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【インド映画】ジガルタンダ・ダブルX(2023年)/タミル語

note第1発目は、インド映画ファン歴2年目の私が最も衝撃を受けたインド映画について書こうと思う。

その映画の題名は

ジガルタンダ・ダブルX
(原題:Jigarthanda DoubleX)。

2024年9月13日から日本全国の映画館で上映されている、南インドのタミル語映画。
インド映画を普段観ない人(特に映画・アート好きや創作が好きな人)にもオススメしたい傑作。日本語字幕が付く前からこの映画を推している私としては、美しい日本語字幕がつき、更に日本全国で上映される事になった事に感慨深さを感じている。

「ジガルタンダ・ダブルX」日本版ポスター

初見はNetflix英語版

インド本国で封切りされた注目の最新映画の自主上映会を関東中心に開催している配給会社「Spacebox」が、2023年11月にこのジガルタンダ・ダブルX(英語字幕)を関東圏で上映した。
私はこの上映会に行って無かったのだが、観に行った日本人の反応が皆熱狂している様子、また本国インドのレビューサイトでも大絶賛の嵐だったので、どうやらこの映画はヤバいらしい…と思ったのが最初。

その後間も無くNetflix英語版で配信が始まったので、Edgeの自動翻訳機能を利用して鑑賞した。

結果……大号泣。私が2023年に観たベスト映画になった。

あらすじと浅い感想

この作品は、「映画」の映画。
以下、公式サイトのあらすじ引用↓

1970年代前半のマドラス(現在のチェンナイ)。警察官採用試験に受かったキルバイは、血を見ると気を失うこともある小心者。着任を間近に控えたある日、不可解な殺人事件に巻き込まれ、自身が牢に繋がれることになる。彼は、政界に強いコネクションを持つ悪徳警視ラトナに脅されて、無罪放免・復職と引き換えにマドゥライ地方のギャングの親分シーザーを暗殺することを命じられる。ラトナは、西ガーツ山脈のコンバイの森に派遣された特別警察の指揮官で、冷酷非道な男。その兄のジェヤコディは、タミル語映画界のトップスターにして、次期州首相の候補と噂されている。一方シーザーは、「ジガルタンダ極悪連合」という組織のトップで、地元出身の野心的な有力政治家カールメガムの手足となって象牙の違法取引から殺人まで、あらゆる非合法活動を行っている。
 シーザーに近づくために、キルバイはサタジット・レイ門下の映像作家と身分を偽り、シーザーを主演にした映画の監督の公募に名乗りを上げる。クリント・イーストウッドの西部劇が大好きなシーザーは、キルバイを抜擢しレイ先生と呼ぶようになる。そこから2人の運命は思いもよらない方向に転がり始め、西ガーツ山脈を舞台にした森と巨象のウエスタンの幕が上がる。

映画『ジガルタンダ・ダブルX』公式サイトより(https://spaceboxjapan.jp/jdx/)

この情報量だけでもネタバレのようになっているが、これはまだほんの一部。
密度が濃いのがインド映画。この先の展開がヤバい!

まず前半はややコメディー調、展開が早くトントンと進んでいく。ボーッと観てると振り落とされるぐらいのスピード感。クセのあるシュールなコメディーなので、人によってはやや退屈に感じるかもしれないけど、見応えのあるカッコよくてお洒落な画とサントーシュ・ナーラーヤナン(サナ先生)の軽快でレトロな音楽のおかげで私は心から楽しめた。
また、端々に感じる監督によるメタ的な映画愛にグッと来る所もある。

後半はそんな前半からガラッと変わり、舞台は西ガーツ山脈の森に移り一気にシリアスで重たい展開になる。これ以降はネタバレになってしまうので書かないが、最後には監督の、映画に対する信頼と強すぎる愛、エモーショナルな2人の関係性、痛烈な社会批判を全身で浴びるクライマックスを迎える。初見の私はこのパワーをもろ喰らいすぎて、顔がぐちゃぐちゃになるぐらい泣いた。

まずこの映画には2人の男性主人公がいるが、RRRとは違い少年漫画のようなブロマンスストーリーではない。キルバイ(S.J.スーリヤー)はシーザー(ラーガヴァー・ローレンス)に殺意を持って近づく。しかし後半に差し掛かると彼らの心情に徐々に変化が生まれ、最終盤にはエモーショナル且つアツすぎる展開が待っている。しかし、決してブロマンスでは無い(大事)。芸術〈シネマ〉に選ばれてしまった2人の数奇な運命に涙するしかなくなる。

そして全編通して色の使い方が巧い。最初から最後まで比較的緑が強いが、そこに前半は赤色、後半はガラッと変わって青色が加わる。前半と後半で作品の雰囲気が全く異なるのは、これも要因の一つだと思う。前半のまさにインド映画チックな賑やかさとは打って変わり、後半のしっとりとした没入感は特別な映画体験になると思う。

監督とキャスト

ジガルタンダ・ダブルXの監督は、タミル地域を代表する映画監督の1人、カールティク・スッバラージ

赤ちゃんみたいな見た目だけど、面白い映画ばかり作っている鬼才監督!

この監督、本当に凄い。私はこれまで「ペーッタ(2019)」「ピザ 死霊館へのデリバリー(2012)」「女神たちよ(2016)」を観てきて、彼の鬼才ぶりに舌を巻いてきた。彼の特徴は後半のツイスト。終盤に差し掛かると予想もつかない展開に急カーブし、衝撃的な結末を迎える。フラグの回収が見事で、毎度その脚本作りの巧さに打ちのめされてしまう。彼の撮る映画にハズレ無し。

ここで押さえておきたいのが、2014年に公開された「ジガルタンダ」。ジガルタンダ・ダブルXの9年前に公開されたスッバラージ監督の代表作であり、インド本国でも知名度の高い作品。そしてこの映画もまた「映画」の映画である。ダブルXの完全な続編という訳ではないが、こちらも新人映画監督カールティク(シッダールト)とギャングのボスのセードゥ(ボビー・シンハー)が登場する。この正反対な2人の奇妙な関係性の顛末はダブルXにも通ずる部分があるので、Spacebox公式のストリーミングサービス「インディアンムービーオンライン(IMO)」で是非観てほしい!

https://www.im-o.net

「ジガルタンダ」2014年


主役の1人、ギャング団「ジガルタンダ極悪連合」のボス:アリアス・シーザー(アリヤン)を演じるのは、ラーガヴァー・ローレンス
ダンサー出身なのでダンスが上手い俳優だけど、この映画では持ち味のキレは封印。

黒い肌とギラつく目がかっこいい!


もう1人の主役、シーザーの暗殺目的で映画監督に扮し潜入する新人警官:キルバイを演じるのは、S.J.スーリヤー
彼もまたヒット作連発の映画監督から俳優に転身した異色の経歴の持ち主。現地では「演技モンスター」と呼ばれている。

目のクマはメイクではなく、デフォルト


キルバイにシーザー暗殺を命令する悪徳警官ラトナを演じるのは、ナヴィーン・チャンドラ
テルグ映画の端役で見かけたことがあるけど、タミル映画で見かけたのはこれが初めてかも。スタイルが良くてハンサム。

南インドはタレ目イケメンの俳優が多い気がする

曲がカッコいい!

音楽監督は前述の通り、サントーシュ・ナーラーヤナン。「ペーッタ」を除く全ての作品でスッバラージ監督と仕事をしている。
ジガルタンダ・ダブルXの劇中歌は全部お洒落でカッコいい!


最後に

Filmarksでのレビューも平均4.2と高評価だし、Xで見かける感想にも「今年のベスト」といったポストもちらほら見かけて、私はとてもニッコリしている。パンフレットやポスターなどのグッズが売り切れている劇場もあるらしい。
インド映画だから〜という偏見を捨てて、このエモーショナルかつ熱いドラマを多くの人に観てもらいたい!ロングランしてくれたら良いな…。


【本国版予告】

【日本版予告】

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