筋書きと登場人物の関係 月組「BLUFF-復讐のシナリオ-」
東京芸術劇場プレイハウスで月組「BLUFF」を見た。
正塚晴彦の作る芝居は、細かいコメディシーンがあったり、登場人物たちの関係性の描写が中心であることが多かったりして、大劇場よりも小〜中規模の劇場に適していると思うのだが、「BLUFF」もその例に漏れず、プレイハウスという劇場がピッタリだった。
初演を見たことがなく、あらすじも簡単に目を通した程度で観劇に臨んだため、「復讐のシナリオ」という副題から派手なアクションやシリアスな展開を勝手に想像していたのだが、比較的ライトなコメディだった。それはさておき、興味深かったのが、ドノヴァン(風間柚乃)が主役でありながらも、いつも物語の中心にいるのはシャロン(花妃舞音)だったということである。
ドノヴァンがなぜ「復讐」を企てるのか、その理由はセリフの中で明かされる。確かにその背景は理解しやすく納得できるものなのだが、復讐の計画が進んでいく中でのドノヴァンの心情(例えば葛藤や喜び)は案外深く描かれない。
一方でシャロンの方は、
① コンプレックスを抱いている
② ドノヴァンの誘いに乗ってチャレンジする
③ 自分の行動への葛藤が生じる
④ 計画をやり遂げたことで成長する(さらに恋)
という主人公のような道筋を辿っている。もちろん、復讐計画の主軸はドノヴァンだが、積極的に行動をしているように見えるのはシャロンの方である。
一部の例外を除いて男役が主役であることが当たり前の宝塚では、このような作品は珍しいと思うが、受け身だが着々と計画を進めるドノヴァン、自分を変えようと突き進むエネルギーに溢れたシャロンは、それぞれ風間柚乃と花妃舞音という役者にハマっていた。宝塚観劇をするたびに毎度、男役と娘役の間にあるヒエラルキーを考えずにいられないが、今回は純粋に物語を楽しむことに近づけたような気がする。
近年は再演の比重が大きい正塚晴彦作品だが、小〜中劇場で新作を見たいと思った。