おこのみやき

劇場という空間と、観劇という体験が好き。自分の考えを整理するために書いています。

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    宝塚関係の記事をまとめて置いてあります

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自己紹介|noteで書きたいこと

 記事数も増えてきたので、遅まきですがちょっとした自己紹介を置いておこうと思います。   普段は都内の某美大で美術史や美学の勉強をしている大学3年生です。また、ときどき学業と並行して展覧会の企画やキュレーション、作品制作(インスタレーションや演劇作品)を行なっています。名前は一番好きな食べ物「お好み焼き」から付けました。 なぜnoteを始めたのか もともと、考えたり、文章を書いたりすることが好きでした。基本的に文章を書くのは自分の考えを整理するのが目的であり、特に舞台を見た

    • 批評することの特権性について

       私は批評を読むことも書くことも好きだ。私は批評を「ある作品に対して自分が良いと思った/良くないと思った理由をできるだけ客観的に説明する」ものだと思っている。これは、どんな人でも実践できるはずだが、多くの人にとって批評というのはごく限られた人の特権であるようだ。  その理由は何だろうか。「プロの批評家」とされる人たち、つまり批評でお金を稼いでいる人たちは批評理論(脱構築批評、システム理論、生成論……など)を習得し、それを用いて批評をしている。批評理論を知っていることが全ての

      • 2024年7月から10月の観劇記録

         いつもよりラフな観劇記録です。往々にして見終わった瞬間から記憶が消えていくタイプなのでほぼ自分用の覚書です。  今回は「下半期で観劇記録まとめると、えらい量になる」と10月初旬くらいに気づきました。上半期の記録は6月に半年分の記憶を掘り起こして書いていたのですが、下半期は夏休みを挟んでいたのもあってえらい量観劇しているため、せめて10月のうちに……と思って記憶を掘り起こします。今度からは月ごとにまとめるシステムにしようと思いますので、よろしくお願いします……。 7月2日 

        • 【総括】わたしとベルばら2024夏

           ついに宝塚版ベルサイユのばら2024が終わってしまった……数多のタカラジェンヌが「夢」と語る作品。ほぼ10年に1度しか上演されないこの作品に、このタイミングで、いまの雪組のキャストで見られたことが本当に幸せだった。  7月から10月まで、舞台というのは限られた期間しか見られないものだから、10月になって男役としての咲さんに別れを告げることに加えて、いまの雪組子たちが演じるフェルゼンやアントワネットやオスカルなどお役に別れを告げないといけないことがものすごく寂しくなった。

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          だから私はあんたを撃つ ミュージカル「9to5」

           日本青年館ホールでミュージカル「9to5」を見た。  6月に「モダン・ミリー」を見て、とても良かったという記事を書いたが、「9to5」は働く女性がやっと登場し始めた「モダン・ミリー」のさらにその先の世界を描いていた。それは、1970年代末の、結婚を選んだ女性だけでなく独身でいることを選んだ女性たち、いや結婚しているかどうかに関係なく一人の人間として社会で生きていくにはどうすればいいかを時にユーモラスに、時に真剣に考える女性たちの物語だった。  主人公格の人物は3人。ヴァ

          だから私はあんたを撃つ ミュージカル「9to5」

          1年

           今日は朝からTwitter(X)上で、お悔やみを述べているポストを何度も見かけた。ここ1年、Twitterはずっと地獄のようだった。強い言葉が飛び交っていて、ファンの中でも劇団を擁護する人たちと糾弾する人たちに、真っ二つに分かれてしまったように見えた。  亡くなったことをニュースで知った私は、最初は傍観しているだけだった。特に10月の間は、起きたことを信じられなかったし、ネット上でまことしやかに語られる噂話もまさかね、と引きで見ていた。10月29日には宝塚大劇場で宙組公演

          花組「エンジェリックライ」「Jubilee」初日

           ありがたいことに初日を観劇することができたので、所感を残しておく。まだ役名を覚えきれていないので、芸名でご容赦ください。 ※物語の核心に関わるネタバレは避けていますが、事前情報一切なしで観劇したい方はお気を付けください。 芝居:エンジェリックライ 面白くなかったらどうしようと身構えていた(映像で見た「元禄バロックロック」が合わず、途中でやめてしまった)が、飽きることなく最後まで見ることができた。 登場人物同士でウソをつきあう、という筋書きだが、主人公のアザゼルが人間界に堕

          花組「エンジェリックライ」「Jubilee」初日

          映画「ラストマイル」を見て、また宝塚のことを考えた

          ※ネタバレにお気をつけください。  新作邦画を映画館で見るのはいつぶりだろう。近所の映画館で「ラストマイル」を見た。宅配物を狙った連続爆発事件の犯人とその動機を追究するという筋書きのサスペンスだが、その背景に2024年問題や労働問題が設定された群像劇である。  主人公の舟渡エレナ(満島ひかり)が、世界的な通販サイトの関東出荷センター長として着任するところから物語は始まる。しかし、彼女が着任した直後にそのセンターから出荷された商品が顧客の手元に渡った後に爆発するという事件が

          映画「ラストマイル」を見て、また宝塚のことを考えた

          雪組 新人公演「ベルサイユのばら」

           東京宝塚劇場で「ベルサイユのばら」の新人公演を見た。  1幕ものをうまく構成し直したことと、主要な出演者の技術力の高さによって、単に新人公演を見たというよりも、本公演の別ver.を見たというほうがしっくりくる。  まず構成については、本公演では少々複雑になっている。特に今宵一夜とバスティーユ場面が1幕と2幕に分かれており、なかなか話の繋がりが見えづらいのだが(2幕にも2番手であるオスカルを登場させるための工夫ではある)、新公ではフェルゼンの回想シーンであることは変わらず

          雪組 新人公演「ベルサイユのばら」

          筋書きと登場人物の関係 月組「BLUFF-復讐のシナリオ-」

           東京芸術劇場プレイハウスで月組「BLUFF」を見た。  正塚晴彦の作る芝居は、細かいコメディシーンがあったり、登場人物たちの関係性の描写が中心であることが多かったりして、大劇場よりも小〜中規模の劇場に適していると思うのだが、「BLUFF」もその例に漏れず、プレイハウスという劇場がピッタリだった。  初演を見たことがなく、あらすじも簡単に目を通した程度で観劇に臨んだため、「復讐のシナリオ」という副題から派手なアクションやシリアスな展開を勝手に想像していたのだが、比較的ライ

          筋書きと登場人物の関係 月組「BLUFF-復讐のシナリオ-」

          淡々と、鮮やかに 雪組 彩風咲奈「LAST MISSION」

           8月20日、ディナーショー「LAST MISSION」のソワレを配信で見た。彩風咲奈がディナーショーをすることが決まった時から楽しみで、演出が指田珠子という情報が出てから、さらに楽しみにしていた。  すばらしいディナーショーだった。  指田珠子についてはこの記事で詳しく書いたが、彼女の作品の多くは強い作家性が現れている。そこで、今回のディナーショーでは指田珠子の個性と彩風咲奈の個性がどうぶつかり合うのか、というのが私の気になっていたことのひとつだった。 しかし「LAS

          淡々と、鮮やかに 雪組 彩風咲奈「LAST MISSION」

          宝塚の「生徒」という呼称の意味・歴史

           宝塚歌劇をよく見るようになってから、歌劇団の団員を「生徒」と読んでいることに驚きとちょっとした違和感を覚えた。その違和感の正体をあまり上手く言語化できないでいたが、先日図書館でこの本を読んで「生徒」という呼称の意味について改めて考えることとなった。 -永井咲季著『〈なつかしさ〉でつながる少女たち』平凡者、2015年  宝塚歌劇団の団員は、宝塚音楽学校の卒業生で構成されている。もちろん音楽学校生の間は「生徒」であることは明らかだ。ただし予科1年、本科1年の2年間を終えれば

          宝塚の「生徒」という呼称の意味・歴史

          石像の宴 花組「ドン・ジュアン」

           やっと御園座にて「ドン・ジュアン」を観劇。生で見た時の感覚を大切にするために、できる限り情報を遮断してきた。それでも2016年の雪組初演版とかなり演出が異なるということは耳にしていた。雪組版は花組の上演が決まる前に1回、決まった後に1回、映像で鑑賞している。雪組版、そして外部での上演版との大きな違いは、演出の生田大和自身が述べている通り、「石」に着目したことだ。石のような冷たい男と呼ばれるドン・ジュアン(永久輝せあ)、石を彫る彫刻家のマリア(星空美咲)、石の亡霊として迫って

          石像の宴 花組「ドン・ジュアン」

          SS席から見つめる夢 雪組「ベルサイユのばら」

           最後の監獄での場面。マリー・アントワネットがフェルゼンにこう訊ねる。 「夢を見ているのかしら。」 まさに「ベルサイユのばら」は全編を通して、天上の夢のようであり、そして残酷な夢でもある。  初めて、SS席に座った。my初日。宝塚大劇場の5列目センターから見る景色は、夢だった。まだ夢見心地で、帰りの新幹線で何とかこの感情を捉えておこうと文章を書いている(感情に任せているところが多く、台詞の覚え違いなどご了承ください)。「ベルサイユのばら」といえば、形式美だ。長回しの台詞と見

          SS席から見つめる夢 雪組「ベルサイユのばら」

          “ほのぼの”でいいの? 花組「Liefie -愛しい人-」

           先日、日本青年館ホールにて花組「Liefie -愛しい人-」を観劇した。まずは、東上初主演となった聖乃あすかさん、七彩はづきさん、おめでとうございます。  今作品については、珍しく開幕の翌日に観劇することができたため、前情報をほとんど入れずに劇場へ向かったが、観劇後には劇場内でもSNS上でもちらほら否定的な意見を耳にした。主にはストーリーが魅力的ではないという意見だが、私はそのことに賛成しつつも、このストーリーには良いところもあって、それを活かす方法が他にあったのではない

          “ほのぼの”でいいの? 花組「Liefie -愛しい人-」

          「モダン・ミリー」についての記事、たくさんの方に読んでいただけているようで嬉しいです!これからもよろしくお願いします☘️

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