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パナソニック汐留美術館「ベル・エポック―美しき時代」感想と見どころ

1.概要

パナソニック汐留美術館で開催されている「ベル・エポック―美しき時代」を観てきました。パナソニック汐留美術館は初訪問です。

 19世紀末から1914年頃までのパリが芸術的にもっとも華やいだ時代「ベル・エポック」。本展は、ベル・エポック期から1930年代に至る時代の美術、工芸、舞台、音楽、文学、モード、科学といったさまざまなジャンルで花開いた文化のありようを重層的に紹介するものです。

 会場には、トゥールーズ=ロートレックやジュール・シェレによるポスター、当時のブルジョワたちが身にまとった衣服に装身具、エミール・ガレやルネ・ラリックの工芸作品に加えて、芸術家同士の交流がうかがえる書簡や稀覯本など、その頃のパリの繫栄や活気を鮮明に伝える、多様な分野の作品が並びます。とりわけ、展示の中核をになう、デイヴィッド・E.ワイズマン氏とジャクリーヌ・E.マイケル氏の絵画コレクションは、往時のモンマルトルの世相を色濃く反映した珠玉の作品群です。本邦初公開の同コレクションにもご注目ください。

展覧会公式HPより

2.開催概要と訪問状況

展覧会の開催概要は下記の通りです。

【開催概要】  
  会期:2024年10月5日(土)〜 12月15日(日)
 休館日:水曜日(ただし12月11日は開館)
開場時間:午前10時~午後6時(ご入館は午後5時30分まで)
     ※11月1日(金)、22日(金)、29日(金)、12月6日(金)、
      13日(金)、14日(土)は夜間開館 午後8時まで開館
      (ご入館は午後7時30分まで)
 観覧料:一般:1,200円、65歳以上:1,100円、大学生・高校生:700円、    
     中学生以下:無料 
     ※障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料で
      ご入館いただけます。

展覧会公式HPより

訪問状況は下記の通りでした。

【アクセス】
JR新橋駅汐留口から徒歩10分弱といったところでした。

【日時・滞在時間・混雑状況】
日曜日の14:00前に訪問しました。割とゆったり鑑賞できました。展示数は多かったのですが小型の作品が多くサクサク見れました。併設のルオー展示室も鑑賞して1時間半ほど滞在しました。

【写真撮影】
第3章のみ撮影可でした。

【グッズ】
ポストカードやクリアファイルに加えて、ノートやペンなど雑貨類が充実している印象でした。グッズを入れてもらった紙袋と美術館ロゴのシールがオシャレでした。

ショップの紙袋。

3.展示内容と感想

展示構成は下記の通りででした。

第1章 古き良き時代のパリ – 街と人々
第2章 総合芸術が開花するパリ
第3章 華麗なるエンターテイメント 劇場の誘惑
第4章 女性たちが活躍する時代へ

展覧会公式HPより

「ベル・エポック」をテーマにした展覧会ということでカラフルで個性的な絵画が中心かと思っていたのですが、当時の空気を伝える資料が充実した展示で意外性がありました。

第1章では19世紀末の女性のファッションを軸に、都市生活の華やかさが伝わる展示でした。色とりどりのアクセサリーやガラス工芸品など、生活を飾る品が広まっていたことが感じられました。その一方で豊かになった社会の影を感じさせる作品もあり、特にカリエールのセピア調の憂いを秘めた作品は印象的でした。

第2章はモンマルトルで花開いた文化が紹介されていました。モンマルトルというと2016年に国立新美術館で見たルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」のイメージが強く、明るく誰もが幸せそうな場所を想像していました。しかしキャプションでパリの中心地から離れた歓楽街だったと知り、展示されていた作品についても暗い夜道であったり憂鬱そうな群衆が印象に残り、光の裏の影のようなものが感じられました(ルノワールと同じ展覧会でゴッホの描いた「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を見て全然違うなと思った記憶はあるのですが…)。この章ではボードレールやマラルメの詩集であったりジョルジュ・サンドの手紙なども展示されていて、様々なジャンルの芸術家が相互に刺激しあってパリの文化が形成されていった様子もうかがえました。

続く第3章ではモンマルトルの文化の中でも劇場に焦点にまつわる作品に焦点が当たられていました。劇のプログラムや上演目録のバリエーションの豊富さから当時の劇場の盛り上がりが感じられました(タイトルから察するに結構社会派な演目が多かったのかも…)。また以前から興味のあったシェレの作品をまとめて見られたのも嬉しいところでした。

ピエール・ボナール「『ピアノのための家族の情景集(C.テラス曲)』より」1893年 栃木県立美術館

最後の4章では当時の女性の活躍がテーマでした。サラ・ベルナールというとミュシャを見出した人というイメージがありましたが、ルネ・ラリックともタッグを組んでいたことが分かり、影響力の大きさを知りました。第1章と同様ファッションやアクセサリーも取り上げられていたのですが、だいぶカジュアルになっておりさらに時代が進んだことが感じられました。

4.個人的見どころ

個人的に印象に残った作品は下記の通りです。

◆ジュール・シェレ「音楽」1891年 デイヴィッド・E.ワイズマン&ジャクリーヌ・E.マイケル蔵
シェレは以前から興味があり、今回4点並べて見られて大満足でした。華やかさの中にどこか狂気を感じさせる作風に魅力を感じるのですが、モチーフを畳みかけるような描写や浮遊感のある構図が要因かなと思いました。「音楽」はシンバルの「バーーーン!!!」という音が聴こえてきそうな躍動感と勢いがあり、特に気に入りました。

ジュール・シェレ「音楽」1891年 デイヴィッド・E.ワイズマン&ジャクリーヌ・E.マイケル蔵

◆ジョゼフ・ファヴロ「月を持つピエロ」1883年 デイヴィッド・E.ワイズマン&ジャクリーヌ・E.マイケル蔵
最初鬼が雪だるまを持っている絵だと思いました…。ピエロというと陽気さとその裏に隠し持つ物悲しさ、といったイメージがあるのですが、いかついという要素もあるんだなと思いました。

ジョゼフ・ファヴロ「月を持つピエロ」1883年 デイヴィッド・E.ワイズマン&ジャクリーヌ・E.マイケル蔵


◆ルネ・ラリック「公演用プログラム『テオドラ』」1902年 箱根ラリック美術館
ラリックというと工芸のスペシャリストというイメージがあったのですが、絵も一流だったと分かって驚きました。やはり基礎をなすのはデッサン力でしょうか。

◆エリック・サティ(作曲)、シャルル・マルタン(挿絵) 「『スポーツと気晴らし』(表紙)」1914年? 文化学園大学図書館 
私は音楽も好きなのですが、この作品やボナールが表紙を描いた楽譜など音楽と視覚芸術がコラボレーションした作品が多かったのも面白い点でいた。「スポーツと気晴らし」は映像作品化して上映されていたのですが、ユーモラスな音楽とイラストに難解なナレーションが付いていてシュールでした。

5.まとめ

「エコール・ド・パリ」とはまた違った視点で世紀末のパリの雰囲気を楽しめました。会期まだありますので、興味のある方は是非!

6.余談

音楽と視覚の関連といえば、楽譜の音符の並びにも美しさというものがあるように思います。シューベルトの即興曲第4番は「譜面からしてお洒落な曲だな」と思っていました。

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