旅に出た。ビュッフェで相手をかわいいと思ったら、たぶんもう愛しちゃってる。
2024.9.16
旅に出た。
「旅行に行こう」って言われたのは旅行のたった4日前で、その場で夫がとってくれたホテルは、夕食も朝食もビュッフェの修善寺の温泉宿だった。
温泉宿は露天風呂付きの部屋で、食事は部屋出しが最上と若い頃は思ってきたけれど。まあそうなんだろうけど、この歳になってビュッフェ、めちゃくちゃに楽しい。
好きなものだけ食べれば良いっていうのが良いのかもしれない。
コース料理の前菜の、小箱に入ったよくわかんないちまちましたやつは(なんとビュッフェに小箱ごとあったけど)ムシムシ。
次の料理がこないよーの待ち時間も無し。
先に白米だってゲットできちゃう(懐石で先に欲しいといつも思いませんか)。
ビュッフェを一旦ぐるりと見て回る。
ふむふむ
エビチリ?いやいやいらないよ。
餃子?好きだよ、でもね、ここ伊豆ですし。
エビフライ?揚げてんじゃ無いよ。
心の中でつぶやきながら
さすが伊豆、金目鯛の煮付けラブ。
やっぱりお刺身だよね、伊豆!
おでん。静岡おでん!
湯葉!湯葉!湯葉!
興奮しつつちまちまと取っていく。
あの、小さくおかずの部屋が定められる(窪んでいる)、ビュッフェの為に生まれたみたいな白いお皿に。
広い会場をぐるぐる回りながら、時々他人みたいな顔をして夫とすれ違い、夫のお皿をチラ見する。…あれ…なんだあの黒いやつ?
戻って見比べた夫と自分の皿の上の違いに愕然とする。
…夫…エビチリ山盛りじゃん。餃子じゃんしゅうまいじゃん。
ねえ、ほんとーに食べたかった?そのウインナー。
寿司はわかる。イカね、エビね、マグロね、お稲荷さん!…お稲荷さん好きだったっけ!?
夫も確実にテンション上がってるじゃん。と思う。
別で頼んだ「地酒飲み比べセット」(やっぱり、絶対テンション上がってるじゃん)をちびちび飲みながら「お稲荷さんは余計だったわ」と言ってもぐもぐしてる。
私のお皿をチラッと見て「あ、俺もおでん取ろうと思ってたんだわ」すくっと立ち上がる夫、箸は置いていけ。
昔より、ホテルのビュッフェは美味しくなった。
翌朝。
「全然お腹空いてないから食べれないよ」アンニュイ気取ってる夫を「コーヒーだけでも良いじゃん行こうよ」と連れていった朝食ビュッフェ。
途中すれ違った夫は真顔で片手にコーラ、片手に野菜ジュースを持っていた。
…楽しそうじゃん。
帰ってきた夫のお皿には、皿の窪みを無視するように部屋に跨ってやきそばがのっていた。
「お腹いっぱいなんじゃ無かったの?」
「…だって、富士宮やきそばだったんたもん。」
ビュッフェで相手をかわいいと思ったら、たぶんもう愛しちゃってる。
コーラと野菜ジュース飲みながら富士宮やきそば食べてウインナー齧ってる夫、かわいいじゃん。
で、そのウインナーほんとーに食べたかった?
(朝食ビュッフェのベーコンはなぜかすごい惹かれる)
夫のお皿を撮らなかったのが悔やまれる。
昔、ジャムが有名で「世界一美味しい朝食」と銘打っていた神戸の朝食ビュッフェで、最初にカレーを一皿分食べて「お腹いっぱい」と言い放った夫にただイラッとしたのを思い出した。あの頃は愛してなかった。