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「墓地を見おろす家」は役に立つのか

小学生の同級生にお寺の子がいた。
2回だけお家に遊びに行ったことがある。帰り道、お墓の群れが怖かったなって思い出す。

谷中霊園の近くを散歩するのが好きなのだけど、夜ふけに通るたびに、未だにお墓に不思議な魔力を感じてしまう。
それは、どんな因果でここに至るか知らない不特定多数の死者がギュウギュウに眠るという不穏な現実と、誰かにとっては尊く、かけがえの無い場所だという両実持ち合わせているアンバランスさを、自分の中で想像して育てているからだ。

この本も不思議なバランスが楽しい小説だった。
少しだけネタバレに触れるのだが、墓地をみおろすマンションの一室を買った夫婦が、怪異によってマンションに閉じ込められてしまうのだ。
外に出ようとしても扉が開かないのだ。
これまた変な話だが住人はこの夫婦と、その子供だけだ。
一週間くらいは閉じ込められてたのかな?
当然、幽霊にも襲われるが、それ以前にフィジカルなサバイブとして飢えの問題なども発生する。

幽霊に襲われるのが嫌か、食べ物がなくてひもじいのが嫌か、いずれも天秤にかけ難い恐怖だなと思いながら、好きな時に好きなものを食べられる諸条件、健康•経済力を、あらためて幸せに思ったりした。

関係ないけど、このnoteの見出し画像に使ったのは、南米にある古代の洞窟壁画にみられる無数の手形だ。
(小説の中に無数の手形が襲ってくる描写がある)
この無数の手形は、数千年かけて作られてきたと知った時、当時の人はこの手形の壁を育ててる時、テンション上がっただろうなー、と想像して楽しい気持ちになる。
思い出に内緒で手形をつけた当時のカップルなんかもいたかもしれない。

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