時代小説『龍馬が月夜に翔んだ』第2話「自由を求めて新天地へ」
龍馬は、日記を書き終えると、そのまま仰向けに寝そべった。
目の前には、黒ずんだむき出しの梁が重くのしかかる。それに輪をかけるように、あたりに醤油の匂いが立ち込めている。狭くて息苦しい。ここに日中居たら気分は晴れない。
後藤(象二郎)は上手く容堂公(山内容堂)を説得出来るだろうか。あの大酒飲みの容堂公にへそを曲げられたら、元の木阿弥になる。小松帯刀は上手く、いごっそうの西郷さんを引っ張りだすことが、出来るだろうか。この二人が、大政奉還の大切な鍵を握っている。
大政奉還した後は、将軍様と四賢公(松平春嶽・山内容堂・島津久光・伊達宗城)が仲良く手を結んで、この世を動かして行かないと外国には太刀打ちできない。
その意味でも、土州と薩摩が強く結びついていること大事だ。薩土盟約が大政奉還のやはり要になる。
後は、長州をその中に組み入れるだけだ。
あそこは、土佐藩と違って藩主が方向性を明確にしないから出遅れてしまったが、桂兄(桂小五郎)筆頭に若い人物が沢山揃っている。
土州と薩摩と長州が三つ巴で行けば怖いものなしになる。
これらの藩は、陸ではばらばらに離れているが、海は一つだ。陸は続いていないが、海では互いに結ばれている。しかも船で行き来する方が断然早い。
わしらが念を入れて、長州を引き込んだものそうゆう訳なのだ。あそこに、へそを曲げられたら、長崎から京までの船の行き来が随分遠回りになってしまう。だから、朝敵の長州と手を組まざる負えなかった。
それも西郷どんの筋書き通りだ。わしらは、知らん間に西郷どんの手先になってしまっている。
おまけに、お龍は長州にまるで人質にされたように、足留めをされている。
しがらみのないところに行きたい。大政奉還が終わったら、ひとまず蝦夷でも行くか。
あそこだったらたら、誰にも気兼ねしなくていい。長崎とはけた違いに広い分、思う存分商いが出来る。ロシアにも、近くて都合がいい。
よし決めた。わしは、一段落したら蝦夷行く。
新天地で自由になる。