花組「エンジェリックライ」「Jubilee」初日

　ありがたいことに初日を観劇することができたので、所感を残しておく。まだ役名を覚えきれていないので、芸名でご容赦ください。
※物語の核心に関わるネタバレは避けていますが、事前情報一切なしで観劇したい方はお気を付けください。

芝居：エンジェリックライ

　面白くなかったらどうしようと身構えていた（映像で見た「元禄バロックロック」が合わず、途中でやめてしまった）が、飽きることなく最後まで見ることができた。　登場人物同士でウソをつきあう、という筋書きだが、主人公のアザゼルが人間界に堕とされウソをつけないようにされているため、前半はあまりウソをつきあう展開はない。最後の方にドタバタとウソをついていることが明かされることになる。それらは大したウソではないので、そこまで大きな驚きはない。しかし、観客は油断が許されない。最後のウソには完全に騙されてしまった。

　主演の永久輝せあは、ちょい悪少年系の役がぴったりだった。「PR×Prince」で見せたような困り芝居も楽しめる。星空美咲は、度々変わる様々な衣装、髪型を見事にこなしていた。毎度のことながら歌唱の素晴らしさが抜群で、高音でも柔らかな歌声が響いていた。セリフも工夫してきたのか、聞き取りやすくなったように感じる。また今回、2番手には凪七瑠海が就いているが、聖乃あすかも悪役としての存在感があり、2番手並みに見せ場、歌唱場面があった。天界の秘書役(?)の希波らいとと凪七瑠海の部下役の侑輝大弥、天城れいんコンビも良い役どころ。そのほか下級生たちも細かい芝居を続けていて良かった。

　もちろん、設定に無理を感じる部分もあったし、天使vs悪魔の戦いのアクションが人間同士のアクションに近かったのが残念だったが、初日の緊張感がある中、笑いも起き楽しむことができた。

ショー：Jubilee

　幕開きの主題歌を、銀橋を渡りながら歌い繋いでいくスタイルが好きなので、今回そのスタイルで嬉しかった。

　最も心を奪われた場面は、男役のスーツ群舞。永久輝せあにスポットライトが当たり踊り始めた瞬間、劇場の空気が一変した。靴の音も聞こえる静かさ。この空気感は「FROZEN HOLIDAY」の人生のメリーゴーランドの場面に似ている。クラシックな雰囲気を持つ永久輝のスーツ姿は、こういうのが見たかった！と思わせてくれる。

　しかし、作品全体としては少々物足りなさがあった。主題歌以外はクラシック曲のアレンジというのも、演出の稲葉太地のこだわりのようだが、せっかくのお披露目公演。新生花組の姿をもっと色んなタイプの楽曲で見せてほしかった。また、稲葉太地の作品はストーリー仕立てでなくともコンセプトをしっかりと打ち立てている印象がある。例えば、「Fashionable Empire」では「移り変りのはやい世界の中でも変わらない価値」のようなコンセプトが作品全体を貫いていた。しかし、今回は「新生花組を祝う」というところからあまり広がりがなかった。

　ただ、若々しい花組の面々と安定の凪七瑠海のパフォーマンスに魅せられ、新トップコンビの門出を祝うことができ嬉しかった。挨拶での花組ポーズも声出しありで！今後も楽しみな花組です。