9.11 夕景をさがしにー利尻岳⑥
2001/9/15
ー頂上へー
山の朝は早い。
というより、登山者の中での意志と行動が、漆黒で暗闇の山を起こしていく。
ご来光組は3時には出発した。
続いていそいそと最後に来た人も出発した。
放浪の彼は、やはり、まだ寝ている。
深夜に登山口からヘッドランプで登ってきたのであろうパーティ3人が小屋を通過していく。
ぼくは、外へでてゆっくりとコーヒーを沸かして、贅沢な時間を過ごしていた。
見上げる頂上が近くに見える。天気が良く、風もない。
しかし、どうも昨日の夕景に出逢い、目的達成したかのようで、そこからさらに登る気力が湧いてこなかった。そうこうしてコーヒーを3杯も飲んでいた。
5時頃、太陽も昇ってきたが、夕景に比べるとなんとなく迫力や色彩がない・・・
なんかやる気のない太陽さんだ。
6:15、いよいよ意を決して、必要最低限の装備だけを持ち、頂上へ
実は、ここから利尻岳登山の最もツライところなのだ。
と、思っている。
身軽なので、走るように、駆けるように、足を上へと運ぶ。
ガレ場が多く、滑り、浮き石もあり、傾斜もきつく、そして崩壊地帯も多い。
ちょっと足元を誤れば、転倒、滑落などの事故にもつながるかも知れない。
崩落危険箇所にはトラロープがあり、また急斜面などにはザイルも固定されているけれど、その足場の悪さにはウンザリしてしまう。
登山道沿いにあるちょうど手をかけられるハイマツの枝などは、一体、幾人もの人たちの手を助けたことだろう。
艶さえ出ている。愛おしい感じさえする。
途中、頂上からのご来光に間に合ったと先に小屋を出発していた人たちと会い、
また、いつかどこかの山で!、と、さよならをする。
9合目を過ぎ、ぐるっと東から回り込むようにしてようやく頂上。6:45。
1719mの北峰頂上。
(南峰が1721m~非常に危険です・・・)
一人きり、風もなく、沓形側は流れゆく雲の中。
巨大なロウソク岩が、そそり立つ。
覗き込んでも見えない、切れ落ちる西壁。
鴛泊、鬼脇の方向は見渡せる。
朝の太陽が優しく海を照らし、鬼脇山がすぐそこの下に見える。
頂上には、東を向いた利尻岳神社がある。
ここまで来られたこと、夕景に出逢えたことへ感謝し、そして人々の悲しみが少しでも癒されますように・・・と、お参りする。
何かを訴えるように、タカネナデシコが一株、一輪咲いている。
ぼくも東を向いて座り、リンゴを丁寧に皮までむいて、ゆっくりと食べてみた。
つづく