7月5日「チョコレートパフェ」
2021年7月5日の日記。
目標ができた。
大変だったが、人生の支柱にしていこうと思う目的が生まれたので、また立ちあがろう。
苦しめられたものに、救われた気がする。
という訳で、チョコレートパフェを食べにきた。
困った時や辛い時にぴったりなのがチョコレートパフェだ。何かに怒り困り果てていてもカサ増しに使われたコーンフレークを前にすれば全ての悩みが吹っ飛び「なんだこの量あと1センチ越えたら犯罪だぞ」と一貫した怒りに胸を高鳴らすことができる。素晴らしい悩み逸らしツールことチョコレートパフェなのである。
さっそく店内に入り、メニューを物色する。
あった!チョコレートパフェだ!
もうメニューの写真からカサ増し雰囲気がダダ漏れである。パフェの根本部分が明らかに茶色いアイスで埋め尽くされているが、経験上その正体はチョコレートソースにまみれたコーンフレークだと知っている。上手な場所ではチョコ味のコーンフレークなんてこともあった。メニューを眺めながらコーンフレーク漂っちゃってんよとにやけが止まらない。
早速箸休め用のコーヒーと一緒に注文する。
コーンフレークの虎さながら、腕を組みパフェが来るのを静かに待つ。怒りを一気に爆発させるために、一切の情報を遮断し心を無にして時を過ごす。心の海では、波が引いたり満ちたりを静かに繰り返している。正に全集中パフェの呼吸コーンフレークの型である。ちょっと何言ってるのかわかんない。
心が乱れかけた時、お待たせしましたあと可愛らしい声が鼓膜を揺らす。目を開けると店員さんがテキパキとコーヒーとチョコレートパフェを机に置いていた。来た!!!心臓が早鐘を打つ。血液の流れが勢いを増す。全身に血が巡る。この瞬間煉獄さんに似たこの世の全てのチョコレートを溶かさんばかりの熱を帯びたオーラが私から出ていたに違いない。
いざ、実戦!!
あれ、
パフェの根本にはチョコレートアイスがぎっちり詰まっている。そ、そんな地層チョコレートパフェであり得る筈ない。チョコレートパフェ学者としてそんなことはあってはならない、これ以上見てはならないと脳が警告を鳴らす。口がカラカラに乾き震える手でコーヒーに手を伸ばす。カップがカチカチと音を立て、灼熱の液体が一気に口内へ侵入する。あっちぃ!と本当馬鹿らしいくらいに無様な反応を1人晒してしまうくらいには動揺していた。
呼吸が上手くできない。そんな、そんなサービスあるはずがない。だって、そんな根本までアイスをギッシリ詰めてしまっていることが分かってしまったら、今までの常識が全て覆り、歴史が変わってしまう。そんなことあっては、あってはならないのだ。チョコレートパフェのカサ増しコーンフレークに怒りを燃やし平常心を保って何とか生きてきた己の地盤がボロボロと崩れていく感覚に襲われる。その地盤はコーンフレークで、私はコーンフレークと共に地の奥底に落ちてゆき、上からアイスを敷き詰められ、パフェの地層の一部となるのだ。
無心で生クリームを食べながら、長いスプーンで身を掻き出す。ガリッ。コーンフレークの層にスプーンが突っかかる。大丈夫、ここまではいつも通りだ。見えているものが全てとは限らない、大丈夫。スプーンを握る右手にグッと力を込める。
へにゃん。
アイスだ。そこにはギッシリとチョコレートアイスが詰まっていた。スプーンをアイスに刺したまま、ふと笑いが込み上げる。あははは、あはは、あはははは。脳内にあとはのルビが駆け抜ける。千と千尋でクサヤ団子くれた神様が前頭葉から駆け巡り眼球から出ていったようだった。わかりにくいな。
なんだか色々馬鹿らしくなってきて、一気に生クリームをかき込んだ。常識や人の目を気にして生きて、一体何になるっていうんだろう。
最高じゃないか。思い通りにならないから人生もチョコレートパフェも面白いんじゃないか。
上部生クリームを食べ終わる頃、全て吹っ切れた。軽やかな心で根本に埋まったチョコレートアイスに取り掛かる。ガリッ。
ガリ.....?
真上からパフェ容器を覗き込む。
チョコレートアイスに丁寧に埋め込まれた大量のコーンフレークと目があった。
いや想像通りのチョコレートパフェやないかい!
紆余曲折したけど、ちょっとだけ嬉しかった。
美味しかったです。