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大河内健志
2023年2月11日 12:10
「リョウマ、マダシヌナ、ユメガアルハズ、シヌナ、ユメユメ、ユメヲカナエヨ、マダシヌナ、リョウマ、シヌナ」瀕死の中岡慎太郎があえぐようにつぶやいている。よし、寺田屋の時のように、力ある限り逃げよう。あの時のように屋根伝いに逃げよう。しかし、あの時はお龍がいた。三吉慎蔵もいた。今、誰もいない。恐怖よりも孤独に胸が締め付けられる。龍馬は左手に持った抜き身の脇差を杖代わりに
2023年2月4日 11:40
火鉢の灰を頭からかぶった龍馬は、一瞬何が起こったのか理解できない。炭の火の粉もはねたようで、髪の毛の焦げた匂いがする。目が明かない。耳が聞こえない。辺りは騒然としているのに、沈黙の世界である。先程流した涙のおかげで、闇が溶け出すように徐々に視界が蘇ってくる。顔を袖で拭おうとしたが右手が焼けるように熱い。重くて手が上がらない。右手を見る。拳銃を握ったままになっている。右手
2023年1月28日 11:28
突然、銃口が現れた。藤堂平助は、刀を目の前でいきなり抜かれたことがあっても、いきなり銃口を向けられたことがない。どう対処したら良いのか分からず、呆然と立ち尽くした。坂本龍馬がいる。隠れ部屋で臥せっていて、この部屋にはいないはず。しかも、我々に銃を向けている。傍らにいる服部武雄も、何が起きているのか分からなかった。誰もが、銃を前にして冷静な判断など出来ない。その場を逃れよ