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あのおじさん。僕なのかも。
自転車に乗る。
おしゃれな奴ではなく、ママチャリ。カゴもついている。
電動ではない。
自転車に乗ると、学生時代の暇なときを思い出す。
通学路、自転車に乗りながらの帰り道、どこと言うわけでもなく、寄り道がしたくなっている。
あの感じが好き。
自転車に乗る機会はかなり減ったのだけれど、久々にまたがり漕いでいると、少しずつ気持ち良くなってくる。
どこかに行きたいなぁと思う。
行く当てもなく、ただブラブラする。
そういえば子供の頃、自転車でブラブラしているおじさんをたまに見かけたなぁと。時代が巡り、自分がその一員になっているのだなと。
ああいう大人にはなりたくないなと思っていたなぁ。
まあ、なってみると、「思っているよりも怖くないぞ、この位置も」と、一人で納得。風は心地いい。人にはそれぞれ事情もある。一括りにするのは幼さの証さと。
だけど、あまり人目がつかないような場所を探す。
ささやかな若者に対する配慮。
そして、知らない道を通りながら辿り着きたいなと思う。
どこへ? 限りなく、偶然に近い「ああ、よかった」に。
けれど、緩やかな坂が続き、しんどくなってくる。
「はぁ、ひぃ、はぁ、ひぃはぁぁ、ひぃぃ、はぁ、ふぅぅ…あっはぁ…」
息も乱れる。足も痛くなる。お尻もなんか辛い。
重力。年輪。衰え。言い訳。逃げ癖。けど、自分なりな頑張り。
ペダル。ペダル。ペダル。
「あぁぁぁぅぅっ、はぁぅ」
なんか、大きい声を出したくなる。
けど、思う。なんかいたかも、昔、突然大声出してる自転車乗ってたおじさん。そんなん過る。
けど、「そこの位置」も、思っているより怖ないかも。と、自分を誘惑。
いや、思い出せ。
引いていた自分。あんな大人になんかならないと思った自分を。
なるな。いや、怖くないぞ。いや、なるんじゃない。
叫べ。苦しいなら叫べ。いや、あぁ。
僕は、自転車を止め、
「ふぅ」
と、溜息をつく。
疲れを流しつつ、自転車を手押ししながら、踏みとどまった自分を褒めた。
コンビニで特茶でも買おう。
ゴクゴク飲もう。
と、思っていた。
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