短編小説『悲しくなるほど美しい』
暫く歩いて閑静な住宅街を抜けると、小さな町工場や倉庫が立ち並ぶ、殺風景なところに出た。
そこを通り抜けるのが、淀川の花火大会が見える名前の知らない用水路を大きくしたような川の土手たどり着ける近道なのだ。
干からびたアスファルトの道路。枯れ果てた街路樹のように無造作に立つ電柱。切りっぱなしのトタンでできた人気のない建物。
辺り一面に赤さびがこびりついている。
それは、古い血痕のように黒ずんでいて、乾いた血のような鼻につく臭いが立ち込めている。
街全体が、中世の絵画のよ