう調和させるか。特に意識したのは以下の3つです

  1. 革新性の視覚化
    パッケージデザインには、伝統的な和の要素を残しつつ、イラストをベースにキャッチーなビジュアルに。「100人の唎酒師」というユニークなネーミングを活かし、実在する社員をモチーフにしたイラストを制作いただきました。そうすることで「これ実は私なんです!」と社員の主体的な関与を促し、彼らが誇りを持って商品を売る仕掛けになっています。

  2. 機能性の訴求
    日本酒に馴染みがない方にも分かりやすく、なおかつ情緒的に響く言葉を選びました。例えば「限外濾過」という技術的な説明を、「搾りたての生酒がそのまま手元に届く喜び」として伝える表現を心がけました。

  3. ストーリー性の強化
    唎酒師たちの意見を丁寧に反映し、「社員が全員で作った日本酒」という物語を前面に出しました。Webサイトやクラウドファンディングページでも、彼らのストーリーを具体的に描き、消費者に共感してもらえるよう工夫しました。


飲んでいただける方と一緒に作る

「100人の唎酒師」は単なる商品の開発にとどまらず、消費者と新たな体験を共有する場を作り上げたプロジェクトでした。この日本酒が持つストーリーを通じて、人と人を繋げる「コト」を作ることができたと思います。

たとえば、クラウドファンディングの期間中には試飲会やオンラインイベントを実施しました。そこでは唎酒師の方々が直接参加者と交流し、日本酒に対する熱意や技術的な知識を共有しました。こうした取り組みを通じて、単なる「物」としての商品ではなく、「語りたくなる体験」としての価値を生み出すことができました。

さらに、消費者の意見を受け入れながら進化していく余地を持たせたデザインやストーリー構築も、このプロジェクトの特徴でした。商品を通じて得られる体験やコミュニケーションが、沢の鶴様と消費者との新しい関係性を築き上げたと言えるでしょう。

伝統を守りながら新しい価値を創造する

完成した「100人の唎酒師」は、沢の鶴様の300年の歴史と唎酒師たちの情熱が融合した、まさに革新と伝統の象徴だと今も感じています。このプロジェクトを通じて、日本酒の可能性を再発見すると同時に、ものづくりの持つ力を改めて感じました。

私自身、このプロジェクトを通じて得た学びを次の仕事にも活かしていきたいと思います。また、「伝統を守りながら新しい価値を創造する」というテーマに挑み続けたいと考えています。

最後までお読みいただきありがとうございました。もしお近くのスーパーや酒屋さんでお見かけの際は、ぜひ手に取ってもらえると幸いです。オンラインショップもございますので、合わせてご覧ください。

とっても美味しいですよ!

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