【インド映画】The Greatest of All Time(2024年)/タミル語
主演69作目を最後に俳優業を引退し、新党を立ち上げ政界進出すると宣言しているタミルの大人気スター、ヴィジャイ。今作「The Greatest of All Time(以下、GOAT略)」は68作目の主演作。
GOATは自主上映をかなり大規模にやっていたが、私が鑑賞できたのは1回きり。名古屋での上映は客席が満員になるほどの盛況ぶり。今年公開されたタミル映画の中でも世界興収は暫定トップを記録している。さすがタラパティ(大将)。
概要
【原題】The Greatest of All Time
【公開日】2024年9月5日
【言語】タミル語
【上映時間】3時間3分
【監督・脚本】ヴェンカット・プラブー
【音楽】ユヴァン・シャンカル・ラージャ
【キャスト】
・ガーンディ/ジーヴァン(サンジャイ)…ヴィジャイ
・スニール…プラシャーント
・カリヤン…プラヴデーヴァ
・ラジーヴ・メノン…モーハン
・アヌー…スネーハー
あらすじ
特別テロ対策部隊SATSに所属するガーンディは、普段は政府の観光職員として潜入生活を送っている。不自然な行動の目立つガーンディに対し妊娠中の妻アヌーは不倫を疑うが、ガーンディは誤解を和らげる為に任務ついでにバンコクへ家族旅行に出かける。旅行中に陣痛を起こしたアヌーは病院に運ばれるが、出産を待つガーンディが一瞬目を離した隙に息子ジーヴァンが何者かに誘拐されていまう。追跡ののちジーヴァンを見つけるが、それは誘拐車の事故により黒焦げの遺体に変わり果てた姿だった。
大きなショックを抱えたまま数年が経ち、ガーンディはモスクワへ出張に出かけるが、大使館の中でギャングの襲撃に襲われる。抵抗する中でガーンディは、ギャングの群衆の中に自分と瓜二つの顔の青年を見つける。それは、事故死したはずのジーヴァンだった…。
浅い感想
あらすじが既にてんこ盛りの情報量だけど、これはまだ導入部分。時系列の動きやツイストが多いので、3時間の長尺だけど退屈になるような暇が全く無かった。
脚本の欠点は多々あるけど、大衆映画としてはかなり満足度の高い濃密な作品だったと思う。
ジーヴァンという20歳そこそこの青年役も、今年50歳になったばかりのヴィジャイが自然に演じている。ジーヴァンの顔はVFXで多少若返りの加工が施されているが、動きや仕草が完全に大学生ぐらいの若者といった感じで、壮年ガーンディとの演じ分けに脱帽してしまった。(まずそもそも普段のヴィジャイも50歳とは思えないほど童顔なので、果たしてVFXが本当に必要だったのか…と思わなくもない)
ヴィジャイが政界進出前のラスト2作目なだけあって、今までのヴィジャイの代表作を総括したような演出があった。私はヴィジャイのファンでは無いのであまり詳しくは無いけど、挿入歌"Matta"で突然カメオとして女優トリシャーが登場した時は、さすがに「Ghilliだ!」とテンションが上がった。ヴィジャイ代表作の一つ「Ghilli」から20年経っても変わらない美貌の2人、眼福…。挿入歌"Appadi Podu"と同じダンスをやってくれるのもサービスすぎる。
そしてなんといってもこのジーヴァンが、今までのヴィジャイのイメージとは全然異なるタイプのキャラクターだったのが嬉しかった。しかし、しんどい…。でも一度こういうヴィジャイも見てみたかったので、これもまたファンサービスなんだろうな…。
監督に人の心は無いのか…?!と思うぐらい、ストーリーは重め。(そこまでヴィジャイに対して思い入れが無ければ、割と最後まで単純に楽しめるとは思うけど…) そしてなかなか着地しない、ツイストの応酬。まるで10時間ぐらい映画を観ていたかのような体感で後半は観てるこっちの体力もヘトヘトになってしまったけど、個人的にはかなり満足度は高かった。
ただ、やっぱり細かく考えれば考えるほど脚本の粗は目立つ。特に復讐の要因についてはちょっと弱すぎたように思う。なぜあれ程までに家族の関係は拗れてしまったのか…なぜそこまで恨む…?あの人物は一体いつから裏切りを企んでいたのか…??
女性への暴力表現もDVめいててキツかった。ただそれも含めて、観衆からのヘイトを集めるべきヴィランとしてのキャラ付けはよく出来ていたんじゃないかなと思う。
とにかく、音楽監督ユヴァンによるソングはどれも良い。直感的な「良い!」というより、聴けば聴くほど頭から離れなくなるようなスルメ系の「良さ」。"Whistle Podu"はただただ楽しいし、テンションが上がる。劇場では、インド人の観客も歓声を上げたり指笛を吹いたりで大盛り上がりだった。
ただ、個人的にヘビロテしてるのは"Chinna Chinna Kangal"。失われた、普遍的にあるはずだった何気ない日常の幸せをまるで取り戻したかのような、噛み締めるかのような、エモーショナルな映像とソング。ジーヴァンの表情の一つ一つにグッと来る。ヴィジャイ自身も歌手として参加しており、ソフトな歌声もマッチしていて、聴いていてとても気持ちが良い。
そこまでの数は観れていないけど、私が観たヴィジャイ映画の中ではGOATはトップクラスに好きな映画だった。(個人的には、大ヒットしたローケーシュ・カナガラージ監督による前作「Leo」よりも好き)
映像も凝っており、是非とも日本でも一般公開して欲しいと思っているのだけど、タミル映画圏ならではのメタ要素やクリケットネタも多かったので、馴染みのない日本で受け入れられるかどうかは定かではない…。アクション映画好きはきっと好き。綺麗な日本語字幕で観てみたいから、いつか配給してほしいな。
本国版予告
おまけ(メイキング映像)